間章第一話 ミスカトニック大学附属高校の生徒会長
未だ浮かばぬ次回の舞台。
クトゥルフ神話TRPGをやったら何故かシナリオの世界に迷い込む(所謂ログホライゾン的展開)
いっそのこと戦艦跡から出てきた奴の正体を出す。
タンカーがシージャックされる。
今のところこの三つのどれかを今後考えて見ていますが、ちょっとした意見をお願いします。
アーカム学園都市…。
東京都にありながら過疎地となってしまった地区をどうにかするために創り出された街。
アメリカ合衆国マサチューセッツ州にある都市をモチーフに、ジャズエイジアメリカンテイストと言う観光地に仕立て上げられ、学校等が造りやすいように研究機関や教育制度、本場アーカムのミスカトニック大学やマサチューセッツ工科大等の留学も出来る。
そのためこぞって学校法人や教育委員会が学校建設、大学も○○大アーカム校と次々創り出され、学園都市として栄える。
研究費や企業の資金も湯水のように使える所もあり、最先端技術の宝庫ともなっている。
しかし、街並みが1920年代のアメリカなので、路面電車とリニアモーターが同時に走る時代錯誤な所もあったりする。
しかも本場アーカムにも負けない部分が…所謂七不思議や聞きにくい噂が所狭しと響かれていたりする。
そんな…噂の幾つか…それが今回の話である。
ミスカトニック大学附属高校…通称アーカム高校はPMC学科と言う物がある。
実際PMC学科に所属しているのが真之助であり、PMCの何たるかを勉強している。
しかしそのPMC学科の基盤を作ったのは真之助達だけではない。
むしろ、殆どを作ったと言えるであろう。
彼の名は「新庄・アーノルド・ジャックハルト」
アーカム高校の生徒会長であり、三年でたった一人PMC学科の所属である。
PMCを目指さなくとも、考古学科はトレジャーハンターだったり歴史学科は遺跡トラップやらミイラ戦闘だったり、人類学科は狂人と殺し合いだったり、多少は戦闘術を学ぶ物だが、何故か彼は存在しなかったPMC学科を選び、今日に至る。
成績優秀、スポーツ万能、伊達メガネが眩しいという文武両道、天は二分の才おろか百分の才を与えたとも言われる。
しかし、何故か憎たらしいとは感じられない。
男女問わず人気なのだ。
普通ならばアンチと言う者達がいるのだが不思議と寄り付くことはない。
それが彼の持ち味なのかどうかは不思議なもの。
そんな彼が今、何をしているか…。
ジューと生地が焼かれ、上に山盛りキャベツと豚バラ肉、天かすが乗せられ、少量の生地が掛けられる。
隣では焼きそば麺を炒め、ソースを掛けられていた。
生地はひっくり返し、キャベツを押し付けるように焼いていくとキャベツの水分で中身がふっくらと蒸され、火を通す。
そして焼きそばを下にし、生地をそのまま上に乗せると、濃厚なウスターソースとマヨネーズ、広島ネギを山盛りに乗せられて出された。
それを生徒会長こと新庄はまだ割っていない箸を手に、合わせ、静かに口を開いた。
「…頂きます」
直ぐにヘラで等分に割り、自分の皿に乗せてから箸で掴み、口の中に入れて咀嚼する。
キャベツの歯ごたえにバラ肉のコク、生地のシャキッとした歯触りに相まって焼きそばのボリュームが見事に合わさった広島風お好み焼きを食べ、心の中で笑みを浮かべていた。
彼が居るのはアーカム高校の直ぐにある商店街、通称「食堂街」である。
アーカム高校内には食堂の設備が無く(というより、研究室がありすぎるため、食堂のスペースが無かった)、弁当持参では難しいと考え、商店街の人達から協力してもらい、朝の早い時間から営業をして貰っている。
その中でも海鮮系お好み焼き&鉄板焼の店「ディープワン」は新庄のお気に入りでもある(何故か店員が魚臭い)ので、顔馴染み状態であった。
「………」
上品に咀嚼し、思わず笑みがこぼれると魚顔の店主はこの上ない喜びを感じてお好み焼きを焼く。
新庄はその後、鉄板焼きを幾つか注文し、食べ終わった後、会計を済ませて店を後にする。
「…ふむ、やはりお好み焼きは良い…」
口元をウェットティッシュで拭いながらスタスタ道を歩く。
その姿は歌舞伎役者が舞台を練り歩くように様になっている為、通行人、特に女性等が見入った視線を送られる。
本日は日曜日。
