第十一話 救いのヒーロー登場 後編
「ハァァァァアアアア!!」
蒼い刃と影の蟷螂の鎌が互いに火花を散らし、殺陣の如く斬り合う。
「シァァァラァァァアアア!!」
真之介は左を手刀に変え、魔翁の身体を貫こうとするが。
「…甘い」
「グッ!?」
影から現れるはダンゴムシ。これが生きていればいかに堅い外皮であろうとも、気の衝撃で内部破壊を起こしていたが、相手は命無き影。
しかも密度が濃くなっているため、殆ど実体に殴っている様なもの。
九頭竜の魔法防御貫通機能をこんな形で対応する実力に、真之介は驚きと賞賛を送り出す。
「流石は魔術師、魔術殺しには対策してあるんだな!」
「主こそ、我が急所を的確に付くかと言えば、普通の場所ですら死に至る技とは!まさしく九頭竜は生物兵器に取って代わる!」
「嬉しくねぇぜ!」
そんなセリフを吐き捨てながら、リボルバー「カラドボルグ」をホルスターから抜き、二発撃ち出した。
「ムウッ!?」
臓猿は瞬時に防御を止め、影の中をスルリと入って行く。
二つの.454 Casull弾頭は見えぬほどのスピードで壁を木っ端微塵にし、この天守閣に巨大な穴を造り出した。
もし、防御をしていればたとえダンゴムシの強靭な外皮でも容易く貫き通し、臓猿の身体はミンチと化していた。
「カッカッカッ…まさか"重力魔導弾"を使う者が居たとは…威力は不明、エンパイヤステートビルを縦に貫いたとされるが…未だ噂程度。魔力量で威力が左右されるくせに、反動は扱い方を見誤れば軍人でも良くて肉離れ以上だそうだが…」
「それなりに鍛えてるんでね」
「其れにしても片腕で撃つとは。反動を逃がす技が術があるのならば聞いてみたい」
「其奴は企業秘密だ」
カラドボルグをホルスターにしまい、刀を振って再度突撃をする。
「近付かせるか」
臓猿は影から無数のアブを弾丸の如く射出。
それに対し、柄を手のひらでなく、指で掴み、スピンコック(レバーアクション銃のガンプレイの一つ)の要領で刀を回転させ、徐々に速度を上げ、一枚の盾のように変える。
アブは真っ直ぐ飛び、貫こうとするが、刀の峰に叩きつけられ、はじき落とされる。
すべて断ち切られると、臓猿は続いてムカデと巨大な蛾を繰り出し、地面に潜らせる。
「あい?」
襲って来ないことに疑問を感じていると、足に何か引きずり込まれる感じを覚えた。
恐る恐る見てみると、ロープの様にムカデが絡みつき、影の中に引きずり込もうとしていた。
「んなっ!?」
それに驚き、刀で斬ろうとするが、何か光る粉が目に入り、強烈な痛みを発する。
「グアッ!?」
涙が出ながらも左腕に気を集中させ、ムカデに向け、掌底を叩き込んでから、生体電気による左竜雷掌を放った。
叫びを上げず、体中から灰色の煙を発し、溶けて消え去る。
そして足の自由を奪っていたムカデを倒した瞬間、刀を斜め上に振るい、鱗粉を撒いていた蛾を斬り落とした。
「ハァ…、面倒くせぇー事しやがって…」
「降参かの?」
「するか!」
そう言ってサイクロプスを素早く取り、撃ち放った。
「ふむっ!!」
炸裂徹甲弾を難なく避け、巨大なクワガタの鋏を現し、噛みつこうとする。
それを刀の突きによる右竜徹陣で右側を破壊、そのまま左側も叩き斬る。
「ふっほほ…コイツはどうじゃ!!」
鋏が消滅する中、更に出すのは蜘蛛の糸。
絡みつこうとする瞬間、真之介は右手に気を集中させ、熱に変えていき、刀の刃を摂氏二千度に帯びさせ、糸をバラバラに斬っていく。
切断面から燃え散らし、粘着質の糸は灰になって消え去っていく。
これが九頭竜の技の一つ「右竜焦手」で、本来掌底での攻撃だが、刀に回路の様な物を通し、気を送れば徹陣同様、併用して使える。
熱を帯びた刀身を振るい、刀を左手に出現した鞘にしまう。
其れを見た臓猿は興味深く其れを観察し、笑いながら答え始める。
「カッカッカッ…蒼き刃の刀…最強金属の一つ、"アダマンタイト"を使用し…尚且つ魔の力を感じるそれは……」
