決意
魔王の出現。
世界の反応は薄かった。
ただし、それは庶民の間で、だ。
支配階級の人々は魔王の出現に恐れ慄いていた。
帝国が崩壊し、各国が自分たちの国を再建、建国して二十五年。
ようやく落ち着いてきたところだった。
ここエルリアーナ国においても、魔王に対する不安は上層部だけのものであった。
魔王の拠点が未だ明確でもない影響で庶民の危機感は薄い。多少「最近魔物強いねー。鍛えるか、いい装備ゲットしないとねー」という会話がその辺でされる程度であった。
対して、上層部では税金や近隣国との魔王軍に対する足並みについてや魔王軍被害に対する国家間の協力体制等と損得を含む議題は尽きない。
そんな中、王と王妃が心労からか病に付し、第一王子が宰相と側近たちと共に政務を代行。
いまだ若い王子に対する不安からか、国を守るために「勇者」を召喚しようという議題が上がった。
異世界の者を戦力として召喚し、魔王に対する守りとするのだ。
それは帝国に一度は滅ぼされた旧国の秘術の一つ。
第一王子は決断する。
勇者を召喚することを。
国を守り、訪れた勇者に感謝と敬意を払うことを。