表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Bullet Returner~遺産回収部隊~  作者: ライオット
第一章 京乱戯画
7/35

第六話 魔翁の始動


薄暗い密閉された空間の中、立ち込める腐臭と靄、ギチギチと何か肉同士が軋む音が響く。


ドチャリ!


一つ、粘液にまみれた裸の少女が地面に落ちる。

生命体としては生きているものの、人間の心は砕け散り、消えていた。

目の瞳には一切の光を宿さず、これから生きる事もままならない可能性がある。


そんな少女を何かが迫り来る。


それはタコのような触手であった。


少女の足に絡みつき、次第に下腹部、膨らみかけの乳房、首あたりまで掴み、獲物を捕まえたようにシュルリと引っ張られていった。


その光景を無表情を崩さず、成三は見つめていた。


「…総帥、いくら儀式の為とはいえ、これは些かやりすぎでは?」


困ったように苦笑し、それに向ける。


それは何か意志を持ったように一つの形を作り、姿を現す。


「カッカッカ…すまぬのう、成三よ…儂の"飼育"の宿主を持ってきてくれるのはいつも感謝が湧き出るわ…」


独特の笑い方をしながら、出てくるのは、多い皺やほりの濃い老人である。

服はかの太閤秀吉の着ていたとされる上等な和服であり、年の功なのか異様に似合っている。


成三は目元に皺を浮かべ、眉間に手を当てて一言答える。


「少しは私達の苦労もお考え下さい。つい先日、人身売買の業者から買い取った者達はどうしましたか?」


「ちと、すまぬのう。あれらは子宮を取り払われておって、産むことが出来んなんだ…今は蟲達の慰みにしとる」


「…はぁ…また一からです」


ため息が漏れる。


はなっから期待はしてはいなかったが、こうも結果が酷いと疲れが倍増してやってくる感覚を味わい、椅子にもたれかかった。


「じゃが、中には孕ませられそうな逸材がいたいた~。よもすれば儀式の蟲を育ててくれよう」


「…はぁ、其れだけでも幸いです。後は…」


「醍醐の花見を待てば良い…今年はちと開花が遅かったからのう…。時期を先延ばししてもうた…」


「ですが、露見は防がれております。儀式を成功させ、我等の宿願であり"信長復活"をしましょう…」


「うむ、上様の力は今の腐敗しきった日本に必要。我等は今日まで長く隠れ潜んだ…」


魔翁は振り向き、それを見る。


「徳川の政権から…明治、大正の動乱期…日露戦争…そして太平洋戦争…」


ギチギチと唸り、透明な粘液を滴らせる。周りにはアブの様な羽虫がキチキチと羽を鳴らし、無数に居た。


それらを一瞥し、魔翁は片目から涙を一筋、流し、答えた。


「長く待った!今こそ豊臣…否!織田家の再構築を行い、信長様に天下を捕っていただこう!!」



醍醐の花見開催まで


39時間45分…。




京都の祇園にある、茶屋。


そこは祇園の甘い物好きから絶大な人気を誇り、京都の老舗の一つ。

創業三百年、菓子屋とすれば古い方であるが、何よりもこの店の暖簾が今日まで生き続けるのも、伝統を守り、尚且つ時代を見て新しいものを据える心構えが出来ているからである。


そんな茶屋で、大盛の抹茶パフェを大口で咀嚼する真之介の姿に、瓜生と合流した千里は驚くしかない。


全長90㎝、器の口径は10㎝が底まで続く巨大な器の中には、下からバニラアイス、コーンフレーク、カステラに宇治金時の甘く煮た物、最後には抹茶アイスをドカドカ盛りイチゴの賽の目切りを彩りよく付ければ、完成であった。