「…魔剣"亜魔刀"。天と地を分かち、かの滅ぼしの七本の一振りと言われている…。まさか主がその使い手とは…」
「結構使い勝手の良い刀でね、とある遺跡で刺さってたのを抜いた」
「カッカッカッ、妖刀村正やレヴァンテイン、ラグナロク、ロンギヌス、十束剣、閻魔刀。その一つでも都市を滅ぼし、其れを求めて巨大な戦を仕掛けたほど!まさか現代でお目にかかれるとは…主は飽きさせぬ!!」
「ハァ…ありがとさん」
やや呆れ気味に答える。
臓猿はすこぶる楽しげに笑い、魔導書の一節を読み上げてから宣言を一つする。
「それでは…行くぞ。儂は意外と頑丈なのでな!!」
そう言い、突如体中を変化させ始めた。
「フグッ…ヌォォォォ…ア゛ア゛ア゛ア゛!!」
下半身は蟷螂の腹や足、背中から鎌、や鉤爪、刃を生やした腕、頭はギョロギョロと巨大な目玉が付けられていた。
其れだけでは飽きたらず、幾つもの機関銃やRPG-7を元の腕に持ち、構える。
その姿は正しく"魔翁"であった。
呆れかえった表情で一言ぼやく。
「…おいおい、そりゃ…あっ!」
一瞬気を緩めた時、何も無い場所から鉤爪の付いた足が飛び出し、真之介の脇腹を突いて、ぶっ飛ばす。
風切り音のした後に、壁を蜘蛛の巣上にヒビを入れて突っ込み、ガラガラと破片を落とさせながら、立ち上がろうとする。
が、足がふらつき、立とうにも立つこともままならない状態であった。
「…ガッ…ハッ。無動作攻撃かよ…冗談キツいぜ」
文句も言いたい気持ちであったが、RPG-7の発射が成されれば逃げずにはいられない。
思考を変え、無理矢理身体を動かし、何とか爆発から逃れた。
「クソっ…たれ!!」
やり返すと言わんばかりに、イシュタルとサイクロプスに持ち替え、在らんばかりの弾を撃ち放った。
強装弾を込められた二つの銃器から発射された弾丸は、魔翁の身体中を縦横無尽に貫き、破壊していく。
其れだけ撃たれ、身じろぎする。
撃たれ、全身に穴を作り出すと其処から血を撒き散らす。
「ヌグゥ!?ァァァア゛ア゛ア゛ア゛!!」
真っ赤な血を流しながら背中の鎌付きの腕を真っ直ぐ伸ばし、真之介の腹部を刺し貫こうとする。
「グッ、オンドリャァァアアア!!」
真之介は左足の甲に鎌を刺させ、飛び上がってから右足で腕を挟み、その巨体を投げ飛ばした。
「ヌッ!?グァァァア゛ア゛ア゛ア゛!!」
床にメシッメシッと音を立てながら叩き伏せられる。
真之介は鎌を引き抜き、自身の治癒力で止血しながら、亜魔刀を居合いに構え、引き抜いて空を斬った。
次の瞬間、魔翁の皮膚を幾重にも切り裂いていく。
「ア゛ギャァァァア゛ア゛ア゛!!」
極度の痛覚で天守閣全体を響き渡る咆哮に目を眩ませ、真之介がたじろいだ瞬間、幾つもの腕が伸びて、しなり、鞭のように叩き付けた。
「ガハッ!!」
左腕をへし折り、皮膚を青く染め、内臓に甚大なダメージを与える。
その衝撃のせいか、食道辺りの血管が裂け、口から唾液と吐瀉物、そして血液の混合液が吐き出され、床をこするように弾き飛ばされる。
真之介自体は予測出来ていた。
しかし、鎌で刺された足の甲からの若干の痺れを感じた一瞬でこのような事態になったのだ。
「…ッ…毒でも塗ってやがったか?」
生まれつき状態異常の効かない体をしていたが、まだ未対応の毒の類があるらしく、少しだけだが、神経を電気が発するような感覚がある。
「…ハァ…ハァ…フゥ~…」
独自の呼吸法で息を整え、立ち上がり、自分の状態を確認する。
(…腕は軽くお釈迦、腹はすこぶる不味いかな~)
口元から血がこぼれる。
仕方が無く、右手で乱暴にぬぐい取り、亜魔刀を手に取る。
魔翁はそれに応じるように体中から血を吹き出すが、無理矢理動かし、前を見据えた。
「クックック…主との戦いも悪くは無いが…」
「そろそろ御開きと行きましょうぜ…」
「だが分かっとるかな?儂が死のうが生きようが魔王が召喚されるのじゃぞ?」
魔翁は重大な事を口にする。
そう、最早儀式は終了し、後は肉体を得て復活するのみなのだ。
笑いながら答えると真之介は人差し指を25度の角度で振り、舌を鳴らした。
