第十四話 Accelerated world syndrome
背表紙的まえがき。
風魔「…バレンタイン過ぎちゃったね…」
和「…バレンタインに投稿すれば良いネタになったが…そんな事はなかった」
風魔「…委員長から貰えた?」
和「……グスッ」
風魔「……なんかごめん」
和「ごめんで済むか馬鹿やろう!テメェは其処のチョコレート食べてデブになってろチクショー!!」
風魔「………」どっさりとある。
ちなみに作者も貰える訳ねぇ…。
和彦、立華もとい涼香の二人はお互いの肩を担ぎながら、崑崙タワーから出る。
其処には、いかにもすっきりとした顔で待っていた風魔と有村の二人。
何があったのか、何台ものテクニカルが粉砕され、すっぱり斬られていた。
「やぁ、奇遇だねお二人さん」
「もし良ければ、5ドルで送ってくぜ」
二人が冷やかすように立ち上がり、見せつけるように両手で差す。
それはタクシーを示すランプを付けた、車の「メルセデスベンツ NEXT A-Class」が置かれていた。
「おいおい、どっから盗んできたんだよ…」
和彦は高級車を見ながら呆れたように口を開くと、風魔は右手人差し指をチッチッチッと舌を鳴らしながら振ると。
「盗むとは心外な。一応、一括払いだよ?」
「ハァ…規模が違うぜ」
呆れしか出てくる物はない。
左ハンドル仕様のメルセデスは唸りを上げ、今にも発進したいという言葉が聞こえるようだ…。
有村は後部座席のドアを開け、涼香を誘うように手招きをする。
「どうぞお嬢様」
「あ-…ありがとう…」
妙に上手いやり方に少し戸惑い気味ながら後部座席に乗り込み、有村はゆったりとドアを閉めた。
「其れでは其方の紳士様も…」
「ああ…ノリが良いな」
ため息しか出ない。
とりあえず流されるがまま後部座席に乗り込み、風魔は助手席、有村が運転席に座る。
「…どちらまで?」
有村が聞いてくると、涼香が和彦を見て、肩をすくめる和彦は一言決め台詞のように答えた。
「俺らの愛が語り終わるまでかな?」
「ヒュー、やるね二宮」
「聞いてるコッチが恥ずかしくなる」
「ヒッヒヒ、テメェ等に委員長とのピロートークでも聴かせてやるぜ」
「ちょ!?ちょっと二宮君!!」
冷やかす有村、悪乗りし過ぎて後悔する風魔、ラブラブっぷりを見せつける和彦に、赤面する涼香。
和彦は舌を鳴らし、指を振って答える。
「ちゃうちゃう、カ・ズ・ク・ン♪だろ?」
「!!///」
一瞬、心臓にハンマーが振り下ろされたような衝撃が走り、蒸気機関車の汽笛みたいな音が響いた気がした。
涼香の顔は溶鉱炉よりも赤く、ドギマギの状態で、今にもメルトダウンしそうである。
それを見た和彦はニヤリと口元を釣り上げ、そっと涼香の耳元に息が掛かるほど近くまで寄せ、ぼそりと静かに呟いた。
「…純真な君の心は素敵だ…」
「!?///」
遂には口や耳から蒸気を上げているようなイメージで、涼香は背もたれに寄りかかり、思考停止となる…。
「あらら…やり過ぎちまったな」
「和って…いつもそんな事を…」
「そんな訳ねぇだろ!?大体委員長の反応がありすぎんだよ!!」
「…それにしたって」
顔がひきつり、ドン引きする風魔。
それに抗議する和彦をよそに有村はギアをドライブに変え、メルセデスを発進させた。
唸るエンジン。
有村の運転するメルセデスベンツの前の型とは言え、スペックは変わる事はない。
構成員達は、何処かから手に入れたハンヴィーを走らせ、真之助達を追い始める。
「まさか、此方に全戦力集まってるのでしょうか?」
隣の沙耶はSCARを単発で迎撃をしながら真之助に問いかける。
