4. 作ってもらった彼弁当。
最近、ようやく裕介くんと呼ぶことに慣れてきたある日のこと。
『唯さん。俺がお弁当つくるからピクニックに行こう』
裕介くんからのメールに、思わず二度見をしてしまった。確か、得意料理はカレーだったよね・・・私は思わず勉強中なのに悪いと思いつつ、電話をかけてしまった。
「唯さん。どうしたの?」
「勉強の邪魔してしまってごめんね。今、話せる?」
「大丈夫。もしかして、メール見た?」
「うん。悪いけど、ちょっと驚いた」
「部活引退したからさ、俺が食事当番になることが増えたんだよ。毎日カレーばっかりだと辛いからさ、兄ちゃんたちに料理も教わってるんだ。」
「そういえば、一番上のお兄さんが料理男子なんだよね」
「そうそう。一番上の兄ちゃんは孝介って言うんだけど、“お前、カレーしか作れないって微妙だぞ?勉強の合間に料理も覚えてみたらどうだ。”って言い出して、勉強のほかに料理も教えてくれるんだ。だから唯さん。俺の特訓の成果を楽しみにしていてね」
電話越しに裕介くんの張り切りようが伝わってきた。
電話をした週末、内藤くんは待ち合わせ場所に大きめのトートバッグを持参してきた。行き先は電車で1時間ほどの場所にある自然公園。植物園やハーブ園が隣接していて、遠足や写生大会などの定番の場所でもある。
公園に到着すると、私たちみたいにお弁当持参で来ている人が結構いてみんなレジャーシートを敷いてのんびりしている。
私たちも適当な場所を見つけて、レジャーシートを敷いた。
裕介くんが「見てよ、俺の自信作!!」と裕介くんが楽しそうに次々とタッパーを開ける。
そこには彩りもよく並んだおかずと、大き目のおにぎりが。
「わあ!美味しそう!」
鶏のから揚げ、卵焼き、春巻き、にんじんのグラッセ、豆サラダに丸ごとトマト。青菜の胡麻和え・・・すごいなあ。もしかして裕介くんって私よりマメかもしれない。
「裕介くん、すごいねえ」
「ここのところ家の夕飯は弁当に入れるおかずの試食だったよ。兄ちゃんたちもつきあってくれたんだ。あ、おにぎりはシャケと焼きタラコだよ。」
私はおにぎりを手に取った。私が握るより一回りくらい大きい・・・やっぱり手が大きいとでかくなるよね。一口だべると、塩加減もちょうどいいしシャケも美味しい。
「裕介くん、おにぎり美味しい!」
「そう?よかった~。おかずも食べてみてよ」
私はおかずにも箸を伸ばした。・・・・どのおかずも美味しい。裕介くん、お兄さんから教わったって言ってたよね。お兄さん、いったい何者・・・。泰斗にいたら絶対調理部にスカウトしたな。
「おかずも美味しいね。すごいよ裕介くん!わたしよりも上手だよ。」
「よかったー。孝介兄ちゃんに教わった甲斐があったよ」
「お兄さんすごいねー、泰斗にいたら、絶対調理部にスカウトしたよ」と私が言ったところ、裕介くんが固まった。
「裕介くん?」
「だめ。絶対だめだよ、唯さん」
「え、なんでよ」
「唯さんは、うちの兄ちゃんたちを知らないから・・・・」そう言って、裕介くんはお兄さんたちの話をしてくれた。
「・・・というわけで、駿介兄ちゃんはともかく、孝介のほうは危険なの!!」
話半分に聞いたとしても、裕介くんのお兄さん・・・特に孝介さんは、なんかすごい人なんだなというのはよくわかった・・・一度見てみたいってちょっと思ってしまった・・・・。
読了ありがとうございました。
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とりあえずここで<完結済>とさせていただきます。
読んでいただいた皆様、ありがとうございました。
楽しんでいただけたなら、幸いです。
番外編、結構楽しく書くことができました。
アイデアを教えてくれた皆様、ありがとうございました。
全部にお応えすることが出来ずに申し訳ありません。
これからは、「調理部」は不定期更新となる予定です。
しばらくは新作のストック作りに励みます。




