第一章 エピローグ
『昨晩発生した爆破テロにより、死者は九千を超えていると思われます』
『怪奇!日本海に浮かぶ小さい太陽!!』
『人民解放軍!軍拡続行中との見込みあり!!』
『日本への先制攻撃か!!』
新聞の見た後、乱暴に丸めてゴミ箱に投げ入れる。
大手有力紙ですらゴシップと変わらない内容に落胆し、置いてある蓋付き紙コップに刺さったストローで中身のシェイクを飲みながら傷だらけの真之介はため息を漏らす。
ミュージアムの情報統制力には毎度感服していた。
クトゥグアの出現を巨大UFOに仕立て上げたり、攻撃したのをテロリストにしたり、一部反発があったものの、催眠術と記憶操作、書き換えを得意とするハイキュレーター達が真面目に"説得"したお陰で、了解を得てしまったのだ。
全く末恐ろしい組織である。
改めて実態を確認してガクブル状態の中、個室のドアが開かれた。
「…よっ、真之介」
「よっ、和彦」
それは和彦であった。
何故か長方形のレンズのメガネにひびが入っている所、何かがあったことだろう。
和彦は痛そうだな~と顔をしかめて答える。
「まあ…今回はちょっと油断してたからな…アツッッ」
「当分は此処で療養だな。学校には二三日休むと言っとく」
「ありがとう」
気の合う友人であったことに感謝しながら真之介は思う。
そんな中和彦は紙袋を机に置き、おもむろに語り出す。
「…実はお宝物を手に入れた」
紙袋の中に手を入れ、出してみる。
「ま…まさか…」
「そう……伝説のフィギュア…『魔法戦記マジカルドライバーズ』のヒロイン…リエラ・アッシュの等身大水着verだ!」
「うぉぉぉおおお!!」
「しかも原作エロゲー版のプレミアムエディションだぜ!限定百本生産だぜ!!」
「うひょう!!流石は俺の友だぜ!!」
「一緒にいかめし食いながらやろうぜ!!」
「ありがとう!心の友よ!!」
二人で肩を組みながら喜びを分かち合っていると。
「ギガドリルブレイク!!」
「「オーウマイガー!!」」
沙耶に飛び蹴りされてフィギュアごとぶち壊された。
その後、品位と浮気の延長上と言われ、数時間に及ぶ説教が始まったと言われる。
「…と言うことで、報告は以上です」
ニューヨークのビル街の高層ビル最上階にあるミュージアム北米本部には世界各国の支部から集まる支部局長達が円卓会議を行っていた。
席数はアーサー王の円卓の騎士になぞらえ、十三存在する。
暗い中、議論は続いていた。
「…やはり木下は生かすべきでなかった…奴に遺産管理をするべきでもな…」
「しかし、仕方がありませんな…我々円卓会議の目を欺き続けたのはある意味賞賛に値できますな…」
「だが、奴は欲に駆られ、こんな事態を起こした。事故処理とて矛盾が出来るのだぞ…」
「ですが、これでハッキリ出来ましたな?今後外部の委託行為は禁止することに…」
「貴様は其れだけだなキャメロット!だから頭が固いのだよ!!」
「私は只、遺産の秘匿に外部を使えば漏洩しかねないと言うまでです!!」
二人の支部局長の言い争いに耐えかねたのか、一番真ん中の男が立ち上がる。
その者は中南米の古代と思わせる黄金の覆面をかぶり、組み合わせを無視したダークスーツを纏う。
その瞬間、二人は蛇ににらまれた蛙のように黙り込み、脂汗を吹くように流す。
「…この件に言い争うならば他で願いたい…だが、あくまでも処理をするのは君達の部下であるハイキュレーター達だ…」
「しかしマスターキュレーター。我々は今後の方針と今回の事件での処罰を…」
「処罰?どういうことだ?」
覆面の男は一瞬殺気を放ち、一人に問いかける。
ビクリッと肩を震わせ、しどろもどろに答えていく。
「こここ…今回の事件は…二人のハイキュレーターがい……いながら甚大な被害を出しました…其れをお咎め無しと…すれば…」
「…どうなるのだ?仕方が無いとは言わんが、事が起こって犠牲が出るのはどうすることも出来ない。しかも先に管理していた側に攻撃すれば、我々が悪となる…それこそ本末転倒と言うところだ…」
「…っ。しかし…」
「私は処罰は許可していない…其れでも進めるのならば…滅ぼすぞ?」
「ヒッ!…も…申し訳ありません…」
よっぽど恐ろしい存在なのか、支部局長は座り込み、ガタガタと体を震わせる。
仕方がないと見た秘書は口を開き始める。
「其れでは今回はこれで閉議としましょう…。お忙しい中お出で頂き、ありがとう御座います」
「…其れは良いでしょう…何せ殆どは立体ホログラフィーですから」