一方の真之助は最後のモスレムを口にくわえながら答えた。
「だろうな、ついさっきダイダオスから構成員の無線傍受したら来るとよ…一個連隊クラス」
「それはそれは…おお…鬼畜鬼畜」
「ネタがもう分かるのが辛い」
アクセルを踏みっぱなしに路上に置かれた乗用車を避けながら、我が娘のコアなネタに思わず失笑。
と、具現化したパンドラが一言。
「主よ、武装がいささか心許ないぞ」
「まあ…確かに」
気付きたくない所と思いながら、手元の銃を見る。
幾つか持ってきたSCARの弾倉も後三つ、幾ら優秀でもこれだけのスピードで狙うことの出来ないP90、そしてG18C。
Titus-6ランチャーが有るものの、この場では役立たず。
目も瞑りたくなる状況下、パンドラは胸板を張って答えた。
「ならば余の出番じゃな!」
「はっ?ナイチチ張って何言っとるんだ、この厨二患者」
「貴方の出番はこのシーンだけです。クランクアップして下さい」
「なぬっ!?主たち!余は強いのだぞ!上級悪魔なのじゃぞ!!其処は本当かどうか聞くとこじゃないのか!?」
予想外の展開。流石にへこへこ頭を下げるとは思ってはいないが、まさか要らない子扱いされるとは思ってもよらず、若干涙目。
此処で沙耶がトドメの一撃。
「何を言ってるんですか?貴女は…所詮は二番手の癖に」
「フグッ!?」
「私の活躍を見てればいいんです。読者に媚びへつらうゴスロリなんてもう古いんですよ」
「アグッ!!」
「第一…貴女は…二番煎じにも…程があります」
「フギャァァァァ!?」
心のハートが何かに撃ち抜かれ、破砕する音が鳴った気がする。
パンドラはSANチェックを受けながら、真っ白なトーンに変わりつつある。
しかし、只罵る訳でない沙耶は無表情から打って変わり、笑顔で答えた。
「…でも、パンドラさん」
「………」
「今なら絶好のチャンスじゃないですか?」
「……!?」
「奴らを倒せる策とやらを見せつけて、ブッ倒せば、お株も急上昇でしょ?」
「…主よ…」
「見せつけちゃいましょう、その強さを!!」
「…うむ!!あの野郎共に見せつけてやろう!」
先程まで減ったSAN値も、元通りとなり、二人は手を握りあう。
真之助は、娘の飴と鞭の絶妙さに、頭の偏頭痛がしてきそうだ。
「と言うわけで、主よ!右腕を我が箱と合体させるぞ」
「へいへいっ…てっ!?ハァ!?」
いきなりの事に反応が遅れる。
「我が箱は666の変形を行える形状変化合金じゃ!ちょうどその腕と連結すればリーサルウェポンとなるぞ!」
「おいおい、それはちょっと聞いてないぞ!」
「トランスフォーム~」
「着けるな!装着するなって!あああ!?」
パンドラに気を取られている内に沙耶がアタッシュケースの箱を右腕に装着させ、見る見る内に真之助の右腕がトランスフォームをし始めた。
「うわあああ!?何じゃこれムズムズする!?」
「神経通っとるのか?」
「いえ、只気分的にでしょう」
真之助が離してしまったハンドルを持ちながら答える沙耶。
真之助の腕は色々な接続が切れたり繋がったりし、蒼色の弾頭の入った7.62mm×51弾が見え、その姿を現した。
それは手の甲から飛び出るように五連式銃身のMiniGanが一の腕のドラムマガジンと共に出来上がる。
パンドラの模様が浮かび上がり、銃身が時計回りに回ると、何だか凄い物が出来上がる。
「まさかのターミネーターかよ」
「弾は主の魔力からじゃ。しかし容量は数万発分はあるのう…」
「とりあえず撃ちまくって下さい」
「了解」
