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調理部の恋愛事情  作者: 春隣 豆吉
Recipe-7:冬の調理部員(元も含む)
21/33

1.川田 唯のクリスマス

「唯さん、ちょっとだけクリスマスに会おうよ」

 内藤くんからそんなふうに誘われたのは終業式の帰りだった。

「クリスマス?」

「うん。駅前のショッピングモールにあるツリーが期間限定でライトアップしてるらしいんだ。人工雪も降るんだって。一緒に見ない?」

 雪の中で光るツリーかあ・・・きれいだろうなあ・・・

「うん。楽しみだね」

「そうだね」

 内藤くんがきょろきょろと周囲を見回したあとに顔を近づけてきたので、私は目を閉じた。



 私が勉強していると、お姉ちゃんが和菓子とお茶を持ってきて顔を出した。

 なんとなく流れで内藤くんのことを話す羽目になってしまう。

「唯もクリスマスに彼氏とデートするようになったのね~。ねえねえ、彼氏ってどんな人?」

 お姉ちゃんがなんだか楽しそうだ。

「どんなって・・・背が高くて・・・同じ高校の2年生で・・・」

「なんと年下の彼!やるじゃない~。高校生の男の子かあ・・・なんか、いろいろと可愛いかも~。きゃ~どうしよう。」

「お姉ちゃん!!そこで変な妄想しないでよ!!」

「変な妄想ってなによ。失礼ね~」

 お姉ちゃんは昨年、和菓子職人のお義兄さんと結婚した。店を継ぐ予定なんだけど、両親も祖父も現役なので今は修行中といったところ。

「お姉ちゃん、店はいいの?」

「おじいちゃんが、唯と食べなってお菓子を作ってくれたんだから、すぐに食べなきゃ失礼ってもんよ」

 そういうと、お姉ちゃんは生菓子を食べ始める。私もそれに倣って生菓子に手を伸ばした。

「お姉ちゃん、見たいなー。唯の彼氏」

「え~」

「かわいい妹の彼氏をちゃんと見ておかないと、お姉ちゃん心配♪」

「・・・単に高校生の男の子が見たいだけでしょ!!」

「ん?細かいことは気にしないのよ」

 言葉はふざけていても、お姉ちゃんが本当に私の心配をしていることはわかる。

「わかったよ・・・受験が終わったら話してみる」

 私の返答に満足したお姉ちゃんは「じゃあ、店に戻るわ。勉強頑張って私の後輩になりなさいよ」と言って部屋を出ていった。



 クリスマスになると、うちは和菓子屋なのに店内にクリスマスツリーを飾る。なんでも、ひいおじいちゃんが新し物好きで“和洋折衷が楽しそうだ”と言い出したのが最初らしい。

 それ以来、現在は2代目になるツリーに使わなくなった和菓子の型などをオーナメント代わりに飾っている。

 店に顔をだして「じゃあ、行って来るね」と声をかけるとお姉ちゃんが「あんまり遅くなっちゃだめだからね」とニヤニヤしながら送り出してくれた。

 待ち合わせをした場所に行くと、もう内藤くんが来ていた。

「ご、ごめん。遅くなって」

「俺が早く到着しちゃったんだ・・・その、待ちきれなくて」

「え?」

「だって、俺たちいつもデートといえば一緒に帰るしかなかったじゃん。今日は一日一緒にいられるから」

「あ・・・そっか。そうだよね。」

「そ、それじゃ、どこ行こうか。ライトアップは6時かららしいよ」

 今はお昼。

「じゃあ、何か食べない?お腹すいちゃったよ」という私の提案に内藤くんも同意したため、まずはお昼を食べることにした。


 楽しいと時間が過ぎるのが早い。あっという間に6時近くになりツリーの周りに人が集まり始めた。カップルばかりかと思いきや、家族連れも多い。

 一瞬ふっとツリーの周囲の照明が消えて、色とりどりのライトで飾られたツリーが浮かび上がる。

わあっ・・・と周囲からざわめきがあったあと、雪がちらちらと降り始めた。あちこちで雪を触ろうと手を伸ばしている。

 私もツリーに見とれていると後ろからぎゅっと内藤くんに抱きしめられる。

「内藤くん?」

「来年も、その次もずっと一緒にツリーを見ようね、唯さん」

「うん・・・そうだね」本当に、そうなりますように。私は思わずツリーにお願いしてしまった。


読了ありがとうございました。

誤字脱字、言葉使いの間違いなどがありましたら、お知らせください。

ちょっと感想でも書いちゃおうかなと思ったら、ぜひ書いていただけるとうれしいです!!


真夏だというのに、Recipe-7は冬ネタです。

季節ずれしてすみません(汗)。

第1弾は唯ちゃんと内藤くんのクリスマスデートです。

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