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調理部の恋愛事情  作者: 春隣 豆吉
Recipe-7:冬の調理部員(元も含む)
22/33

2.木下 聡子のバレンタイン

 受験生同士のカップルにもバレンタインデーはやってくる。

 1月の試験が終わって、2月の試験も近いというのに私は家でチョコチップクッキーを焼き雄太に渡すために、家に来ていた。

 インターフォンを押すと、雄太が玄関を開けて顔を出した。

「いらっしゃい。」

「おじゃまします・・・あれ?おばさんは?」

「隆太と出かけてる」隆太、というのは雄太の弟で小学6年生の元気な男の子だ。

「へーそうなんだ」

「あ!で、でも二人ともすぐに帰ってくるからな!!」なぜか雄太が赤くなって言い添えた。

「へ・・・?ちょっと、何赤くなってるの?」

「べ、別にっ。ちょっとこの部屋暑いんだよ」

「そう?私にはちょうどいいけど」

 私がそういうと雄太は「まったく聡子は・・・」などとぼやいているのが聞こえた。


 部屋に入ると、雄太がお茶を持ってくるために部屋を出て行った。

 中学生の頃に初めて来たけど、雄太の部屋も少しずつ大人の部屋になっていくようだ。変わらないのは剣道の防具袋が無造作に置いてあるくらい。前はもっとごちゃごちゃしていたのに今はすごくすっきりしている。

「俺の部屋、何度も来てるのに何か珍しいものでもあるか?」戻ってきた雄太が私にペットボトルのお茶を渡しながら笑う。

「ううん。そうじゃなくて・・・なんかすっきりしたね」

「ああ・・・聡子が来る前に掃除したから。母さんにも“よくそんな部屋に聡子ちゃんを呼ぶなんていえたもんだ”って言われるくらい散らかしてたから」

「ぷっ・・・なにそれ。あ、そうだ。雄太、これ」と私はクッキーの入った袋を渡す。

「お、おう。甘い匂いがするな」

「今年のバレンタインは、チョコチップクッキーにしてみました。私の作ったお菓子なら食べられるっていう雄太の言葉を信じてみたの」

「えっ・・・マジ?ありがとう、聡子。一枚食べてもいい?」そういうと雄太は袋をあけて一枚取り出して、一口。

「・・・うまい。聡子、ありがとう」

「いえいえ。お口にあってよかったよ。」

 二人で顔を見合わせて笑う。

 ふいに雄太が真面目な顔をして私の顔に触れてきた。

「ほんと、ありがとな。勉強の合間に作るの大変だっただろ」

「全然。私にとっては料理ってストレス解消になるの。だから楽しかったよ」

「そう?」

「・・・そうよ」

 雄太が顔を近づけてきて、私が目をつぶる。雄太がそっと唇にふれ・・・・そうになったそのとき、「ただいまー!」と元気に階段を駆け上がる音がした。

 雄太はあわてて顔を離し、私も姿勢を整える。

「兄ちゃん、聡子ちゃんきてるんだろー?」とドアを勢いよく開けたのは隆太くん。

「おかえり・・・隆太」

「こんにちは、隆太くん」

「こんにちは、聡子ちゃん。わ!それ聡子ちゃん作ったの?」

「そうだよ」

「兄ちゃん、一枚ちょうだい!!」

「だめだ。これは俺がもらったもんだ。・・・聡子、隆太が帰ったから外に出るか」

「なんだよー。兄ちゃんのけちー!!」

 雄太はぶうぶう言ってる隆太くんを無視して私の腕をとった。

 階下にいたおばさんに挨拶すると「ごめんね~。隆太が聡子ちゃんが来てるってそっちに行ったでしょう。」と謝られてしまい、どぎまぎしてしまった。


 二人でいつも散歩する公園に行く。雄太はしっかりクッキーと二人分のお茶を持ってきていたので空いているベンチに座った。

「ごめんな。まったく隆太のやつ・・・」

「雄太。クッキーくらいあげればいいのに。」

「やだね」いつもなら雄太は隆太くんに優しいお兄さんのに、なんだか大人げない。

「雄太、大人げないよ」

「・・・聡子がつくったものは誰にもあげたくない」赤くなった雄太が目をそらしつつぼそりと言う。

 どうしよう、嬉しすぎる。顔が自然とほころんできちゃうよ。

 外は寒いのに、私の顔はなぜかほてってる。

「聡子・・・さっきの続き」そういうと、雄太が顔を近づけてくる。

 私たちは、誰もいない公園でキスをした。


読了ありがとうございました。

誤字脱字、言葉使いの間違いなどがありましたら、お知らせください。

ちょっと感想でも書いちゃおうかなと思ったら、ぜひ書いていただけるとうれしいです!!


実際の受験生は、こんなほのぼのしてないと思いますが

あくまで創作なので、ご容赦ください。

第3弾は、歳の差の二人です。


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