第十二話 No name monster
背表紙的、まえがき
風「………」
和「………」
真「…風魔の探索者の風葉君…死にそうだな…」
風「何で和がファンブルの!?」
和「知るか!!80%でファンブルってのがおかしいんだ!?」
真「さっきから失敗やらファンブルが目立つな…しょうもない所で成功するのが不思議だよ」
和「…俺達はダイス神を怒らせたのか…」
あとがきに続く!?
頭蓋骨にヒビが入る。
腹部を殴打され、内臓がシャボン玉のように弾け、破裂する。
胃から食道を通り抜け、口からは吐瀉物と静脈が裂けて飛び出す黒っぽい血液が混ざり合って吐き出された。
真之助はうつぶせになって倒れ、血だまりを作る。
マーカスは興味を失ったか、その場を去ろうとしたが、突然何かを思い出したように踵を返す。
「そうでした。まだ"彼女"の味見をしておりませんね~」
「…!?」
意識が混濁する中、真之助は立ち上がろうと両腕に力を込める。
しかし、相当量の血を流している為、立ち上がるほどの力を出すことは出来ない。
地面に広がる血がズルリと油のように滑り、ドチャリと音を立てて倒れ込んでしまう。
必死に手を伸ばそうとしても、どうしようも出来ない。
「…無駄に足掻けば死にますよ」
「…ガフッ…誰が…死ぬ…か!!」
真之助の前ではそんな助言は意味を為さない。
何とか上体を起こし、立とうと足を踏ん張る。
呆れたようにマーカスは空いた手を握り締め、思いっきり振りかぶる。
「…ガッツだけは認めます。しかし…」
拳は真之助の顎を打ち、平衡感覚を狂わせ、そのまま仰向けに倒れた。
「ガッ!?」
最早顎の骨も砕け、まともに口を閉じることも出来なくなってしまう。
真之助は何も出来ないまま、せめて意識だけでも保とうとまぶたに力を込めようとする。
しかし、そんな努力も虚しく、暗い闇の中に意識が落ちていった…。
「…また、起き上がれては面倒です。いっそのこと潰してしまいましょう」
そう言い、マーカスは真之助の頭に足を乗せ、踏み砕こうとした瞬間。
25㎜GAU-12/Uイコライザーバルカン砲の銃火がマーカスを襲った。
「何っ!?」
マントはボロボロに撃たれ、身体中を穴あきチーズのように変えられる。
その射撃はとてつもなく精密で、掴まれてる凛湖や真之助には一切当てておらず、殆どはマーカスの身体を貫き、引き裂いたのだ。
「やりっ!!沙耶ちゃん!応急手当てお願い!」
「もう可能ですよ」
「はやっ!?」
F-35Bのコックピットに居る香奈多は操縦桿を握りながら、ハッチを開け、後ろの沙耶を外に出そうとした。
時に、マーカスは頭が消えてなくなった状態で右腕を伸ばし、親指と中指を付け、勢い良く、人差し指に向けて弾いた。
瞬間、F-35Bのエンジンは爆発し、沙耶はコックピットから投げ出され、海に落ち、香奈多は戦闘機と共に、地面に叩かれた。
有利と考えられた状況は一変し、最悪の結果が残される。
真之助は瞬時にブラックアウトから抜け出し、目の前の光景に目を疑った。
「…あっ…かなちゃん?」
それが香奈多のF-35Bだと判明する。
マーカスは何も言わないまま、両刃の長剣を取り出し、コックピットに向けて振り下ろそうとする。
「消えなさい。この世から」
その言葉に、突然真之助に映ったのは。
白木の棺に入る筈だった遺体も、残らないまま、遺品を積め、火葬される光景だった。
無論、それがまことでは無いことも知っている。
しかしそれは数秒後には本当になっていることにもなる。
次の瞬間、真之助は不可能だと思われたことをがむしゃらに立ち上がり、その長剣の刃を。
右腕で受け止めた。
