第九話 Baby Let's Meet in Hell
背表紙的まえがき。
有村昂と那賀知世子、冬の夜道編
昂「………」
チョコ「………」
昂「…どったの?」
チョコ「あっ!あっ…その!?」ジタバタ
昂「…ハァ…」
PM11:38
日本海上空。
一機の戦闘機「F-35B」が真夜中の空を飛んでいる。
機体には可愛くデフォルメされた少女の顔と名前がペイントされており、所謂「オタク系痛戦闘機」となっている。
複座式のコックピットには沙耶と香奈多の二人が乗っており、時間を気にしながら沙耶は一言問いかけた。
「…後どのくらいでしょうか?」
「う~ん、もうすぐ上海だよ。沙耶ちゃん」
「どや顔でサムズアップされても困ります。全く、明日は学校なのに…」
「良いじゃん良いじゃん、私は成績優秀だし、1日休んでもどうって事無い!」
「…ハァ…」
思わずため息。馬鹿ではないがアホの子の母親にどれほど呆れたのか、ギネス記録になるほどだろう…。
そう思いながらシューターの沙耶は連立方程式と古今和歌集の宿題に取りかかる。
そんな中でも、沙耶は一つ思う。
(…やはり心配なんですね…)
それは口に出さなくても分かっている。
香奈多のまだ見えぬ上海を眺める姿に哀愁感を覚えながら、沙耶は仕方がないと考え、数式をノートに書いていく。
同時刻....
六発の重力魔導弾を抜き取り、爆裂徹甲弾をカラドボルグに装填する。
内一発の重力魔導弾は胸ポケットに。
真之助はこの行為を迷信みたいなジンクスと考えているが、最早一種の癖になっている。
「…さてと」
九回目と付け足し、蒼い刀身の刃を鞘に納刀しある構えをする。
キメラはその行動を攻撃の手段として捉えている。
それは所謂居合い、抜刀術と呼び、技であれど試合や実戦では不向きとされる。
何故ならば、居合いは飛距離は延びるものの、一刀目が避けられれば普通に切りかかって来る方が早く、対処出来ずに頭をかち割られる末路となるだろう。
しかしそれでもなお、居合いに拘るのであるならば、それほど自信があると考えられるのだろう。
お互い一ミリも動かないままジィ…とする中、先程の壮大なぶっ壊しをしたため、大人の握り拳大くらいの石が上から落ち、双方の立つ床に当たって砕ける。
瞬間、真之助は一瞬の速さで詰め寄り、キメラの左爪の付け根を居合い抜きで斬った。
「ガギャァァァァア゛ア゛ア゛!?」
いきなりの事に体液を噴き出させながら右の爪を振るい、納刀していた真之助を襲う。
そして真之助は鞘から三寸程、亜魔刀の刃を出して受け流し、右で蹴り込み、脱出を図る。
逆の体勢でスライディングをしながら両手で倒立のように立ち上がり、着地する。
真之助は腰元に亜魔刀を着ける金具で留め、九頭竜の構えを作る。
一方のキメラは痛みを受けながらも斬られた左の爪が瞬く間に再生し、元の状態に戻ってしまった。
「…マジかよ」
キメラの脅威的な再生力に狼狽えてしまうが、口元をニヤリと釣り上げ、言い放った。
「そうでなくちゃな!!」
其れを感知したか、キメラは八本の脚に力を掛け、真之助に飛びかかる。
一方の真之助は襲いかかるキメラに対峙するよう、右足に力を込める。
お互いが接近しかけた瞬間、キメラは爪を、真之助は鎌鼬のような鋭い回し蹴りを。
ぶつけた。
「グッ!?」
「■■!?」
お互い体勢を立て直し、拳を振るう真之助。
キメラも負けじと爪を突かせた。
「チィ!?」
硬い外甲に、余り気を込めていないストレートでは表面を削るのみ。
大振りに突かれた爪も左手で受け流され、金属製の床に突き刺さるのみ。
そのまま左アッパーを繰り出す真之助だがキメラも左の爪でガードし、直撃を免れる。
その瞬間、真之助の左手から気による帯電が放たれた。
「■■■■!?」
キメラの左の爪から灰色の煙が溢れ、焼け焦げる匂いが充満する。
キメラは即座に飛び退き、タンパク質の変性により動かなくなった左の爪を右の爪で切り落とす。
そして新しい爪が生え替わると最早容赦などしないと言わんばかりに爪をガチャガチャ動かす。
真之助はキメラを挑発するように右手で手招きしながら口を開いて「カモーン!」と叫んだ。