そんな豪華なものを舌鼓している真之介を尻目に、瓜生と千里は話し合うことにする。


「例の謎の者は?」


「科捜研で調べてもらったけど、なんともまあ…キツい」


嫌悪感をハッキリと示す。渡された資料に目を通す瓜生は一言。


「奇形腫…つまり胎児型の奇形腫瘍が頭部に有ったと…」


「…うん、それで?」


「…その胎児を見せてもらっては?」


と千里が幾つかの写真を取り出す。其処にはその腫瘍の写真が幾つかあり、中には解剖されているのも。

それを煎茶を飲みながら見ている姿に、千里はため息を吐く。


大体見終わると、写真をテーブルに置き、瓜生は口を開く。


「幾つか…科捜研の人達はこれを悪性腫瘍と?」

「…いや、これらは脳幹に繋がってたらしいよ、へその緒みたいに」


「なるほど…」


「後、もしかしたら何だけどさー」


自分でも信じられないと言いたげにその事を問いかけた。


「これがマジで宿主?」


「…んなわけ「その通りです」ええ!?」


少し溜めてから答えた瓜生に驚愕を覚える。


「これは何年か前に米軍の実験で出てきたクリーチャーの一部でしょう。昔はアブやら翼竜に似たものも居ましたし、六足歩行の何かや四足歩行の巨大なものも観測しました」


「…米軍の…実験?」


「ええ、曰わく"あちら側"を開けるための実験らしいですが、大分被害が出たらしいです」


持っていたスマホを操り、とあるレポートを取り出す。


其処には極秘と赤い印がなされてあり、中には信じられないものが沢山書かれていた。


隣に存在する異世界を観察したいという願望か成功したものの、出てきたのは巨大な扉であった。


閉じようにも、巨大過ぎて時間による解決しか無かった。


数日経つと、制御装置の電源が落ち、扉は収縮。

瓜生の言った異世界生物は殆ど捕まえられ、その町は今なお封鎖されている。


それを一通り語ると、神妙な面持ちで一言。


「…こんなのも居たの?」


「…ええ、あちら側の知的生命体らしく、あちらでは人間以上の脳の積載量のある生命体に取り付くようです」


「当時のハイキュレーターが失われた語学ロストスペリングの使い手でありましたので、通訳後、閉じ行く扉に帰って行きました」


スマホをしまい、再度資料に乗る写真を一瞥する。


「それらの生き残りか…このバロックレポートの本体に記載されている方法か…後者が一番考えられますが…」


「ちょっと待って?それじゃああいつ等は何で襲いかかったの?」


「…さあ?持ち主が大方こっちに帰り方の詳細があると喋ったのでは?これにも若干探知用魔力が残っているらしいので…」


「だとすればご愁傷様だね…私達がくる前に何とかしてたら死なずに済んだのに」


「さすがに近距離でのPDWはやりすぎました。隠し持っていたことを思い出すとついやっちゃうんです」


「…はぁ…」


思わずこの二人の考えに泣きたくなる。


一応この国は法治国家。銃刀法というものがあり、改造されたモデルガンですらアウトな所でボディアーマーを貫くサブマシンガンを所持し、警察署でもライフルやカービンライフルを撃っていたのが、こうして平然とパフェを食べ、静かに茶を啜るの所を見ると、愕然としてしまいそうだ。


これがミュージアムと言う世界的大組織のS級とA級ハイキュレーターである。


そう思いながら、現状を確認してみる。


「…で、今後はどうするの?」


「…そうですね…醍醐の花見と呼ばれる行事に興味があります」


醍醐の花見、そのキーワードを聞くと、顎に手を当て、思い出したように呟く。


「…醍醐の花見…たしか大の豊臣好きの木下グループ総帥が主催で行う行事ね。観光課や京都大学の歴史学の人達も喜んでやってるから、殆ど大文字焼きと同じくらい規模がでかいわ」


「なるほど…それだけ知っているのであれば、よっぽど昔から?」


「ええ、かれこれ七十年位やってるはずよ?只近年の異常気象で一ヶ月前に咲く予定だった桜が一分にも満たなかったから今まで遅らせて来たのだけど…」


「そして行われるのが、二日後」


「らしいわね…」


「…どんな事をやるのですか?その祭りは?」


「う~ん、能楽やら落語…吉本の芸人とかも来るし、舞台やらなんやら…出店もあるから、結構賑わうわね…」


どうやら春の祭典のようである。


此処に信長復活と何か関係があるのか、未だ不明である。


するとパフェのスプーンを前に出し、真之介が何やら一つ意見を繰り出す。


「信長は今はどうでもいい。只厄介なのがある」


「奴らは醍醐の花見で生贄を作るつもりだ…」


何の事やらサッパリ分からないが、話を聞き、真相を探る。


「まず信長復活…祭りの規模を見るに万単位の人が来るのは確実。其処に関係者スタッフや出店の出店者。参加企業のお偉い方を合わせればどれほどの巨大な儀式も難なく出来るだろうな…」


