4.ふれる気持ち、つながる手
二人でラーメンを食べてから3ヶ月がたとうとしていた。
俺は小野のことを伊織と同じくらい大切な友達だと思っていたけど、知らなかったことも多くて、毎日が発見の連続だ。
例えば、どうみても長女タイプの小野だけど、実は末っ子で姉と兄がいるとか。しかも小野は上二人と歳が離れていて(お姉さんとは14歳、お兄さんとは12歳違いらしい)、兄弟でTV番組やおかずの大小や個数で争ったこともないらしく、俺と弟二人の間で繰り広げられた小さい頃の話を面白がっていた。
お姉さんは結婚して地元に住んでいて、心配のあまり一人暮らしをするのを最後まで反対していた。
お兄さんは独身で小野が大学に合格したときに一人暮らしをすることになったのを聞くと、自分の家の近くに住むようにと部屋選びに付き合ってくれたそうだ。
なんか、俺がもし将来小野をくださいなんて言った日には最大の壁になりそうな気がする。
土曜日、俺が部屋で論文の入力をしていると、小野から電話がかかってきた。なんだろうと思って電話に出ると、鋼鉄・工藤の声が聞こえた。
「・・・・なんで小野の電話を工藤が使ってる」
「そういうこと言っていいのかしら。いま、大塚さんの店で奏と一緒にお茶してるんだけど、一緒にどうかと思ったのに」
「すぐいく」
俺はあわてて着替えると階下にいた弟二人に声をかけて家を出た。
大塚さんの店に行くと、カウンターにいた大塚さんが「やあ、いらっしゃい。二人は奥の席だよ。紅茶とコーヒーどっちにする?」とにこにこ声をかけてきた。
「コーヒーください」
「かしこまりました。あとで持っていくからね」
先に俺に気がついたのは、工藤だった。
「ようやく来たわね。内藤、奏と仲良くしてもらってる?」
「会ったとたんの台詞がそれかよ。」
「歩実、やめなさいよ。ごめんね、内藤。急に呼び出して」
「大丈夫だよ、小野。どうせ工藤が言い出したんだろ」
「なにその応対の差。妬けちゃうわね」
「歩実ちゃん。何が妬けちゃうって?僕もきみときみ以外の女性では扱いを違えているけど足りなかった?」大塚さんがまたいいタイミングでコーヒーを持ってきてくれる。
「・・・・うっ。充分です」工藤は顔を赤くして紅茶をすする。
やっぱり大塚さんは只者じゃない。工藤を一撃で黙らせた。
その後、工藤と大塚さんから一緒に食事でもと誘われたが俺と小野は断って二人で店を出た。
「小野は、このあと予定でもあるのか?」
「特にないけど、今日は天気がよくて気持ちいいからぶらぶらしてから帰ろうかな。」
「俺もそれにつきあってもいい?」
「別にいいけど、雑貨屋みたり本屋みたり、疲れたらお茶して家に帰るだけだよ」
「楽しそうじゃんか」
俺がそういうと、小野は「内藤って、物好きね」と笑う。
・・・・・・やっぱり俺は小野が好き。じゃあ小野は俺のことどう思ってるんだろう?
「ねえ小野」
「なに?」
「俺は、いつもきちんとしてて辛らつで、友達思いの小野が好きだよ。」
小野は俺の顔をまっすぐに見た。
「この間みたいに“口説いていい?”って言わないのね」
「あれは・・・その、忘れてくれ。できれば」
「驚いたけどね」
「だから悪かったよ。それで、小野・・・俺のこと、どう思ってる。」
「ど。どうって・・・そうね・・・えーっと」小野は顔がみるみる赤くなってきた。
「小野?」
「・・・・じゃない」
「は?」
「嫌いじゃないって言ったの!」
「じゃあ好き?」
「え・・・・」
「小野、答えて」
「・・・内藤のこと、すき」それはそれは小さい声だったけど、俺には確かに聞こえた。
「やった」
思わず小野の肩を引き寄せてしまう。
「ちょっと、何すんのよ!」
小野が離れようとするけど、俺はそんなに非力じゃないのだ。がっちり固めて逃がさない。
「え?彼女の肩を抱いてるだけじゃないか」
すると、とたんに静かになった小野・・・・そして俺のわき腹に小野のひじがヒット。
「ぐっ・・・ひどいじゃないか!俺、彼氏なのに」
「い、いきなり肩なんか抱くからよ!!お兄ちゃんからいろいろ護身術教わってんだから!!」
「わかったよ・・・じゃあ、ちゃんと段階を踏めばいいんだな」
俺はそういうと、問答無用で小野の手をつかみ“恋人つなぎ”をしたのだった。
なんか、俺も裕介に負けないくらい初々しい恋愛になりそうな気がする。でも、小野がそばにいるから、それでもいいか・・・と俺はとってもいい気分だった。
読了ありがとうございました。
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Extra recipe:内藤 孝介編はこれで完結です。
は~、なんとかまとまってよかった。
もう少し番外編をUPする予定ですので
お付き合いいただけると嬉しいです。




