3.長谷川 志保のSweet day
バレンタインデーは仕事だと恭ちゃんから聞いた私は、ちょっと早いけど恭ちゃんのマンションにチョコレートを渡しに来た。恭ちゃんは喜んで受け取ってくれてさっそく食べている。
そこでふと目に付いたのは・・・紙袋に入った大量のチョコレート。
「恭ちゃん、たくさんもらったんだね」
「あー、それな。もらった人全員にお返しするから大変だぞ。もらった人を覚えてないといけないから大変だよ」恭ちゃんがぼやく。
「ふーん」なんか、面白くない。恭ちゃんがもてるのは昔からだからしょうがないけど・・・彼女の立場から見ると、自分の彼氏が自分以外の人からチョコとかもらうって微妙。それにしても、バレンタイン前にこんなにもらうんじゃ、当日はどれくらいもらうのかな。
「お?もしかして、志保やいてる?」
恭ちゃんがなんだか嬉しそうに言う。
「・・・やいてないもん」
「そうか?俺はいつも志保が心配だから言わせてもらう。志保は優しいから頼まれると断るのが大変かもしれないけど、合コンの誘いは断れよ」
「学校帰りはバイトしてるから忙しくて行けないよ。そういう恭ちゃんは合コンに行ったことあるんでしょ」
「え。」恭ちゃんがなぜか言葉に詰まっている。
「やっぱりねー。恭ちゃんなら行ってると思った。」そしてお持ち帰りとかもしてたんだろうな~。
「今は行ってないからな。」
「恭ちゃん、合コンって楽しいのかな」
「志保は知らなくていい世界だ。」
「えー、なにそれー」
私がふくれると、恭ちゃんが笑う。
「お、そうだ。志保に頼みがあったんだ」
「なに?」
「大量にできるお菓子ってやっぱりクッキーとかになるのか?」
「そうだね。クッキー類は一度にたくさん焼けるから・・・。あとはカップケーキくらいかな」
「ホワイトデー用にここで作ってくれないか?もちろん費用は出す」
「え。」
「いつもならネットで購入するんだけど、だめかな」
「私はかまわないけど、手作りのお菓子をもらうのが嫌って人もいるよ?」
「それはもらった側の都合だろ。それに、志保に作ってもらうことに意味がある」
「意味?」
「いかにも手作りのお返しをもらったら、普通彼女か奥さんが作ったのかって思うだろ?」
「そうだねえ。料理をするイメージがない人だと特に」
そして恭ちゃんは「料理をしない人」のイメージだ。実際はする人だけど。
「これで志保がやかないですむし、来年からはお返しをする量が減るだろ。まさに一石二鳥だ。聞かれたら“彼女に作ってもらった”って俺言うし」
恭ちゃんが自分の思いつきに得意満面の表情になる。
私はテーブルに置いてあるチョコたちに目をやった。
本命チョコと思われる高級チョコをくれた人には申し訳ないけど・・・恭ちゃんの思いつきをちょっと嬉しく思ってしまった私だった。
読了ありがとうございました。
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オチのないストーリーになってしまってすみません(汗)
タイトルどおりのまさに「甘い一日」でした。
それにしても、恭一・・・どんだけ過保護(笑)。