「…■■■■■!!」
口の泡を撒き散らし、咆哮を上げ、キメラは目に見えぬ程の速さで真之助に詰め寄った。
「なぬ!?」
図体の大きさに似合わぬスピードに真之助は驚く。
蜘蛛は獲物などを捕まえる時や天敵から逃げる際、瞬間移動に近い高速ジャンプを行える。
物理学上、2~3㎡程の大きさの生物がそれだけの速さを瞬発的に行える物ではない。
しかし、キメラは人為的に創り出された蟹と蜘蛛の亜種、自然界では不可能な生態系も遺伝子操作されれば有り得ない化物も作り出せるのだろう。
キメラの両方の爪が襲いかかる中、真之助は両手を伸ばし、両方とも掴んだ。
「!?」
そして歯を食いしばり何トンもの重さのキメラをそのまま投げ飛ばした。
「チェストーーーーー!!」
数メートル先の壁にぶち当たり、キメラは腹側を見せてしまう。
そして真之助は右手に力を込め、拳を作りながら、螺旋を描くような強力な右ストレートである「九頭 右竜・徹陣」を放った。
腹の表面を突き破り、中の肉や肺、脳漿を混合させ、爆裂させた。
「■■■■■■■!!」
キメラは体液混じりの泡を吐き出し、痙攣しながらその命を散らせていく。
「…じゃあな、甲殻類」
めり込んだ拳を引っこ抜き、脳漿やら体液やらが粘性を帯びて糸を引く様を見ると「ウエッ」と鼻をつまんで壁やら何やらにこすりつける。
「我ながらキモいのとツルんじまったぜ…」
嫌そうな顔で呟きながら、落ちてきたと思われる所を眺める。
「…我ながら彼処からよく無事だったぜ」
ビル九階立てと思われる高さに思わず苦笑いが絶えない。
とりあえず登れないか見てみると、金属製なのかどうか分からない素材は鏡のように光沢を放ち、登るにも登攀の技能があっても不可能と考えられた。
「…他の手で行くか…」
納得は出来ないが、何処か出られる場所を探すしか無く、脇にある幾つかの小路を頼りに進んでいく。
真之助はある事に気がつく。
「…此処って斜めに傾いてる?」
首を傾げて目線を右寄りに斜めに見ると。
「…なるほど、だから妙な形してるな~と思ったよ」
赤く腫れた額を抑え、ふむふむと頷く。
次に瓦礫の一部を礫程に砕き、それらを散弾のように投げてばらまく。
壁や床に当たり、音を立てて砂粒まで砕けると、真之助は耳を澄ませて音を聞き取った。
「ふむふむ、あれがこうで…此処があちらで…」
と呟き、薄暗い空間を闊歩する。
これらの方法はソナーと一緒で、音を発し、音の波の動きで障害物の形状を判断し、敵の動きや障害物の有無などを確かめる事が出来る。
但し真之助のやったことはそれだけではない。
真之助は音の波を聴覚で感じ取り、それをイメージし、仮想の地図を作り出す。
そして音の聞こえる範囲を闊歩し、視覚で細かい部分を付け足していく。
これらは磁力を気で感じ取れる九頭竜の使い手で無ければ不可能であり、尚且つ今まで難解な迷路を進んできた経験も含めれば真之助のみしか使えない特殊技能であろう。
粗方脳内イメージが済み、この方舟の正体について判明した事実がある。
「…コイツは宇宙船だな。星間移動を目的とした空母かな?」
腕を組み、周りを見回しながら口を開く。
其処は乗員達の憩いの場か、椅子らしき物やガラスで出来ている割れた画面等、今までの殺風景な空間には無い、生活感溢れるフロアであった。
ふと、目を向けると上に行けるであろうエレベーターらしきものがある。
しかし、動力源が来ていないせいかエレベーターの足場は動いておらず、うんともすんともしない。
仕方がないと見た真之助は動力源を見つけるため、船の心臓部のエンジンらしき場所を目指す。
エンジンの場所は大方後ろ。
何度か似たようなものをミュージアムのハイキュレーター達と見たり、模型で再現したりした記憶を頼りに進んでいく。
なるべく周りに気遣いながら石を投げ、下に行くルートを探ってみると。
「…ビンゴ」
機関部と思わしき鋼鉄の心臓と出会った。
それは経験上、エンジンだと判断出来るものと言える。
今まで動かし、大宇宙の銀河の海を航行した船もこれらも、地球上に蔓延する「酸素」によって蝕まれ、錆を浮かせている。
ふと有村や蒼鬼の顔が浮かぶ。