「此処までは完璧だ。素晴らしい計画だったよ…異界生物にイクシオンとやらを使ってパラサイトじみた化け物を作り上げた…だがな…」
「うん?」
真之介は亜魔刀を床に突き刺すとそのまま、内ポケットに右手を突っ込み、七枚の人皮紙を取り出し、見せびらかした。
「誰が本物渡すかな?」
『偽物を?』
『ああ、万が一に作っとこう。コピーじゃなく、他の奴を召喚する物』
それは二日前、バロックレポートの七枚を手に入れて直ぐの話。
二人は万が一に備えて信長では無いものを召喚させて頓挫させる事を捻っていた。
『ですが、気付かれませんか?』
『それはそれで時間稼ぎが出来るから良いだろ?第一その場でバレなきゃ成功したも同然。奴らもまさか偽物渡すとは思わないし』
『……少し賭けに近いですが…』
『…ああ。覚悟は出来てる』
そうして書き上げたのは、本物を十分熟知して一字一句、シワやシミの数まで覚えている人間でも騙せそうな素晴らしい出来の贋作であった。
「なん…じゃと!?」
「あんたが詠唱した呪文、ならびに描かれた魔法陣。これらを召喚するのは魔王織田信長じゃない」
「"生ける炎"…燃え盛る炎の邪神…俺他の世界じゃ【クトゥグア】って呼ばれた旧支配者様だよ」
夜の闇に一つの光が射し導す。
それは段々大きくなっていき、熱を帯び始めていく。
雲の水蒸気が水素と酸素に分解され、昼の陽気を作り上げ、日の光のように照らし出す。
それは小さな太陽であった。
次第に姿形を現し、それは本当の太陽のように噴火や炎の波を荒ぶる様に暴れさせる。
近年の異常気象の原因であったシベリア高気圧はクトゥグアの熱気により温暖化され、一桁台であった気温を一挙に上げさせ、七月並みの熱帯夜を創り出したのだ。
「まさか…邪神を…」
「魔王よりかはまだ道徳的さ。ウチには寒がりが居るから暖房要らずで経費節約出来るから」
「フッハハハハ!!正気を疑うのう!やはり主は儂と同じ、狂気の淵で生きる"化け物"じゃのう!!」
何かを悟り、狂ったように笑い出す魔翁に対し、真之介は小さい小瓶のキャップを外し、中身を飲み干してから否定的に答えた。
「違うな…」
「なんじゃと?」
亜魔刀を床から引き抜き、切っ先を魔翁に向けながら、続けて答えあげる。
「まず一つ。これでもSAN値は80位あるし、クトゥルフ神話技能も結構豊富。まして気の狂った奴でも狂気が好きでもない」
最後、自分の思いを言い放った。
「そして、何よりも……俺は"人間だ"!!」
駆け抜けるのは一瞬。消え去った様に見えた後、魔翁の身体から血液の流れが変わり、漏れ出すように感じ始める。
刹那の一閃は魔翁の胴体を斜めに斬り、あまりにも速かったせいか、痛みを感じず、己の体が段々とずれていく感覚だけであった。
「…Rest in peace.(安らかに眠れよ…)」
真之介の右腕は、一瞬歪で禍々しい金属の腕に変わったかに見えたが、霞むように消え去り、亜魔刀を沙耶にしまう頃には元の腕に戻っていた。
「…人生…五十年。下天のうちに…比ぶれば…夢…幻のごとく…なり…かっ!」
魔翁は己の異常を感じ取ると、目から一筋の涙を流し、心残り無いように消え去ったのだった…。
終わった。
その事を確認し、真之介は幾重にも施された結界を壊し、未だ眠り続けている香奈多の側によった。
「…こう言うときは"キス"をしなきゃ駄目なのか?」
段々考えていく内に自身の顔が真っ赤になり、あわあわと慌ててから受けた傷の痛みで悶絶する。
傍目から見たら只の馬鹿だ。
「イッッ…」
腹を押さえ、時間を無駄にしたくないので意を決して彼女の前に座り、己の唇を香奈多の唇に合わせようとゆっくり近づけて。
「…狸寝入りは感心しないな~」
「…ちぇっ、バレたか」
昏睡していない事に気が付く。
「いつから?」
「…お腹痛がった時から」
気が付いたのがキス前だったらしく、本人はキスがしたい為に狸寝入りを決め込んでいた。