そう言うと、ポケットから折り畳まれた紙を広げ、テーブルの真ん中に置く。

どうやら会場の見取り図らしく、出店のスペースは店別に区切られ、舞台なども配分が為されている。


只の一般人が見ればそれは何処にでもある全体の見取り図であったが…。


何かに気がついた瓜生はそれを呟いた。


「…まさか…魔法陣とは…」


「魔法陣?この配列が?」


いまいち分からない千里に対し、瓜生は分かりやすく説明を行う。


「まず、此処の醍醐寺を除いて、舞台や出店の道をこうやってなぞり、要所要所に木下の用意した人材を置いていけば…」


赤のマジックで線や円を書き、現れたのは醍醐寺一帯を囲む巨大な四角形の陣が出来上がる。


それを見たとき、千里の脳裏に浮かぶのは、地獄のような光景であった。


「…どうするの?こんなの…止めようがないじゃない…」


「いいえ、止めようはあります」


ともう一つ、紙を取り出した。


「儀式に必要なアイテムが必要です。それが…木下香奈多という女性です」





関西から離れて瀬戸内海のとある小島。


面積が数キロ単位しか無い島が点在している瀬戸内海では個人所有をしている場合もあり、此処はその一つである。


一人の漁師が小島の船着場で発泡スチロールの箱を担ぎ、軽い坂道を歩く。



人が通れるくらいに舗装された道を歩いて行くと、武家屋敷のような佇まいの家が現れる。

漁師は玄関前に立ち止まると、横にあるインターホンを押し、中に居るであろう人を呼ぶ。


約三分ほど待っていると、奥から早歩きでやってくる足音が聞こえ、玄関の引き戸が開かれる。

其処に現れたのは、着物姿で黒のロングの女性であった。

体質か、日本人よりも濃い褐色の肌をし、若干であるが、顔の形としても日本人よりもプエルトリコ系に見える。


彼女は息を荒く吐き、言葉を発した。


「ど…どうも長宗我部さん」


「お嬢、名字じゃなくて名前で呼んででください」


「え…だって…元春なんて言えないしな…」


「…言ってるじゃねぇすか…"香奈多"嬢様」


彼女、香奈多は両手人差し指をくっつけて回している中、長宗我部・元春は玄関に箱を置く。


「まあ、それは良いとして…お嬢」


「…ん?」


「今日の魚はすんごいの出ましたぜ」


蓋を開けると、瀬戸内海で育った様々な魚が活け締めされ、氷に被さっていた。


「おお~、こんな良いのを貰っちゃって良いんですかね」


「どうぞどうぞ!お嬢の頼みならば俺は何倍もやれるッスから!!」


「ありがとう!元春~」(これぞまさに何かを煽てれば木に上るってやつか)


