-2.
二人で帰るときは、雄太はいつも私を家まで送ってくれる。
「この間、実習でドーナツを作ったの」
「そうか」
「私が作ったのは、おからとバナナのドーナツなんだよ。図書室で借りた本のレシピで作ってみたんだ」
「もう、ドーナツないのか?」珍しく雄太が甘いものに興味を示した。
「え?ごめん。家族で食べちゃった」
「そっか。」雄太がちょっとがっかりしている。
もしかして、食べたかったのかな。でも雄太って甘いものが苦手だったはず・・・まさか、ね。
「ね、雄太。もしかして食べたかった?」
私が聞くと、雄太はちょっと黙った後、口を開いた。
「俺、甘いものは苦手だけど・・・・」
「うん、知ってる」
「聡子が作ったお菓子は、俺、食べられる。」
そういうと、雄太は私から顔をそむけた。でも、その横顔は真っ赤になっている。
「え。だって、雄太。前に俺はお菓子が苦手だから、食べても煎餅くらいって言ってたじゃない。」
「それは、付き合うまえにクラスでしゃべってたときだろ?俺、付き合い始めてから初めてのバレンタインのとき、これで聡子からチョコもらえるって思ってたのにハート型の煎餅もらって・・・・嬉しかったけど、やっぱり聡子からのチョコがほしいなって思ってた」
私たち、今年で付き合って5年目だ。よもや、雄太がそんなこと考えてたなんて知らなかった。
「・・・・どうして、言ってくれなかったの?」
「あのとき、聡子が“これなら食べられるよね”って一生懸命選んでくれたものを拒否なんかできないし・・・煎餅、うまかったし」
なるほど。味は気に入ってたから、言い出せなかったのか。
でも、どうして4年分黙っていたことを今になって言い出したんだろう。
なんだか、笑いがこみあげてきてしまって、思わず噴出してしまう。
「笑うなよ。」雄太がたちまち不機嫌になる。
「ご、ごめん。・・・・ぷぷっ」だめだ、笑いが出てしまう。
「雄太・・・なんか、かわいい」
「なんだよ、それ」
私は、そっと雄太の手を握った。
「わ、なんだ?」
「いいじゃない。手くらいつないだって。手をつなぎたい気分なの」
私がそういうと、雄太はふっと笑って、私の手を握りかえしてきた。
それだけで、私は気持ちが満たされる。映画とか遊園地に行かなくても、近所の公園だって特別な場所になる。
とはいえ、やっぱり時々は・・・違う場所に出かけたいよなあ・・・。
今なら、言えるかな。
「ねえ、雄太。今度、映画でも行かない?」
「映画?・・・・今特に見たいもん、ないけど。」
「あっそ。・・・・じゃあ、遊園地はどう?」
「聡子、絶叫系苦手だろ?楽しいか?」
「そうだけど、絶叫系だけが遊園地じゃないもん。」
「俺は人ごみがやだ」
まだ、道は遠いみたいだ。でも、今はこれで満足。
読了ありがとうございました。
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前作があんまり甘くなかったので
私なりに甘い話を書いてみました。
もー、二人で勝手にやってくれといいたくなるような話に
なっているでしょうか(笑)。