が、気が付かれて、若干不満げに両頬を膨らませ、ポカポカとグルグルパンチを放つ結果となった。
「アダダダダ!!傷口開く!折れたところに響くーーーーー!!」
ある一定痛がらせた後、真之介の脇腹辺りを腕を回し、抱きしめる。
「……でもよかった…また会えたよ…しん君…」
「…あっ…ああ、"カナちゃん"」
「……えっ?」
突然呼び方が変わったことに気が付き、驚いたように真之介を見る。
「あっ。いやぁ~…だってさ。キーちゃんは君にとって嫌な物だから…だったら今度から…君の名前を言うよ」
「……////」
恥ずかしい事を簡単に言いのけ、更にカッコイイ彼が目の前に居れば、最早射止められるのも当たり前であろう。
しかもそれが本心と来た。
最近壁殴り代行の人たち来てないな~、やっぱりS〇Oの方に行ってるのだろうか…。
「…やっぱり…しん君だね…」
「ええ、そうですが?」
「…普通の人なら恥ずかしい過ぎて言えないよ。そんな台詞」
「………そう?だったら100年365日24時間ずっと君にこの甘い言葉言うかい?自信ありますけど」
「お願い止めて!私が死んじゃう!!私の方が恥ずかし過ぎて死んじゃうよ!!」
「何なら今度昔書いたポエムでもBGM合わせて読んであげるさ~」
「寧ろ恥ずかしがってよ!君が恥ずかしくないなんて絶対おかしいよ!!」
「恥ずかしい?ハッハッハッ~。何を?」
満面の笑顔で答えた。
そんなピロートークの中、冷ややかな目でため息をつく沙耶。
これでは埒があかないので、手頃な石(というより岩)を両手に持ち、真之介の頭にめがけて投げつけたのだ。
「もう~かわいい(ゴスッメキャリ!)マルチーズ!!」
グッ、ナイッ…と言わんばかりの命中率に何故か無言のガッツポーズをする。
沙耶はこれから両親二人の馬鹿馬鹿しいバカップル部分を成熟した大人の夫婦に変えるべく、奮闘する事を決めた。
「あらあら~大丈夫?」
「…結構だいじょばない…色々と不味い」
頭から吹く出血に対し切実に答えると仕方がないと見た沙耶はスカートのポケットから止血材、大型のガーゼ、包帯を手にし、器用に巻いていく。
「おう、そんな事出来るんだ…」
「…いっつもお母さんが遺跡発掘で怪我するから慣れた」
「へぇ…あい?」
ふと、幾つか疑問が出来る。
「…沙耶?」
「何、お父さん?」
「…なんかいつもの喋り方じゃないし…お父たんって言ってないし…お母さんが遺跡発掘?」
「はぁ~…」
やれやれと言わんばかりに肩をすくめて呆れながら一つずつ疑問に答えてゆく。
「…二つ程、もうぶりっ子ぶるのは辞めるから。後お母さんは最近遺跡ブッ壊す人で有名だよ、戦闘機で」
「…まさか、あのデストロイガールという…」
「…だと思うよ」頬つねり
「ヒタイヒタイよ~!!」
ブルドッグのように長く引き延ばされた両頬は縦やら横やら縦横無尽にいじくり回され、終わった頃には餌を貯め込むハムスターの様に真っ赤っかになっていた。
「たった六歳ですが…悟りを開いて開いてどれくらいと言うレベルを超え…今に至ります」
「…際ですか…」
「…ですから、改めてご挨拶します。私は龍宮沙耶です…母諸共不束者ですが…これからも宜しくお願いします」
礼儀正しく正座で頭を下げる所を見るに、行き届いているのだと感じられる。
「そういえば、会ったときは?」
「あれは、お父さんに限ってそうは無さそうですが…もし捨てられそうな雰囲気があれば、天真爛漫と無邪気さで回避しようと…」
「なにそれこわい」
「…騙していた事は謝ります…しかし…」
「…まあ、女を騙すより騙された方が男の貫禄が上がるもんだ…と思いたい」
「其処は自身を持てばいいと」
軽く異次元である二人。
香奈多は暇なのか、沙耶に抱きつき頬摺りをし始めた。
「ちょっと!お母さん!!」
「良いじゃない~まだちっちゃい愛娘を頬摺り出来るのは今一瞬だけだから~」
何だか年の離れた妹…というより香奈多の方が妹だとしっくりくる。
そんな失礼な考えに行き着くと、二人を見ながら何か嫌な感じを覚えた。
それが直ぐに分かったのだった。