チョロいと思いつつも、根っからは感謝している。



元春は元々、木下の屋敷に勤めていた使用人頭の息子であり、小さな時から宗介の息子の幹斗と一緒に遊んでくれた。


一時期は孤児院から連れ出された時は助けにもなり、クルージング船事故の時も、宗介と一緒に死亡偽装の工作もしたほど。


彼女にとっても唯一信頼出来る人物である。


「…其れにしても…幹斗はどうしたんだろ…」


「きっと仕事が忙しいんだろ?」


「…かな…」


寂しさを表すように顔を曇らせる。それを見た元春は空元気に答える。


「まあまあ~、今日はこれで終わりだから晩飯は俺が作るさ」


「…うん…ありがとう」


元春の優しさに触れ、少しだけ笑顔を見せた。


「それだったら、玄関に居ないで中に入ろう」


「…ですね、お嬢」


魚の入った箱の蓋を閉め、再度方に担ついで家に入ろうとした時。


「…てめぇ、誰だ」


すぐに察知し、後ろを振り向く。


「…お久しぶりです、香奈多様」


其処にいたのは、紺のサラリーマンが着るリクルートスーツの男である。

背には棒状の布を巻かれたものを背負い、立っていた。


「…霧隠才蔵…てめぇか」


素早く懐から抜き取り、構えたのはFNP-45、FN社のハンドガンである。

この距離であれば、余程の素人でない限り当てることが出来るであろう。

が、霧隠才蔵は其れを気にも止めず、香奈多に向けて話しかける。


「香奈多様、我らの宿願の為に…」


「話すことは無い、前もそう話した筈でしょ?」


しかし、それを一方的に耳に貸さず、そっぽを向く。

其処から香奈多は一言。


「そんなに私を生贄にしたいの?」


皮肉るように答える。


勿論その事には充分承知していた才蔵は致し方ないと、言わんばかりに再度語りかけた。


「…それでは…これは使いたくありませんでしたが…」


何か諦めたように口を開くと、左手から携帯電話を取り出し、リダイヤルボタンを押す。

そして繋がると、それにしゃべり始めた。


「…プランBを実行…そうか…いつもながらに仕事が速いな…ならばいい」


「…香奈多様、貴方にお変わり願いたい」

携帯電話を反対に回し、香奈多に受け取るようにする。

警戒をしてか、香奈多の代わりに元春がゆっくりと片手で構えながら、すり歩き、携帯電話をぶんどって渡す。


恐る恐る、電話の受話器を耳に押し立て口を開いた。


「…もしもし?」


それが、最も恐れていた事に変わるとは思っても見なかった。


『…お母たん?』


受話器から聞こえたのは、涙を流し、脅えている、沙耶の声であった。


「…沙耶…沙耶なの!?」


『…ヒグッ…お母たん…』


「…大丈夫!何処か怪我は!?」


「その心配は要りません、彼等はキノコから採れる睡眠薬で攫う事が主なので傷一つ付けることは御法度です」


如何にも説明書口調で喋る才蔵に元春はFNP-45を向け、怒りを露わにした。


「てめぇ…沙耶ちゃんを人質にしやがったな!」


「至極当たり前だと思いますが…第一彼女を一般の保育園に預けるのは得策では無いと」


「クソッたれ!「止めて!!」っ…!?」


引き金に力がこめられた瞬間、制止される。

どうしようもない怒りを覚えるが、どうすることも出来ずに銃口を下に向けた。


そう、結局は才蔵の思うつぼである。


仕事が速いと話していたが、実際はもっと前から入念に練られた計画であり、才蔵が直接やってきたのは、単なる仕事の終わりを締めくくるためであった。


手の内で踊らされていた事を思うと、怒りがこみ上げるが、どうすることも出来ない。

奥歯を噛み締めながら、香奈多は答えた。


「…最後に一つ…御願いしたい」


「どんな事を?」


頬に流れる一筋の汗が、地面に落ち、吸い込まれると同時に己の唯一の願望を発する。


「…しんくんに会わせて下さい…」



それは、恋した少女として、愛する娘を助けたい母の…最後の願いであった。






此処は、取引を行ったホテルの一室。


あの後、ほかの部屋の客は逃げるようにチェックアウトして一挙に閑古鳥になっていたところ、大阪の拠点として好都合だと考えた瓜生がホテル丸ごと買収、スタッフであるアルバイトも、前の給与プラス福利厚生の保証付きで正式社員として雇ったのである。

その後、大量の武器弾薬、増員がやってくる光景を目の当たりにして、即倒したオーナーがいたとか…。


そんなホテルの一室。


「……ふぁ…」


目元をこすり、上体を起こす。

まだぼやける視界の中、目線を腕にある防水性の海上保安官が使うマルチウォッチを見て、一言。


「…寝過ぎた」


時間は五時五分前、つまり四時五十五分である。

ガリガリと頭を掻き、覚束無い足取りで洗面台まで向かい、青いマークの取っ手をひねり、冷たい水を頭からかぶる。


一分程水を浴び、クリアな視界を取り戻すと、丁寧に畳まれたタオルで荒く擦り付けるように拭いて行く。


真之介はそのままソファー一杯に座り、唐突に信長復活について、考え始める。


(…儀式には、その場を覆う"基点"と規模に合わせる為に、より正確な"陣作成"…そして触媒と等価交換で"人間"が大量に必要となる…)


そう考えれば、これだけの規模を作り出し、尚且つ何にも悟られずに行っていたと思えば、長年の苦労が分かる気がしてくる。が、只其れだけである。

真之介にとっては傍迷惑な代物で有る限り、中止させることも厭わない。

第一こんな事を放っておくのは馬鹿か敢えてやらせる魔術師ぐらいである。


(…という前に魔術協会が参入して来ないとなると…マジで感づかれて無いのか…)

だとすれば、木下の隠蔽工作と周りの魔術師がよっぽど上手くやっているのだろう。そんな感じで考える中、ガチャリとドアが開き、瓜生が入ってくる。


やぁと声をかけ、真之介も無言ながら右手を挙げて意志を示す。


瓜生はそのまま椅子を引き、ゆったりと座り、再度資料に目を通す。


彼の持っているのは、ミュージアムが呼び寄せた構成員の情報で、今回の作戦に必要の人数よりも多く来たので当日の部隊の再配置を検討する事になった。


人員が増えることは悪くなく、むしろ敵の主戦力が未だ不明であるため、これでも少ないと感じている。

それに、中でも退役軍人といった経験のある人物が少ないミュージアムは、古代から伝わる錬金術を使い、高性能なホムンクルスを量産して戦わせているのだが、あまりにお粗末で、考察することをあまり持ち合わせていないので、大雑把な指示では役に立たない可能性がある。