普段忙しく生徒会の仕事やPMCとしての依頼を受ける日々があるものの、学生の休日にまで仕事を持ち込むつもりのない新庄にとっては、静かに穏やかに自由を満喫する日であるが…。
「…どうしてこんな事に…」
目の前で行われているのは月一度の開業日である銀行が武装集団に占拠されている光景である。
新庄は野次馬根性で近づいた自分の不甲斐なさに後悔しながらも、依然膠着状態の現場に少々苛立ちも感じていた。
「クソッ…仲間がそこに!?」
しかし、その理由も判明する。
どうやら相手はパンツァーファウストIIIを持っており、アーカム市警が下手に近づけば仲良くおさらばしてしまうと言うこと。
この場合、スモークを焚いて突入がセオリーだが、そうともいかない。
「……グフッ…」
それは、特殊部隊では無い機動隊の隊員が足を撃たれ、うずくまっていた。
しかもそれをなぶるように腕や腹部を削るように撃たれている。
「…クソッ…相手は狙撃の経験があるのか…」
「これじゃ撃たれっぱなしで死んじまいます!!」
他の仲間も助けにいきたい気持ちを吐露するが、それこそ相手の思う壷。
相手はゲリラを相手にする為、わざと敵を動けない状態にし、仲間を助けようと出てきた敵を撃ち殺すと言う外道極まりない手段を何の躊躇いもなく使っていた。
最早隊員の体力も限界に達し、早く応急手当てをしなければ命の危険もあった。
それを見た新庄は何の迷いもなくその場を去り、直ぐ横に五階立てのビルを発見する。
「…あれならば…」
彼はそう言い、ビルの中に入っていく。
ビルの三階を突き当たりにたどり着くと、フィンガーグローブを填め、腕をしならせるように振ると、突如突き当たりの壁がすっぱりと切れ、丸い円形の入り口が出来上がる。
其処は整備用のダクトがあり、巨漢でも入るのには苦労しない広さを持っている。
ニヤリと笑い、整備用ダクトを這うように進む。
少し進んでみると、光の射し込む場所があり、それは換気の入り口であり、其処から下を覗くことが出来る。
試しに端からそっと覗いてみると、どうやら女子トイレらしく、人の気配は感じられない。
とりあえず入り口の金網を外し、伝うように降り立つ。
そしてから抜き足で入り口まで歩いた後、ドアをノックした。
「…ん?何だ?」
どうやら廊下に武装集団の一人がいたらしく、音のした女子トイレに近づいてくる。
新庄はそのまま死角となる直ぐ横で壁に張り付いて機会を待っていると、ドアが開かれた。
「…オイ、誰か居るのか?」
男は両手に持つ二連式散弾銃を構えながら入っていくと、新庄は静かに手刀で相手の首筋を殴りつけ、倒れた瞬間に首を絞めて気絶させた。
「…まずは一人」
そう言うと男から散弾銃の弾を取り、サイドアームのM1911を抜き取り、散弾銃の銃身を細かく切断した。
「グエッ!?」
顎を殴られ、倒れ伏せる。
新庄は事同じように持っていたAKS-74の弾倉を抜き、薬室から一発コッキングして取り出し、使えないように細切れにする。
この行動をして四回目。
トイレに縛って隔離しているため着実に戦力を削っているであろう。
しかし、そろそろバレる可能性があるため新庄は次の行動に出る。
給湯室を覗き、誰も居ないことを確認し、その場にあるものを探る。
あるのは湯沸かしのやかんが二つとガスコンロ、そして調理で使う長い口のライター。
戸棚には乳児用の粉ミルクの缶が置かれていた。
「…なるほど…ベビールームがあるからか…」
そしてゴミ箱の中にはキャップが付いたままの500㏄ペットボトルが三つ。
此処で導き出された答えに、またしてもニヤリとしてやったりな顔で工作をし始める。
「…ダメだ…応答しない」
集団の一人がそう答えるとその場に居る三人の強盗犯が狼狽え始める。
十二人構成の銀行強盗団は念密な計画を元に(しかしダクトがあることを考えていない)行っていたはずが、此処に来て頓挫の危険が運びよっていた。
「…まさか、誰かが既に」
「そんな訳あるか!コッチは監視カメラも使ってんだぞ!死角に潜り込むなんざ不可能だ!!」
しかし、新庄は監視カメラのモニタールームも確保し、機械音声で応答を取っているため、只のカカシと成り下がっている。
「…とにかく、金庫側の奴らは仕事を終えたらしい。直ぐにずらかる準備をしろ!」