「…!?」
突然下から込み上げる地響きに、三人は驚いた。
「なっ…何!今の!?」
「…まさかな…」
真之介は恐る恐るスマホを取り出し、Googleアースで現在地情報を探る。
途端、顔を真っ青にして、ヤバいと思いつつ、静かに口を開いた。
「…人民解放軍海上基地…しかも対艦ミサイル搭載してやがる」
「…つまり」
あくまでも冷静に問いかける沙耶だが、内心はとても不味いと感じていた。
「此処を中国本土に入る前に撃沈させるつもりだ!!」
「即座に撤退です」
「逃げなきゃ逃げなきゃ!!」
「と言う訳でみんな走れーーーーー!!」
三人は階段を駆け下り、破壊された廊下をジャンプして通り、出口と思われる場所まで有らん限りの速度で突っ走った。
時に小柄な沙耶が真之介を飛び箱の踏切板のように腕の力で向こう岸に渡らせ、足場になるものを作り出して渡っていく。
しみじみと娘の身体能力の凄さが分かってくる。
「しかし、沙耶は運動神経いいな。俺も五歳の時はサッカーボールで逆立ち乗りしてたが…」
「まあ、あの子は剛の拳よりストロングな柔の拳の申し子だと思う…」
「将来が楽しみだ」
二人してしみじみと語る。
(…失礼な)
何だかムカムカする沙耶は家に帰ったらどうお仕置きしようか考える事にした。
「やっと着いた!」
「お父さん、これからどうしますか?パラシュートも無ければ彼方さんに助けを求めることも出来そうにありません」
沙耶にこれからどうするべきか問いかけられ、悩む。
「う~ん、この高度だと凍傷になるかもしれんが…まあクトゥグアで暖まってるから大丈夫かな?」
「飛び降りるんですか?」
「まあ大丈夫、瓜生と風魔がキャッチしてくれるさ」
「…あの人たちなら信じましょう」
「うわーそのまま落ちない事を祈りたい」
次々と崩れゆく城からダイブする事に躊躇しながらも、遅かれ早かれ変わりない為、三人は意を決し、何も無い空に足を踏み。
「I…」
「Can…」
「Fly!!」
手を握りしめて落ちていく。
崩れ去る天守閣の魔法陣が淡く光り、何かが出ようと懸命に動いていた。
それに連動し、巨人の死体や容器の信長クローン達を飲み込み、喰らうように出てきたのは。
歪で不気味な、南蛮甲冑の魔王であった。
だが不完全なのか、一つ一つ足で進んでいく度に皮膚が崩れ、再生を繰り返す。
そうしていく内にかろうじて保っていた肉体は水を吸い上げた麩の様にぶっくりと膨れていき、スプラッタ映画の化け物と化していく。
「…ワレ…ワレ…ウツツ…デ…アルカ…」
それは段々と体積を上げ、重さに耐えられなくなった床を突き破って、下に落ちていく。
遂に天守閣から石垣を突き破ったのだった。
「…何なの、あれ…」
「…嘘…」
「…最後の最後に…」
突き破って出て来た魔王に驚愕しながらも滅ぼす為に真之介はホルスターからカラドボルグを抜き出した。
「…やっぱり意志に反して召喚するのは難しかったか…」
クトゥグアがいなくなった事に気が付くと、フロントサイトとリアサイトを合わせるように構え、狙いを定める。
「一撃必中…さらばだぜ…大うつけ!!」
カラドボルグのハンマーを引くと、銃口から黒い光を吸い取り、溜める。
そして真之介はニヤリと口元を吊り上げ、有らん限りの叫び声を上げた。
「Jack pot!!」
トリガーを引き、黒い弾丸は黒い弾道を描き、魔王の身体を貫いた。
「■■■■■■■!!」
声にならない叫びを上げ、重力魔導弾の殲滅力によって、滅びていった。
「…終わりだ、これで」
重力に導かれるまま、三人は落ち続けていると、前からドラゴンのアイディールの腕に捕まり、自由落下は終わりを迎えたのだった。
と言う訳で京都編が終わり、主人公の事が少し分かってきた所だと思います。
此処は所謂プロローグであり、物語はまだ始まったばかりです。
ストーリーに関しての質問などは感想にてお願いします。
作者は人気になるつもりは有りませんが、やっぱり多い方が嬉しく思います。
それでは次回も宜しく!