「アイツ等が見たら涙がちょちょぎれそうだな」
主に嬉し涙の意味で。
辺りを見回し、歩いていると先から周りより若干濃い光が目に止まった。
「………」
無言で光を辿ってみる。
それは段々強くなり、一つ曲がった先にその光の光源と思わしきものを見つけ出した。
「…あれか」
真之助は急ぎ足でその光源のある場所を曲がり、その正体を目に押さえた。
其処には、宙に浮かんだままの水らしきものの中に、二足歩行の出来そうな人型の存在がいた。
顔は目のようなものにのっぺらぼうに鼻らしき穴2つと口、耳らしき穴が付き、身体は金属製の甲冑らしきアーマーに覆われている。
試しに宙に浮く水球に手を触れてみると、水らしい物なのか、指先に冷たい冷水のような感触を覚える。
そのままズブズブと腕を入れ、裾が濡れることを気にせずに中の存在に触れようと手を伸ばす。
した瞬間、水球は水風船のように弾けて割れ、存在はその下にある台に落ちた。
「!?」
いきなりの事に焦って跳び引く。
ビショビショになった服を見ながら少しため息を吐き出し、再度その存在に近付いてみる。
「…人間…じゃないな…」
宇宙人のカテゴリーに入るならばそう言えば良いのかも知れないが、余り納得がいけない。
とりあえず、意識があるのか、人間とは違うので脈やら心音を聞くことが出来るか分からないが、やってみると。
「………動いて…る?」
どうやら一定のタイミングで心音らしきものが聞こえるため、生物学上生きていると考えられた。
次に起こしてみる。
襲いかかるかどうかはその後にすればいいと考え、頬あたりをペチペチ音を立てて叩いてみる。
するとそれは目らしき物をゆっくりと開き、ぼやけた視界を修正しながら鮮明にしていくと。
『…我は…これは一体…』
ぼそりと何かを発する。
それは何なのか、真之助は判明した。
「…んっ…ゴホン…『ソナタ、それはエノク語かな?』」
そう言うと、その存在は驚きに満ちながら真之助に目線を向け、声を発した。
『…神の言葉を語れるのか?エンデミュオンがそれを使うのは初めてだ…』
「『少しだけ』…って、エンデミュオン?」
『…ふむ、それ以上は困難か…致し方あるまい』
そう言い、手と思わしきもので真之助の身体に触れ、何かを探り始める。
一体何やら、分からない状況に動かず待機。
するとポーチから真之助のPDAを抜き取り、それを両手で軽く握り込み、何か小さく呟くと。
「…これで良いだろう」
「…んなっ…」
日本語を流暢に喋り出した。
「んっ?何かおかしな事でも言っているのかな?」
「あっ…いやっ、いきなり日本語を喋れるとは…」
「なるほど、そのことなら…この端末のデータを"読み取った"のだ」
真之助のPDAを摘むように持ちながら答える。
「よっ…読み取った?」
真之助がうろたえながら問いかけると頷いて口を開く。
「ああ、我等"ノンモ"の一族は身体を電子化させることが出来る。こうやって手を触れ、身体の一部を電子化してダウンロードが可能だ」
「ハァ…まるで生きてるUSBメモリだな…それより高性能だが…」
生物とは思えない構造に真之助は舌を巻く。
ノンモの一族と語る彼?は上体を起こし、真之助に向き直ってから逆に問いかけた。
「所でエンデミュオンの者よ。あれから一時が経った?戦争はどうなったのだ?」
「んっ?何のことだ?」
「……まさか、それ程経ってしまったか…」
「おいおい、勝手に話を進めるな。エンデミュオンって?戦争ってどういうことだ?」
「…話せば長くなるな…」
「我が名はダイダオス。第七銀河連艦隊の艦隊長であり、ハスター級空母艦艦長を勤めていた」
イタカ級を四十隻、ロイガー級とツァール級がそれぞれ百隻以上を引き連れ、銀河系の支配していた。
ちなみにこの艦隊を総勢数万以上所持し、銀河系の隅々に置いておいたのだ。
我等が主はこの星を見つけ、我等の第二の故郷としよう。
そう考え、この星の名を「エデン」と名付けた。
そもそも侵略はせず、あくまで属州として交渉したが、君達「エンデミュオン」は怒り狂い、戦争と化した。
我等は仕方が無くエンデミュオンと戦争をしたが、エンデミュオンの民は奇怪な技でイタカ級を落とし、一騎当千の強さで我等ノンモ兵を薙ぎ倒した。
