訓練場にて
強い打撃音が二連で響き渡る。
ここはエルリアーナ城内にある訓練施設。
兵士や騎士、見物に来ていた侍従にメイド達は言葉にならないひとつの思いを共有しているところだった。
それは
「ロングスカートで中堅以上の兵士を上回る戦闘力の女が城内に増えた」と、言うものであった。
「すばらしいです」
淡々とそう言い、拍手を始めたのは金髪の少女、ミスビアンカだった。
「本当に。かっこよかったですよ。ミルキィローズ様」
うっとりと握り締めていたこぶしを解きながらトゥリパも労う。
武器である訓練用棍を一度水平に持ち、一回転させ、片手に持つ。
「ありがとうございました」
ただ、相手は答えることができない。
「すみません。誰か彼に治療を」
ミルキィローズの言葉に固まっていた回りが動き出す。
「胴を横なぎし、そのまま反動で肩を打ち据える。すばらしい流れでしたわ。本当でしたら肩でなく頭部を狙ってらしたのを寸前でずらされたその技量もすばらしいと思います」
汗を拭うための布を差し出し、代わりに棍を受け取る。
その賞賛にミルキィローズは頬を染めて笑う。
「ありがとう。兄弟でよくチャンバラごっこしてたから。それにしても」
ミルキィローズは言葉を途中で止め、トゥリパを上から下まで眺める。
深緑のメイド服ではなく、純白の装いに身を包んだトゥリパ。
複雑に編みこまれた紫がかった黒髪にはこれまた純白のレースのリボンがひらめいている。
かかとの高いピンヒールも白。白とレース尽くめ。
「えっと、これからデート?」
ピンと立った猫耳が揺れる。
「いいえ?」
答えつつ、自らの装いを見下ろすトゥリパ。
少し考えて納得したように頷く。
「この格好ですね! 訓練用のものですよ! 私たちの部族はこの装いを汚すことなく戦うんです。強さへの探求と証明ですね!」
興味をもたれたことが嬉しいという感情を隠すことなくトゥリパは伝える。
「一般的ではありませんけどね。動きに支障はありませんでしたか? ミルキィローズ様用の衣装はまだ仕立てあがっていないのでサイズの合うものを手直しさせていただいただけのものですから不都合があったのでは?」
「え、十二分に動きやすかったよ? 体を動かしても突っ張った感じはなかったし、スカートのスリットの入り方も絶妙だったよ?」
そう言って肩を回して見せる。
「と、いうより、やりすぎちゃったかなぁ? あんまり酷い怪我になってないといいんだけど」
「気にすることはありません」
打ちのめした兵士を気にするそのそぶりにトゥリパとミスビアンカがタイミングを合わせてそう言った。