「ガア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!?」
「!?」
中指を巻き込み、長剣の刃は肘の手前までで止まる。
上腕部の血管は割け、大量の血を流しながらも、真之助は剣を押さえこんだ。
「…全く…貴方には本当に…怪物ですかな?」
「…テメェ…とは…違っ…」
「これだけのダメージで駄目であれば…致し方ない」
そう言って剣を引き抜き、蹴りを放つ。
真之助は認識したが、身体が動かせる訳でなく、その直撃を受け、肋骨が折れて肺に刺さる。
そしてもう片肺も、パチパチと割れていき、呼吸が出来なくなった。
「ガッ!?」
擦るように地面に叩きつけられ、最早動くことも出来なくなった。
マーカスは真之助の頭上に立ち、長剣の切っ先を心臓に目掛け。
「…さてと。其れでは」
突き刺した。
自分の心臓から鼓動が止まるのを感じる。
赤血球に酸素を渡し、全身に巡らせる機能は、自身の傷から血液を漏らし、寿命を縮めていく。
真之助は脳死まで数分間、走馬灯を見ていた。
家族と旅行に出掛けた時や、妹の誕生の時。
和彦や風魔、そして黒い長髪の女性と共に戦いに明け暮れ、遺産を回収してきた時。
そして、沙耶と出会い、香奈多と再会出来たとき。
走馬灯は一本のフィルムと言うが、まさしくその通りだと思いながら。
死の先に向かおうとした。
俺は任務先でチェコのプラハにやってきた。
其処はおとぎの国と思うくらい幻想的な街並みで、道ばたには糸で操る人形劇もある。
ビールは本場ドイツにも負けない程種類があり、俺は一日中ビールと肴で飲み明かした。
ふと、プラハの古本屋に立ち寄って見ると年甲斐も無く、一冊の絵本を手に取った。
幻想的な街並みであるプラハは数多くの有名な絵本を産出している。
しかし、その本は見たことがない。
つたないチェコ語で、その本を買い、ホテルで読むことにした。
タイトルは「なまえのないかいぶつ」。
なまえのないかいぶつは名前が欲しかった。
其処で名前を探す旅をする事にした。
なまえのないかいぶつは二つに分けて西と東に別れる。
東に行ったかいぶつは、木こりと話をして木こりの名前を貰い、木こりを力持ちにしたが、お腹が減って中から食べてしまった。
またかいぶつは名前が無くなってしまう。
靴屋や鍛冶屋、狩人の中に入ったがお腹が空いて食べてしまう。
そんなある日、お城に住む病弱な王子の名前を貰いました。
名前とお城の暮らしを気に入りましたが、お腹が空いて仕方がありません。
王子は王様や家来を食べてしまった。
王子はお城から去り、荒野にやってくると西へ行ったかいぶつに出会い、王子はこう言いました。
「素敵な名前を貰ったんだ」
しかし西のかいぶつは。
「名前なんて要らないわ。だって私たちはなまえのないかいぶつですもの」
そう言った瞬間、王子はかいぶつを食べてしまった。
もう名前を呼んでくれる人はいません。
ヨハン…いい名前なのに…。
それを読み切ると…、心臓が爆発しそうなくらい鼓動が動き、思わず押さえ込んだ。
俺には秘密がある。
ほんの些細な秘密だ。
五歳の時、誰かに連れ去られ、アメリカの何処かに誘拐された。
場所は分からない。ただ光り輝くネオンや巨大なルーレットみたいな建物を見る限り、ラスベガスのようなカジノがあるところだろう。
目隠しされ、猿轡もされているため口から止めどなく唾液が漏れる。
ガチャンと鍵がかけられ、突き飛ばされるとよく状況が読めない内に周りに人が囲んだのか、ブツブツと聞いたこともない言語で喋り始める。
次の瞬間、身体が重くのし掛かり、全部に重りを乗っけたような感覚が襲った。