だが彼等も心を持っていた。
何故ならば我等ノンモやバイアクヘー、ミ=ゴの死者は予想よりも居らず、むしろ彼等と共存を考え、我等銀河連の一部族として迎え入れたいとも思っていた…。
しかし其れを許さなかったのは我等が主のハスター様であった。
あの方は支配欲を持ち、エデンの神となりたかった。
流石の強者達もハスター様には適わなかった…。
大地は焼け、一番の海を干からびさせ、一つであった大陸を真ん中から割ってしまった…。
エンデミュオン達は奴隷となり、あれほどいた民たちは貧困に悩ませられ、死に絶えかけていた時。
あの者が現れた。
「…あの者?」
「名前は最早口という器官では出せぬ者…只民たちは彼を『九頭竜』と呼んでいた…確かにそうとも聞こえなくは無い」
「…九頭竜…」
「彼が一度熊のような太い腕を振らせると一番高い山が割れるほど…一度羽根を靡かせれば巨大な台風を創り出す…彼はそんな体躯を持ちながら、ハスター様と戦いを挑んだ…」
其れは最早、我等の戦いがそこらの小競り合いにしか見えなかった。
九頭竜がハスター様ごと場所を転移させ、銀河系の離れた空間で戦いを行った。
星の残骸ばかりのアステロイド帯が丸々一個…、半径五億光年程の広さを持つ小惑星群が消える規模がたった一分で終わったのだ…。
その後ハスター様は人間一人分の体組織を残し、消滅した。
これには我等も驚くしかない。その後我等は九頭竜が静まるまでなぶられ、滅ぼされたのだろう。
私はこのツァール級巡洋艦に逃れた。
「…うん、しゃあないとは言え、同情する」
「主の命とは言え、致し方がない」
「しかし見事な暴れっぷりだな。スケールが違いすぎてイメージ湧かない」
「ハスター様の本気なぞ我等の生誕してから一度も見たことがない。その時も破壊規模を測定しただけだ」
果たしてレーザーの撃ち合いだったのか…殴り合いだったのか…。
未だに謎とされる支配者同士の戦いに不安な空気が立ち込めた。
真之助は其れを追い払うよう、話題を変えることにする。
「…そういえば、自己紹介が済んでなかったな…ってまさか…」
「…うむ、ソナタの名は知っている。その端末から読み取った」
「便利だな。そんな事出来ればスカイネットみたいに掌握出来るんじゃねぇ?」
「エンデミュオンの民が持っていた分子コンピューターには入れなかったがな…」
冷や汗を流す真之助に対してダイダオスは遠い目で昔を思い馳せていた。
とりあえず当初の目的を解決するため、真之助はダイダオスに動力源に関して質問をする。
「…さて、艦長さんだと言うと。この船の動力を何とか出来るかな?」
ダイダオスは少し唸り、口を開いた。
「うむ…、これだけ時間が経っていると動くかどうかは運任せに近い。何せこの星は我等ノンモの星よりも酸素が強いからな…」
「それじゃ、大丈夫なのか?大気やら…」
「その心配は大丈夫だ。既に我等はこの地球の大気に対応している。只我等の星から持ってきた金属は普通より錆びやすいから動くかどうか…」
ダイダオスはそう言いながら、床に立ち上がり、ゆっくりとした足取りで外の通路を歩いていく。
真之助もそれに付いていった。
歩いて数分の道のり。とある部屋に着くとその部屋を見た真之助は口を開く。
「あの真ん中のが?」
「…ああ、動力源と"鍵"の役目を果たす………何と言うものだろうか?」
「それは俺が聞きたい」
キョトンと首を傾げるダイダオス。どうやら自身も知らないらしい。
「何せ、あれは違う世界から手に入れた"アーティファクト"と言うものだ。それぞれ名前が違うので一艦一艦覚えてられん」
「アーティファクト?まさか"魔具"とか言わないよな?」
「…そうとも言うな」
「………( ̄○ ̄;)」
この顔文字の通りになる真之助。
とりあえずアーティファクトと呼ばれたものをまた見直す。
其処に有るのは、組木細工のような模様をした何らかの金属製の箱で、大きさはオルゴールでも入っているような感じである。
其れを手にとって見ろと言わんばかりにジェスチャーをするダイダオスに真之助は仕方が無くその箱に触れた。