ガチャンと弾が装填され、銃身が回転をし始め、真之助はハンドルを任せて窓から身を乗り出した。
「……花火大会の始まりだベイベー」
回転する銃口から、7.62mm×51弾の銃火が発され、ハンヴィーに何十発も当てた。
エンジンから運転席まで撃たれ、内部のガソリンが引火し、構成員もろとも爆破した。
「ふっ、チョロいぜ」
煙を上げる銃口を口元に寄せ、息を吹きかけて口を開く。
しかし、それで怯むわけでもなく、構成員達は銃座のM2 .50キャリバー機関銃を撃ち放ち、迎撃をする。
真之助は左手を右のホルスターからカラドボルグを抜き、それに反撃を行う。
「チィ、洒落臭い!!」
空の薬莢を捨て、スピードローダーで装弾する。
その際、残りの弾を数えると後三回しかリロードが出来ない事が分かった。
「残りはこれだけか!」
右腕のバルカンをぶっ放しながら叫ぶ。
バルカンの弾丸で車両等は破壊出来るが、どうにも連隊クラスの数ではいささか火力不足。
すると、パンドラが思い付いたように口を開く。
「主よ!一度箱に戻してくれ」
「んっ?こうか?」
ガチャガチャと銃身が収まっていき、箱と腕が分離して戻る。
「それを車と合体させよ!」
「合体?」
「ハンドルにでも着ければ勝手になる!」
そう言われ、ハンドルに箱をくっつける。
箱はハンドルに埋まるように無くなり、車はパンドラの模様に染まっていき。
何処かで見たような魔改造スポーツカーに変わった。
「やべぇ、今度は車がトランスフォームしやがった!?」
「今度は人型に変わるんですか?」
「いやいや~こう言うのはバッタヒーローの最終兵器だろう」
二人が嬉々とした顔で見た感想を言っていると。
「どちらかと言えばボンドカーでは無かろうか…」
PDA内のダイダオスがぼそりと呟く。
その事には何も語らず、どうすれば良いか考察してみると、沙耶の席にあるダッシュボードからモニターとアナログスティック、そして銃のトリガーらしきものが出てきた。
「赤が誘導式ミサイルランチャー、緑が対戦車ロケット砲、そして青がフルオートショットガンじゃ!」
「なる程、私がガンナーですね」
「前に搭載されとるからバックでやらねばならん」
「ふっ…五メートル先の針穴通しよりも簡単だぜ!」
そう言ってアクセルを離し、エンジンブレーキとフットブレーキを交互に使用しながら、半回転し、バックにギアチェンジを行う。
そして直ぐさまアクセルをふかし、急発進をした。
「いらっしゃいませ、地獄の片道切符をお送りします!!」
沙耶はいつになくイキイキとした顔でトリガーを握り、青のボタンを押し、撃ち放った。
散弾はハンヴィーのボディーを貫き、中の構成員を巻き込み、ガソリンタンクに穴を空け、発火させ、けたたましい爆発音が周りを響かせる。
沙耶は直ぐさまスティックを動かし、対象に狙いを定め、トリガーを引く。
フルオートショットガン二門から数発連射され、車両が爆破されることを確認し、他の対象をターゲットにし、殲滅に計る。
薬莢が外に排出され、散弾の嵐が飛び交う中、構成員達は阿鼻叫喚の叫びを上げ、亡きの物となる。
続いては赤色の誘導式ミサイルランチャーのボタンを押し、動体反応によって感知した車両群に対し、小型ミサイルを発射させた。
ミサイルは弧を描き、狙いを定めたハンヴィーに着弾、合計七台もの車両が爆発し、回転しながら燃え盛った。
「大当たり」
「…わぉ…」
よもや現代のランチャータレットを凌駕する破壊力に驚きに満ちる。
沙耶は続けてロケット砲を残存のハンヴィーに対して数発撃ち、仲間の元に送られていく。