俺は何とかもがこうとするが、それをあざ笑うように動くことは無い。
その時、自分が死ぬのか?と思う。
蛾を捕まえて羽をむしった時を思い出し、それと同じだと思う。
これは神様からの怒りなんだな…。
そう考え、何もかも投げだそうとしていた。
其処から記憶が途切れ、何秒も経たずに目を覚ますと、其処は病院であった。
それから大使館からやってきた当時外交官の校長「松永久秀」が成田まで送ってくれた。
何事も無く、また平和な日々を過ごす中、ある異変に気が付いた。
それは、1日の生活の中で…五分間程記憶が無くなり、意識がなくなると言うもの。
しかし、どんなに話を聞いても「普段通り」だと言われる。
そのため、多少の不安があっても、一種の持病として向き合っていく事を決めた。
だが、その時までの話。
木下臓猿との戦いから、一分程伸びた。
その時、何故かは分からなかった。
次第に伸びていく時間に、不安を覚える。
そして、八分まで伸びた頃、自分自身の持つ長刀「亜魔刀」を引き抜く度に時間が長くなる傾向を見つける。
それから今まで亜魔刀を振らず、だましだましの状態で戦っていた。
その結果がこのざまである。
長剣を心臓から抜き、血を拭いとりながら事切れた真之助の四肢を見渡し、ぼそりと呟く。
「……一応、潰しておきますか」
そう言うと右腕の肘に足を乗せ、グシャリと潰れた。
靴底に引っ付く血液を気にせず、右足、左足、左腕を挽き潰した。
「…最後は…」
頭にかけようとする。しかしふと頭によぎるのは、F-35Bのパイロットであった。
真之助が命すら天秤にかけようとした人物が乗っている。
そんな大切な人が居るならば、自分の物にしてしまいたい。そう思い、踏み潰そうとした足を下げ、F-35Bのコックピットに向かう。
中には、頭を打ち、血を流す香奈多と沙耶の二人がぐったりとしており、マーカスは舌なめずりをして、固定器具を引き剥がす。
引き剥がされ、首元を掴まれた香奈多は苦しげに顔を歪め、マーカスの嗜虐心をくすぐる。
そのまま頭から流れる血液を長い舌で綺麗に舐めとる。
すると、身体の芯から震えるような美味を味わった。
「…excellent!処女でない娘にこんな深い味わいがあるとは…いやっ…幼き日から子を育てる苦労が深みを…コクを与えるのか!?」
新しい発見と言う喜びを心の底から感じ得ると、無我夢中に香奈多を腰から抱き寄せ、連れて行く事を考えた。
「今日と言う日はとても素晴らしい…こんな日がいつまでも…続いてほしい」
感謝感激の気持ちで帰路に就こうとしたとき、何やら背中から怖気が走った。
「…!?」
勢い良く顔を振り向き、真之助がいる場所を見た。
しかしあったのは死体だけ。
何故か安堵感を覚え、自分の杞憂だと、心の中で思いに浸るが、そんな事はどうでもいい。
マーカスは再び歩き出し。
その安堵が杞憂ではなく、警告だと気付くのに、数秒かかった。
血潮が燃えたぎる。
止まっていた心臓は何かに握り締められ、まるで一定のリズムで動かされる。
千切れ、裂けた血管は縫い合わせるように癒着し、細胞を形成する。
弾けた内臓や肺胞は元に戻る。
それに加え、身体全体を何かに覆われ、創り出された。
「…名前…俺は…なまえのないかいぶつ…」
『いや…違うな』
「………」
『名前はあるぜ。決して"なまえのないかいぶつ"とは言わせない』
「……俺は…」
『魂の底から叫べ、俺の名を…俺の名前を!!』
「My name cthulhu(我が名はクトゥルフ)」
背表紙的、あとがき
凛「…風魔のキャラは死に…二宮のはSAN値0…真のは?」
和「…一人でイタカ倒しやがった」
凛「マジで!?」
へべく…。