瞬間、箱が動き出し、ガチャガチャとルービックキューブのように組み上げていく。
そして、出来上がったのは一つのスーツケースであった。
「…ふむ、これは使用者の心理で組み上がるのか…」
「ってオイ!!いきなり何だよこれ!?」
「…得体の知れん物は障りたくないからな…」
「だからって俺に触らせんなチクショー!」
スーツケースを振り回しながら叫ぶ真之助。するとダイダオスは口を開いた。
「オマケに…後ろにはそのアーティファクトの精霊がおるな…まさか幼女趣味とは…」
「何がロリコンじゃい!第一俺には嫁が………ふぇい?」
何のことかさっぱりと分からない真之助は後ろを振り向くと、黒と白のゴシック&ロリータ衣装を纏う、白銀のロングヘアーが特徴的な美しい少女がいた。
「………」
「…ふむ、どうやらソナタが担い手か…」
驚愕と少女の美しさに口が閉じなくなり、まばたきばかりする。
「…オイ、聞こえているのか?」
少女は詰め寄り、西洋人形のように蒼い瞳で真之助の顔をジッと覗く。
真之助は蛇に睨まれた蛙のように動かなくなり、目線だけをダイダオスに向けるが…。
(…ムリムリムリ)
首を横に振り、どうしようも出来ないことを示した。
何も答えない真之助にムスッと怒った顔になり、トゥーシューズで右足のスネを思いっきり蹴飛ばした。
「…ソナタは只の石像か!」
「ヒギィ!?」
余りもの痛みに瞳が上よりになり、アヘ顔と言われるマニアックな表情を作り出した後、その場で悶える。
「全く、余を困らせるで無い。少しは敬意を払って貰いたいが…」
「敬意も何もねぇだろうが馬鹿野郎ーーーーー!!」
「ふむ、人間か…まあ選り好みするほどの余裕が無いので仕方があるまい…」
「無視かよ!もう少し言葉を聞いてくれやーーーーー!!」
痛みを抑えながら若干涙目の真之助。
少女は其れをあまり気にせずに無視して言葉を続けて発する。
「我は銀の鍵であり箱!余の名は『パンドラ』、666(オーメン)の数字を持つ者なり!」
「………」
「………」
自信満々になだらかな胸を張る少女ことパンドラに最早痛みを忘れるほど呆れる真之助、同じように呆れるダイダオス。
そして二人はパンドラが聞こえるくらいのひそひそ声で耳打ちし合う。
「…なぁなぁ…あれって所謂厨二病?」
「厨二病とは中二病と書くのでは?」
「どっちも正解だ。一の意味に百の言葉のある日本語だから」
「なるほど、そうであれば…そうだろう。次は眼帯でも着けるのか?」
「いやいや、右手が疼くとか、実は前世の記憶があって…『私はかつて世界を救った巫女の一人なの…』とか言うのが先では?」
「…なるほど…しまいには黒い手袋やら包帯をし、ソウルメイトと称した同族集めをするのか…」
次々とパンドラの心に何かが突き刺さる。
そしてスカートを握りしめ、歯を噛みしめながら、目を充血させ、涙を溜め始める。
其処まで行くと何だか此方の心も荒みそうなので、二人はごめんごめんとあやし始めるのだった…。
ファサッ…。
チョコ「…あっ…」
昂「さみぃだろ?それ着てろよ」
チョコ「でっ…でもっ…あり…むら君が…」
昂「俺の身体は頑丈だから大丈夫。ちなみにシベリア出身だから寒いのは得意なんさ」
チョコ「……ありがとう」ボソリ
昂「へっ?何か言った?」
チョコ「………///」
ダイダオス
CV菅生隆之
ノンモと呼ばれる文明社会の有機生命体。
何らかの装置で身体の一部(と言うよりは精神)を電子化し、インターネットなどに潜り込む事が出来る。
物腰が柔らかく、艦長としての経験者の立場を取るが、ユーモラスで冗談や軽口を発したり、つい乗ったりするなど、心豊かな宇宙人。
草食系の種族だが、実は女性の興味(地球の人型生物に対して)があったりする。
パンドラ
CV植田佳奈
黒と白のゴシック&ロリータな衣装を纏う少女。
その正体はかの時空の門を開く銀の鍵であり、666の数字を持つ箱となるアーティファクトの精霊。
知識は豊富だが殆ど偏り気味で、一般常識があまり無い。
短気の気があり、待つのが苦手。いじめると泣きそうになるが必死で抑えるなど、其方方面の男じゃなくともお持ち帰りしそうな少女。
容姿はAPP18位ある。




