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調理部の恋愛事情  作者: 春隣 豆吉
Recipe-2:木下 聡子の贅沢
6/33

-2.

 二人で帰るときは、雄太はいつも私を家まで送ってくれる。

「この間、実習でドーナツを作ったの」

「そうか」

「私が作ったのは、おからとバナナのドーナツなんだよ。図書室で借りた本のレシピで作ってみたんだ」

「もう、ドーナツないのか?」珍しく雄太が甘いものに興味を示した。

「え?ごめん。家族で食べちゃった」

「そっか。」雄太がちょっとがっかりしている。

 もしかして、食べたかったのかな。でも雄太って甘いものが苦手だったはず・・・まさか、ね。


「ね、雄太。もしかして食べたかった?」

 私が聞くと、雄太はちょっと黙った後、口を開いた。

「俺、甘いものは苦手だけど・・・・」

「うん、知ってる」

「聡子が作ったお菓子は、俺、食べられる。」

 そういうと、雄太は私から顔をそむけた。でも、その横顔は真っ赤になっている。

「え。だって、雄太。前に俺はお菓子が苦手だから、食べても煎餅くらいって言ってたじゃない。」

「それは、付き合うまえにクラスでしゃべってたときだろ?俺、付き合い始めてから初めてのバレンタインのとき、これで聡子からチョコもらえるって思ってたのにハート型の煎餅もらって・・・・嬉しかったけど、やっぱり聡子からのチョコがほしいなって思ってた」

 私たち、今年で付き合って5年目だ。よもや、雄太がそんなこと考えてたなんて知らなかった。

「・・・・どうして、言ってくれなかったの?」

「あのとき、聡子が“これなら食べられるよね”って一生懸命選んでくれたものを拒否なんかできないし・・・煎餅、うまかったし」

 なるほど。味は気に入ってたから、言い出せなかったのか。

 でも、どうして4年分黙っていたことを今になって言い出したんだろう。

 なんだか、笑いがこみあげてきてしまって、思わず噴出してしまう。

「笑うなよ。」雄太がたちまち不機嫌になる。

「ご、ごめん。・・・・ぷぷっ」だめだ、笑いが出てしまう。

「雄太・・・なんか、かわいい」

「なんだよ、それ」


 私は、そっと雄太の手を握った。

「わ、なんだ?」

「いいじゃない。手くらいつないだって。手をつなぎたい気分なの」

 私がそういうと、雄太はふっと笑って、私の手を握りかえしてきた。

 それだけで、私は気持ちが満たされる。映画とか遊園地に行かなくても、近所の公園だって特別な場所になる。

 とはいえ、やっぱり時々は・・・違う場所に出かけたいよなあ・・・。

 今なら、言えるかな。

「ねえ、雄太。今度、映画でも行かない?」

「映画?・・・・今特に見たいもん、ないけど。」

「あっそ。・・・・じゃあ、遊園地はどう?」

「聡子、絶叫系苦手だろ?楽しいか?」

「そうだけど、絶叫系だけが遊園地じゃないもん。」

「俺は人ごみがやだ」

 まだ、道は遠いみたいだ。でも、今はこれで満足。


読了ありがとうございました。

誤字脱字、言葉使いの間違いなどがありましたら、お知らせください。

ちょっと感想でも書いちゃおうかなと思ったら、ぜひ書いていただけるとうれしいです!!


前作があんまり甘くなかったので

私なりに甘い話を書いてみました。

もー、二人で勝手にやってくれといいたくなるような話に

なっているでしょうか(笑)。

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