彼らは躊躇をしている場合では無い。
あらかじめ用意した偽装を施したトラックに現金の入ったバックを詰め、辺りにC3プラスチック爆弾を仕掛け、いつでも爆発出来るようにスイッチをセットする。
「準備完了したぜ!」
「それじゃ後はずらかるだけだ」
そう言って嬉々とした顔で去ろうとした瞬間、何か引っかけたような感覚があり、下を見ると。
ペットボトルの中に白い粉が舞い、中にライターが火を点っていた。
そして直ぐにペットボトルは破裂し、男一人を転倒させた。
「ギャア゛!?」
「「「!?」」」
突然の事に振り向いた瞬間、白い影が瞬く間に三人の頸部を殴打し、倒れ伏せた。
「…ミッション完了」
新庄が襟のボタンを外しながら、仕掛けられた爆弾の方向に腕を振るい、すっぱりと切断された。
それから新庄は消えるようにその場を去り、突入してきた特殊部隊が呆気を取られるような光景に、いったい何が起きたのか確認をしていた。
それから時間が経ち、新庄はアーカム高校の敷地内にある学生寮に帰り、割り当てられた自室に入る。
通常二人から四人が一緒に共同生活をする形だが、生徒会長と言う立場と、首席であるため一人部屋を割り当てられているのだ。
本人は共同生活に憧れを持つ方であったが、折角割り当てて貰ったので、特に意見無く素直に従った。
内装は他とは変わりないが、骨董屋で見つけた1940年代製のジュークボックスやジャズバンドのレコードや最新式の音楽機器が置かれ、壁にはギターケースとハーモニカ、電子キーボードなどが置かれている辺り、熱狂的なミュージック好きであると伺える。
今聞いているのはリンキンパークのア・サウザンド・サンズに収録されている曲「Iridescent」と言うもの。
かのマイケル・ベイ監督作品「トランスフォーマー ダークオブザムーン」のエンディングであり、映画内でもディセプティコンによって破壊された街を見た主人公達の心境を歌った曲でもある。
内容も、荒廃した街をイメージさせる歌詞であるため、絶望感漂う中の希望を捨てない心を描いている為、是非MADにオススメしたい物。
ふと、曲が最後のサビに差し掛かる所でドアの叩く音で気がつくと、新庄は重い足取りの中、向かっていくと。
「どうも、会長」
ドアが開かれ、現れたのは真之助であった。
「…宮本か」
「ああ、美人な女性じゃなくて残念だったな」
「まあ、其方だと変に気を使うから止めておく」
「だったら今から変身してみるか?」
「それはやめろ」
何故かくねりと体を曲げてモデルのようなポーズを作る。
それは冗談では無く、上海から帰ってきたら女体化も出来るようになっただとか…。
呆れ果てる新庄をよそに真之助は靴を脱ぎ、上がっていく。
「会長~、酒は何飲む?角ハイボール?其れともレモンチューハイ?」
「生憎、ノンアルコールでね。普通にペプシで行かせて貰う」
真之助の酒に手を着けず、冷蔵庫からビンのペプシコーラを持ち出す。
一方の真之助は冷蔵庫の隣にある飲料用の製氷機から氷を大ジョッキ目一杯まで突っ込み、焼酎とレモン汁、炭酸水を入れてかき混ぜてから一気に煽る。
「…最高」
「…不良め…アルコールを常用するくせに下戸とは…」
「…まあ、ちょっと後悔も…ある」
そう言うと、ソファーに寝ころび、そのままいびきをかき始める。
「…全く、片付けはいつもやらせて…」
真之助が来てから呆れ果てっぱなしだが、同時に何だか安堵感もある。
「…戻ってきてくれて、ありがとう」
それは真之助が幾つもの傷を抱え、死んでないのがおかしな程で上海から帰ってきた事。
そして現れた物々しい右腕。
其れでも自分にとっては些細な物、仲間が生きていたことは嬉しかった。
そんな思いに浸りながらも、来週始まる夏休みに一波乱ありそうな気がした。
新庄・アーノルド・ジャックハルト
CV 子安武人
アーカム高校の生徒会長で、PMC学科を設立させた人物。
常に白い学ランを着ており、対外的に伊達メガネをいつも着ける。但し、私服が無いわけではなく、チェックのワイシャツなどを好む。
武器は一見持ってはいないように見えるが、腕を振るうと其処が切断されるあたり、何か見えない物だと伺える。
真面目だが、それ以上に学校生活をより良くする事を考えている。