火の海と化したハイウェイを一瞥しながら真之助は再度同じやり方で前を向き直す。
「追ってくるかな?」
「…多分、まだ来るでしょう」
メルセデスベンツから箱を抜き出し、手元にしまう。
あれだけの武装を使ってもそう簡単には戦力が減らせない。
だが、此方はあくまで脱出が目的である。
今の内に逃げることにする。
ふと有ることに気づく。
「…爆撃機の投下させるブツは何だ?」
そう、どれほどの威力を持つ爆弾なのか気になり出す。
沙耶はその事をあまり知らず、傍受した内容に「スピアー」との単語が出てきたことを話す。
すると、更に悩み始める。
「…スピアーは戦術核とかのコードネームで…だが核なんざ使用できない。それじゃあこれだけの威力を誇る兵器とは一体…」
頭を掻きむしり、訳も分からない状況に悩みっぱなしとなる。
そして、直ぐにパンドラが何か大きいマナの流れを感知し、口を開いた。
「…主よ、どうやら魔術による大規模破壊兵器のようじゃな」
「なっ…何だって?」
その事に目を見張る真之助。
そしてパンドラは起ころうとする現実を静かに伝えた。
「…架空元素・虚数…間違いない」
真っ暗な世界。
それは地下鉄を走り回り、何かを探していた。
嗅覚器官を最大限にしようし、自分を倒した男を逃がさんと躍起になっていた。
男は特徴的な匂いを持っている。
若干不思議な煙の匂いが混じり、濡れた魚の匂いもある。
自分はふと、あれが魚人だとすれば納得いくとも思う。
しかし奴から発せられる匂いの大部分は、右腕から発せられる金属臭が一番だった。
自分はそれを頼りに追う。
あの…妖拳法使いの元へ。
ハイウェイは上海の街から出て、海を渡る巨大な橋に差し掛かっていた。
真之助は先程工事中という看板を弾き飛ばしたことを思いながら、ニヤリと口元を釣り上げる。
距離にして4㎞程、橋と橋の間には50㎡以上の道路の無い場所がある。
後ろからは百台以上並んで迫る構成員達。
選択肢は無いであろう。
「…さて…飛んでいきましょうか?」
「…致し方無さそうですね」
そう言って手元の物に捕まり、臨戦態勢を取る沙耶。
最後の踏ん張りに願いながら、フルスロットルでアクセルを強く踏みつけ、最初で最後にしたい、カースタントを成功すべく。
車を限界まで速く走らせた。
「さて、安全保障無しの一発行きましょうぜ!!」
エンジンは最早自分の熱で焼き切れそうになるが、それをなりふり構わず、全てに賭けた。
「行けるぜ!」
メルセデスは先の途切れた道路から離れ、真っ直ぐ飛び出した。
重力が掛かる数秒間、ゆっくりと時間が流れる中、全員は重さを感じず、まるて宇宙遊泳をしているみたいである。
それから直ぐに車体は下に行く重力を感じ、ベルトに締めつけられ、落ちようとした。
残り半分と言ったところで落ちる感覚を覚え、二人(人外二体)は顔を青ざめさせ、覚悟を決め掛けていた瞬間。
「落ちてたまるかーーーーー!!」
パンドラが叫び、箱の形が変わり、銀色の鍵に変化する。
そして、鍵に反応するように空間が裂け、メルセデスごとその中に入ってしまった。
少し経ってから、メルセデスは先の道路に火花を散らしながら着地した。
「………」
「………」
「………」
お互いがお互いの顔を見合わせて確認し、今の状況を考察すると。
「…ハァ~~~!」
真之助は長いため息を吐きながら背もたれを倒した。
沙耶も胸をなで下ろし、今までの張り詰めていた緊張の糸が緩んだ。
「……これで架空元素・虚数による溶解は何とかなるな」
そうパンドラが口を開く。