一人がそう言うと、議論していた二人を除き、残りの十人は跡形もなく消えていった。
閉議して、支部局長の二人がそさくさと会議室から去っていく。
二人、秘書と覆面の男が残り、話し始める。
「…マスターシェピロ、今後はどうするべきで?」
「…ウォルター、今はまだ分からぬよ…」
ウォルターと呼ばれた秘書の問いかけにシェピロは自分でも分からないと答える。
「貴方ほどの方でも分からないとは…」
「寧ろ其れが良い…。未来が分かってしまうことは…変えてしまうこともあるのだ…」
「変えてしまう?」
「未来を変えれば…取り返しの付かない事態に変わる…それならば見えない方が…一番良いのだよ…」
重みのある言葉に、ウォルターは改めて考え直す。
「…其れであるならば…私は見えない方が幸せだと思えます」
「ふっ…ありがとう、ウォルター。やはり持つべきは旧来の友だな…」
その覆面に隠された素顔は…きっと笑顔であったろう。
「アダダダ!!其処は折れてんだコンチクショー!!」
「…アシクビオレマシター!!」
「手加減はしません」
「沙耶と同意見」
沙耶は和彦を、香奈多は真之介に十字固めをしていた。
そんな光景を見ていた立華はため息を吐いた。
「…で、何時まで続ける?」
「とりあえず後10分」
「其れ言ったの一時間前だよね…後沙耶ちゃんって結構ストロングね…」
「まあこんな事も出来ます」ガシッ!ゴギゴキッ!!
「アギャァァァア゛ア゛ア゛ア゛!!首が有らぬ方向に向きそうです!!」
段々首が回り、90度回転しかけていた。
「あっ!でも幼女のパンツが!アギャギャキャ!!鼻フック止めれーーーーー!!」
「…シネロリコン」
「ロリコンじゃねぇって!!ギャァァア゛ア゛ア゛!!」
「…ハァ…」
アホ二人にため息を付くしか無い委員長であった。
To be continue....
とあるカフェテリア…。
其処で瓜生と真之助が食事をしていた。
瓜生「…改めて、京都の事件はお疲れ様です」
真「どうも…。まあ、今回は77点って所だな」
瓜生「おやおや、意外と低評価ですね」
真「規模を考えたらそんなもんだ。最高評価の超巨大宇宙船はユーラシア大陸が持ち上がりかけたからな~」
瓜生「あれは驚きました…数センチとは言え浮いてしまいましたし…」
真「あの後ユーラシア全体…ヨーロッパまで地震にしたからな…あの時ほどミュージアムの隠蔽能力を発揮したことあるか?」
瓜生「…多分二桁以上ですね…マスターシェピロも『これは五本指に入るな…』としみじみ答えてたとか…」
真「マジか!?……ってそんな話してる場合じゃないな…」
瓜生「…ええ、本題に入りましょう」
………
……
…
瓜生「…あの後、我々が独自に調査をしました…勿論報告書には記載されていません」
瓜生「木下の屋敷を隈無く、石田氏の協力の下、魔導書並びに強力なアーティファクトの捜索をした所…」
真「あの微笑み紳士…そんな事してたのか…」
瓜生「まぁ、木下の内情を知るのも彼しか知りません。しかも彼から申し出てきましたので断ることは失礼でしたから…」
真「まあいいや、とりあえず続きを…」
瓜生「…はい、伊吹隊長の部隊と捜索をしていました所…歴史的な大事件や後世まで出しては行けない暴露本…その当時の大奥の赤裸々話等の書物は発見しました…後その当時の春画も…」
真「なるほど…最後のはいいとして…」
瓜生「…ええ、肝心の魔導書は…」
瓜生「発見しませんでした…」
真「なぬ?」
瓜生「アーティファクトの類も…ごっそり綺麗に無くなっていました…」
真「元から集めていないとか?」
瓜生「…それは有り得ません。知らない部屋は無いと断言した石田氏が隠せないほどの驚愕を浮かべていましたし…」
真「…つまり…誰かに"盗まれた"?」
瓜生「ですかね?…只魔導書の類…めくっただけでSANチェックする物を誰が?」
真「そりゃ、イルミナリティの連中やら魔術協会の魔術師共が喉から手が出るほど欲しがるだろうよ…」
瓜生「…確かに…ですがあの木下の屋敷…石田氏が警備を担当していた程の厳重な中をピンポイントに盗むとは…」
真「まあ、今となっては闇の底…無理だろ?」
瓜生「ええ、だから報告書に書かなかったんです」
真「…まあしゃあねぇな…」
瓜生「後一つ」
真「…まだ何か?」
瓜生「…ええ…」
瓜生「木下臓猿が所有していた寄生虫やウィルスも…行方不明なんです…」
To be continue....




