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調理部の恋愛事情  作者: 春隣 豆吉
Recipe-2:木下 聡子の贅沢
5/33

-1.

 最近、同じ調理部で副部長をしている川田 唯ちゃんに内藤くんという2年生の彼氏(?)ができた。

 バスケ部で、身長180センチはあるだろう大柄な男の子だ。

 唯ちゃん本人は「彼氏じゃない!!」と言い張っているけど、私を含めた調理部員は「唯ちゃんはともかく、内藤くんは彼氏のつもりなんじゃないか」と見解が一致している。

 図書委員会でも内藤くんのことは「唯ちゃんの彼氏みたいなもの」として認識されてるみたいで、この間の合同ミーティングが終わったあとに3年生だけでお茶飲みに行ったんだけど、涼乃ちゃんやめぐちゃんから「唯ちゃん、内緒にしてたなんて~」などとからかわれていた。


 今日は調理部の実習日で、本日のメニューは「ドーナツ」。各自工夫をこらしたドーナツレシピを探してきたらしく、みんなでそれぞれ違うものをつくってみようということになった。調理部は人数が10人と少ないから、各自で作業をするということも可能なのも嬉しい。 料理初心者って子もいるし(何しろ私がそうでした)、そういう子は先輩たちと組になって一から教えてもらうし、周りもフォローする。

 そして3年間続けると皆、なんとか一通りできるようになるのだ。

 ドーナツは揚げたてが美味しいので、みんなでそれぞれ試食をする。中には誰かにあげるのだろう、カラフルなラッピングペーパーや箱を用意している子もいる。

「唯ちゃんは内藤くんにあげないの?」

 唯ちゃんは私を見ると、やれやれという顔をした。

「あげなくちゃいけない理由がないわよ。聡ちゃんこそ、あげないの?」

 唯ちゃんは、以前私と彼氏が一緒に歩いているときにばったり会ったことがある。

「今日は会う予定がないもの。こういうとき同じ学校だといいよねえ、唯ちゃん」

「・・・だから、内藤くんは彼氏じゃなくて友達。まったく、涼乃やめぐちゃんだけじゃなくて聡ちゃんもか~・・・・まあ、作ったはいいけど持ち帰るまでに冷めちゃうしね。部長、みんなのドーナツを1個ずつバスケ部に差し入れしません?」

「唯ちゃん、一人で行くのが嫌なら正直にいいなよ。付き合ってあげるからさ」

 唯ちゃんは「そういうわけじゃないって。・・・・どうせ持ち帰るし・・・・そうね、帰り時間が一緒になったらあげよう」と一人でぶつぶつ言っていた。

 やっぱり、同じ学校に彼氏がいるっていいよなあ・・・。



「悪い。遅くなった」

 私が駅の柱にもたれて本を読んでいると頭の上から声がした。

「いいよ、そんなに待ってない」

「そうか、よかった。」私の返答に、ホッとしたように笑ったのは丸山まるやま 雄太ゆうた。中学時代から付き合ってる彼氏だ。

 雄太は専心館高校の3年生。照れ屋だけどまじめで優しい彼氏。双方の親も私たちが付き合ってるのは知っていて、デートに行くのも気が楽だ。

  中2から付き合い始めた私たちは、デートというと近所の公園で散歩。疲れるとベンチで持参したペットボトル。夏になると河川敷の花火大会や近所の神社の縁日。

 今日みたいに、お互いの帰りの時間があうときはメールで待ち合わせをして一緒に帰る。

 今年は、お互い受験生だからと休みにするデートといえば図書館で勉強だ。

 調理部やクラスとかで彼氏がのいる子が「映画行った」とか「遊園地行った」とか話しているのを聞いてると、自分の普段のデートと比べて、いかにも「デート」な感じがいいなあって思ってしまう。

 雄太は浮気しないし、私のことをちゃんと思ってくれてるのわかってるのに・・・・どうしていろいろ求めちゃうのかな。


読了ありがとうございました。

誤字脱字、言葉使いの間違いなどがありましたら、お知らせください。

ちょっと感想でも書いちゃおうかなと思ったら、ぜひ書いていただけるとうれしいです!!


新キャラが登場です。


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