「…まあ、爆破範囲が此処まで来るとは思えない。とりあえず…死にはしないな」
真之助も逃げ切れた事に安堵感を覚える。
ドアを開け、外に出ると向こう側で喚き散らす構成員達が見え、思わず右手中指を立てて上に向けた。
「じゃあな!ファッキン!!」
今までの憂さ晴らしも込めたポーズに、構成員が銃を持って反撃しようとした、瞬間。
向こう側の道路を支える柱に亀裂が入り、揺れ動いた。
「!?」
「来了!?是什!?(何だ今のは!?)」
突然の事に戸惑う構成員。
すると亀裂は秒刻みに大きくなり、遂に道路を寸断してしまう。
そして、斜めになる地面にしがみつく構成員達はすぐ下の海を見て、阿鼻叫喚の地獄絵図のように変わり果てた。
「ギャァァァアアア!?我并不想死!我并不想死! !(死にたくない!死にたくない!!)」
「秋天!ーーーーー我!!(俺を助けてくれーーーーー!!)」
「而我的!我ーーーーー累或死定了! !(どけっ!俺は死んでたまるかーーーーー!!)」
押し合いへし合い、どんどん下に落ちていく。
中にはハンヴィーの間に挟まれ、グチャリと潰されたり、仲間の銃で同士撃ちしたりと、死んで行っていく。
「なっ…何だ一体…」
欠陥でもあるのかと思うが、災害の原因である柱を登る巨体を目にし、マジかよと口を漏らした。
それは自慢のハサミを持ち、白い蜘蛛の糸を伸ばしてやってくるキメラの姿であった。
表面の甲羅には破砕したような痛々しい傷跡が残っており、同型等では無く、地下の遺跡跡に来た追跡者と思われる。
「…グォォォォォォオ゛オ゛オ゛オ゛!!」
喉元を鳴らし、己を傷つけた復讐対象を見つけると、飛び上がり、真之助の前に着地する。
「………」
改めて見る巨体に、ドン引きする真之助に同じように降りた沙耶は無表情で近づき、真之助に尋ねる。
「…お友達ですか?」
「…ああ、ストーカー紛い何で扱いに困ってる」
また出会うとは思ってもおらず、真之助も意外とタフガイ?だなと思うより、勘弁してくれと思う。
どうにも出来ない感じを思う中、臨戦態勢を取るキメラは後ろに飛び退き、だいぶ離れた場所に着地した。
「…どうやら相手はスポーツマンシップの持ち主の様です」
「蟹と蜘蛛がスポーツマンシップ何て持ってるのは不思議だ」
何だか不思議な気分になる真之助。
まさか人型でない者が一番常識的と思うと悲しみを覚えてしまうのが何だか不思議でならない。
真之助は仕方が無く、カラドボルグを抜き出し、パンドラの鍵を右腕に入れ、亜魔刀を左手で構えた。
「…さてと、決着は着けさせて貰うぜ、蜘蛛公!!」
「ギシャァァァア゛ア゛ア゛ア゛!!」
ハサミと亜魔刀がぶつかり合い、火花を散らし、斬り合いを見せる。
そんじょそこらの殺陣とは一風変わった人外の戦闘に、思わず沙耶は魅取れてしまう。
ハサミの突きを回し蹴りで弾き返し、右手の鉄拳を頑丈なハサミで防御する。
カラドボルグの炸裂徹甲弾が放たれるが、装甲車の倍の頑丈さを持つそれは、さながら小型核シェルターを思わせる。
「フンッ!」
亜魔刀がハサミと前足一本を斬り落とし、直ぐにカラドボルグの照準を合わせようとするが、キメラは片方のハサミで薙払い、道路のガードレールに殴り飛ばした。
「ガハッ!?」
重傷の怪我はクトゥルフになって治ったものの、今までのダメージと疲労が残っており、徐々に真之助を追い詰めていく。
「………」
沙耶はかつての光景と同じように見える中、ジッとその場を動かない。
彼女のその姿は戦に赴いた武士を待つ妻にも見える。
「…クソッ…イテェぜ…」
口から粘ついた唾液を吐血と共に出しながらガードレールに寄り添って立ち上がる。
