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勇者は少女

 召喚。

 私は勇者召喚が成功する可能性は低いと思っていた。

 ただ、臣民の不安を取り除くために執り行う事を決めたのだ。

 アップフェール宰相には「可能ですが意味のある行為とは思えません」と、実質反対された。一番率先して召喚の準備の手配をしていた理由はわからない。

 トゥリパは「勇者様のお世話はお任せくださいね!」とニコニコしていた。

 少し年上で乳兄弟のフォルサの従姉妹で幼馴染として過ごした気心の知れた相手だ。

 そして乳兄弟のフォルサ。

「異世界人って面倒で迷惑な存在かも知れないんだよな。そん時は俺がなんとかしてみせるぜ」と、不穏な発言をしたので叱る羽目になった。

 悪い奴じゃないんだが……


 召喚中、正直術が失敗したのだと思った。

 しかし、それは成功であり、勇者は召喚された。

 甘くかぐわしい香り、そして、包み込むようなぬくもりと共に勇者たる彼女は現れた。

 生まれたままの姿そのままに。


 動揺した。


 あまりにも繊細でか弱い少女にしか見えない勇者に。


 守らなくては……


 そうとしか思えなかった。

 足元を濡らす少し粘りのあるピンク色の水。


 甘い香りはずいぶん引いていた。


 フォルサと共に玉座の間から追い出された。

 追い出された事実に気がついたのは自室にたどり着いてからだ。

 横ではフォルサが鼻を押さえている。

 彼女のそばにフォルサはよらせない方がいいのかも知れない。

「フォルサ、大丈夫かい?」

 椅子に座らせて血が止まっているかを確認する。

 フォルサは子供の頃から鼻の粘膜が弱めでよく鼻血を出していた。

 まだ止まっていないようなら回復魔法が必要だろう。

「うー、ちょっと気持ち悪い。匂いがきつくって……」

 ?

 ??


 ああ、確かに、玉座の間を包み込むほどの匂いの強さだ。いくら良い香りでも強い匂いが苦手な者には辛いのかもしれない。

 私は納得し、フォルサに回復魔法をかける。

 私の回復魔法は最低限より少しましという程度だが、擦り傷や鼻血、多少の気分の悪さくらいなら治療可能だ。

 細かい生傷や鼻血の多いフォルサや侍女仕事の覚え始めでよく手を荒せていたトゥリパのために覚えた魔法。

 魔法に適性がない私が使える魔法だ。

 これだけじゃあ、彼女の役には立てないのだろうか?



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