そのために、必要以上に作戦指示をしなければならない。


我らの参謀長の邪魔をしないように、テーブルの上に置かれた雑誌から数独ナンプレの紙をとり、適当にやり始める。


そんな時、真之介のスマホから着信メロディーが奏でられた。

何事かと思いながら、スマホのディスプレイを見ると、妹すみれからである。

珍しく思い、受け取りボタンを押して、何げもなく耳に当てた。


「もしも~し、すみれか?」


呑気に語りかけるが、何故か返答が無く、むしろ何か啜り泣く声だけが聞こえる。


「お~い、どうした?すみれ?」


段々何か不安な気持ちで返答を待つ中、ガチャリと音が聞こえ、誰かが交代する。


『…真之介か?』


「親父?どうしたんだ?」


それは孝司であった。

彼はすみれの携帯電話を繋いだまま、取って替わったのだろう。

そんな中、何事かよく分からない真之介は孝司から途轍もない話を、聞くことになった。


『…沙耶が…誘拐された』


「…えっ?」


一瞬、何事か考えられなくなる。


再度重くのしかかる事実を孝司は告げた。


『…今日、すみれが沙耶を迎えに行ったとき…先生が言ったんだ、「ついさっきお兄さんが迎えに来た」って…』


「…って、どういう?『真之介、その時間、お前は京都に居るんだよな?』…あっ…ああ」


あくまでも冷静に語りかける孝司に言われるまま答える。

頭の中がクリアになって来ると、とんでもない事が起きているとやっと考えられた。


『とにかく、沙耶は何処にいるか探す。だから待っててくれ』


真之介の返答を待たず、受話器から電話を切る音が聞こえ、一定のリズムで音が鳴る。


物々しい雰囲気の中、瓜生は持っていた資料をテーブルに置き、静かに口を開く。


「…何かありましたか?」


答えは分かっているものの、詳細を知るため、丁寧に問いかける。

しかし回答は言葉で無く、行動で出された。


積まれたボックスのナンバーと簡潔に書かれた名称を見てから、それを幾つか取り、開けていく。


出てきた物はG36KとガリルMARだが、特殊構造が成されている。


G36Kにはあまり使われていないAPアーマーピアシング仕様の6.8mmSPC 6.8mmx43弾頭を入れた5.56㎜の倍の威力を発揮する改造を成された専用銃「イシュタル」である。


一方のガリルは炸裂徹甲弾(バーグ陸戦条約で殆ど使用不可)を通常装備され、ストッピングパワーも限界まで上げられている為、撃って乗用車を爆発させることも可能なタイプ。

これにも名前があり、それが「サイクロプス」と呼ばれている。


その二つの銃を取り出した後、GASエクスカリバーを装着、弾倉も二つに重ねて四つ作り上げ、バックパックにしまう。


如何にも戦争に行く兵士の光景を見せられた瓜生は、何も言い出せず固まる。

こんな事が何回か有った気がするとデジャヴじみた思いを感じ取る中、真之介はそのまま部屋を出て行った。


「…マズいですね…」


行く場所には検討が付く。


すぐさま携帯を取り、ほかの部屋に待機している構成員達に連絡を入れた。





石田・成三


CV 若本規夫


木下グループ副社長であり、あらゆる圧力に対しての作戦参謀長。


声の割に年齢は瓜生と一緒で、耳年増と言われるほどだが、本人は気にしているらしい。


性格は、慎重かつ時に何の考えもなしに突撃させる。某はわわ軍師やうっかり癖の魔術師家系の如く失敗も良くある。




島左近


CV 稲田徹


二メートルもの巨漢の持ち主。


黒い甲冑に兜と面をする。普段は坊さんらしく、左近よりも武蔵坊弁慶の方がお似合いと言われがち。


性格は真面目寡黙。大柄なクセに裁縫やら料理、華道等も嗜んでいる。ちなみに成三のうっかりの一番の犠牲者。


武器は赤い穂先の槍。柄の部分は特殊な合金らしく、並みの武器では折ることおろか傷を付けることも不可能とされている。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