表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
調理部の恋愛事情  作者: 春隣 豆吉
Recipe-8:また、春がきた。(完結)
24/33

川田 唯の卒業式

 少し早めに来た学校は人影もまばらで、正門には「泰斗高等学校卒業式」という立て看板がなければ休みの日のような静けさだ。

 私も時間通りに来ているはずなのに、内藤くんはいつも私より少し早い。

「今日は私が早く来ようと思ったのに」というと、内藤くんは「残念でした。」って笑う。

 次こそは絶対、私が早くきて内藤くんを待ってるんだから。


 校舎の中央にある中庭まで二人で歩く。ベンチに座って校舎を見上げた。

「唯さん、今日で卒業だね」

「そうだね。でも、変な感じ」

「どうして?」

「私、昨年まで内藤くんのこと全然知らなかったのに。今は一緒にこうやって並んでる」

「そっか、そうだよね。俺もあの場面に遭遇するまで唯さんのこと知らなかったし。」

「内藤くんも、3年生になるね。受験生だ」

「兄ちゃんたちが交代で俺の勉強みてくれる約束なんだけど・・・一番上の孝介兄ちゃんは普段ちゃらちゃらしてるくせに、勉強だけは容赦がなくて。中3のときも大変だった・・・」となぜか内藤くんは遠い目をした。

「・・・・それは、頑張らないとね」

 そんな話をしているうちに、チャイムがなった。

「あ、そろそろ行かなくちゃ。」

「唯さん。式が終わっても教室に残っててくれるかな。迎えに行くから」

「うん、わかった」私はうなずいて、歩き出す。



 式は滞りなく進行し、終了した。部活の追い出し会に行く人もいれば、クラスのお別れ会に参加するため帰っていく人もいる。

 私は窓から校庭をのんびりながめて内藤くんを待っている。こうやって窓からこの風景を見るのも今日が最後。

「唯ちゃん、まだ帰らないの?」

 涼乃が早川王子と顔を出した。

「うん、もう少しいる。」

「あ。もしかして内藤くんを待ってるとか」

「え。う、うん、まあ、そう」

「そっかー。唯ちゃん、お互い大学でも頑張ろうね!」

「うん。涼乃も早川くんと仲良くね」

「え。」

「川田さん。俺と涼乃は大丈夫だよ」涼乃の代わりになぜか早川王子が返事をした。

 涼乃と王子は大学は違うけど、この二人の場合はあんまり距離とか関係なさそうだ。きっと周囲に甘い空気を撒き散らす(特に王子が)に違いない。

 めぐちゃんの場合はなんと彼氏の土屋先輩が花束もって迎えに来た。「どんだけ羞恥プレイ・・・」というつぶやきを聞いたのは、私と涼乃だけである。

 大学は違うらしいけど、土屋先輩のあの態度を見る限り大丈夫っぽい。結局先輩は「何してんのよ!」と驚くめぐちゃんをさらりと連れ帰ってしまった。

 聡ちゃんの場合も専心館の制服をきた丸山くんが姿をみせて、なぜか聡ちゃんをはさんで山内くんを威嚇していた。あれはいったいなんだったんだろう。

 この二人は同じ大学に行く予定で、卒業後に発表される結果待ちだそうだ。


 そして私の場合は・・・・階段を駆け上がってくる音がして、そろそろここにたどりつく。

 ガラッと音がして「唯さん、ごめん!!遅くなった」息をきらして内藤くんがやってくる。

「唯さん、帰りに何か食べて帰らない?俺、腹へっちゃって」

「そうね、もうお昼過ぎてるから、私もお腹すいた」

 内藤くんが私の手をそっとつなぐ。今まで校内で手をつなぐなんてなかったからちょっと恥ずかしくなる。

「ち、ちょっと。ここ学校!!」

「誰もいないし、見てないし。」

「そういう問題じゃないだろう」

「いいからいいから」

 そう言うと、内藤くんはそ知らぬ顔をして私の手をぎゅっとつないだまま楽しそうに笑うのだった。


読了ありがとうございました。

誤字脱字、言葉使いの間違いなどがありましたら、お知らせください。

ちょっと感想でも書いちゃおうかなと思ったら、ぜひ書いていただけるとうれしいです!!


調理部の恋愛事情を完結いたします。

最後は一応メインの二人です。


お気に入り登録していただいた方、感想を書き込んでくれた方

この作品を楽しんでいただいた方全てにお礼を言いたいです。

長い間お付き合いいただいて、どうもありがとうございました。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