たとえ満身創痍でも闘気を目に宿し、諦めない不屈の精神に、キメラは喋る器官が無いことを悔やみながら、賛辞を述べるように態勢を保つ。
正直に、捕食をせず、再生し続けるには最早限界であり、武器である片方のハサミを再生させず、速度を保つために前足を再生させた。
両者には、後がない。
真之助はカラドボルグと亜魔刀をしまい、九頭竜の構えを作る。
二体の間には邪魔する者は無く、海風と若干白みがかった空を一瞥し、両者は覚悟を決め、全速力で。
駆け出し、一瞬の決着を着けた。
ドサリと倒れたのは真之助であった。
ハサミは真之助の腹部を引き裂き、即死に近い裂傷を残したのである。
沙耶は驚愕を覚え、駆け出していく。
「ハッハッハ!」
必死に走る少女の目には涙が流れ、力尽きた真之助に寄り添い、彼の身体を揺さぶった。
「…起きて下さい…起きて下さいよ…お父さん…」
しかしピクリとも動かず、反応を示さない。
いつも聞こえる力強い心臓の鼓動も、響く事は無い。
沙耶の脳裏によぎったのは、死のイメージであった。
「……っだ…」
不意に呟く。
「…やだ…」
「…いやだ…絶対いやだ!!」
普段の冷静な沙耶とは思えない、泣きじゃくった声を出し、真之助の身体を叩く。
「死んじゃイヤだ!お父さん!」
年相応の駄々っ子のように、真之助の前で暴れるが、動くことは無い。
大切な者を失うのが怖かった沙耶には目の前の事が許せなかった。
「お願いだよ…目を覚ましてよ…」
「…せっかく会えたのに…まだ聞けてないこと…いっぱいあるのに…」
「…死なないでよ…お父さん」
涙がこぼれ、真之助の身体に落ちる。
そんな中、立ち去ろうとするキメラは何かあることに気がつき、振り向いてみる。
其処には一機のUAVが滞空しており、装備のM2ブローニングを二門動かし、掃射した。
「!?」
いきなりの出来事に驚き、防ぐことが出来ない。
顔全体に五十口径のライフル弾が撃ち込まれ、怯む中、ヘルファイアミサイルを二発撃ち込む。
対戦車ミサイルの爆炎に包まれたキメラは暴れ回っていると、とんでもない光景を見た。
それは、死んだはずの真之助がニヤリと笑い、胸ポケットにしまっていた重力魔導弾を一発上部に込めた。
「…カラドボルグ…モードデコンポーザー」
パンドラと合体したカラドボルグは見る見るうちに形状を変え、カービンライフルの様な長めの銃身を持つリボルバーに変わる。
銃身に彫られた文字は、「Au nom de notre Sainte Vierge(我、聖処女の名の下に)」と、フランス語で書かれていた。
「……汝、されど魂の救済を…」
そう言い、聖槍「ロンギヌス」から放たれた重力魔導弾は今までの威力を越える破壊を見せながら、キメラの身体を貫き通し、半分消滅させた。
「…もう…こりごりだぜ…」
ロンギヌスは元に戻り、カラドボルグになると、ホルスターにしまう。
真之助は倒れたキメラを一瞥し、ポカポカ殴りつける沙耶に甘んじて受けながら、全ての終わりを感じ取った。
背表紙的あとがき
真「……ゲフッ…」
孝司「…ゲップ…もう…食べれん」
香奈多「これにオレンジピールでも入れようか」
すみれ「やっぱりウイスキー入りチョコレートはいいね」
沙耶「ブラックサンダーの再現」
千紗英「…ガトーショコラ…」
真「…もうだめだ」
孝司「…一年以上チョコレート摂取してる気分だね、チクショー…」
チョコレートは糖分と乳類が少ない物ほど体にいいので、是非とも受験生には食べて貰いたい70%以上カカオチョコレート。




