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調理部の恋愛事情  作者: 春隣 豆吉
Recipe-6:男子たちだって心配だ
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Extra recipe:内藤 孝介の触発

 今日の授業は午後からなので、俺は昼過ぎに来るとのんびり校舎まで歩いていた。

「内藤せんぱーい、どうしてこの間の合コンに来てくれなかったんですかぁ?」

 そこに、以前所属していたサークルの後輩がちょっと間延びした感じの甘い声で、声をかけてきた。

「ごめんね。ちょっと忙しくて」

「私、内藤先輩が来るっていうから参加したのに~。つまんなかったですぅ」

 前はこの甘い感じの声にほだされていたのに、今は小野のちょっと低めのクールな感じの声が心地いいと思ってしまう俺。

 そこに俺の願いが通じたのか小野が通りかかった。しかし、小野は俺と後輩をちらっと一瞥しただけですたすたと通り過ぎていく。

 俺は後輩に「悪いけど、これからは合コン行けそうにないから俺をメンバーに入れるのはやめてくれる?」と言うと、小野を追いかけるべく走り出した。


 前をすたすた歩く小野は背筋がまっすぐで迷いがない。

「小野!」俺が後ろから追いつくと、小野は立ち止まって俺を見た。

「あら、内藤。さっきの子は新しい彼女?」

「違うって。前に所属してたサークルの後輩だよ」

「ふーん。」小野はさして興味を示さない。

「そうだ、小野。この間もらったおにぎりのお礼してなかっただろ?」

「いいわよ。あれくらい。」

「でも小野の朝食をもらっちゃったんだからさ、俺にメシをおごらせてくれよ」

「ええ~?そんな大げさな」

 大げさでもなんでもない。俺はもっと、きみに近づきたいんだよ・・・なんてことは言えない。しかし、今ここで粘らないと小野と食事なんてこの先ないような気がする。

「とにかくさ、今日の夕飯一緒にどうかな。特に用事がなければ」

 俺は押しの一手で渋る小野を夕食に誘うことに成功した。


 俺たちが行ったのはうちの学生もよく利用しているイタリアンだ。本当はもっと隠れ家的な場所がよかったんだけど、小野が「あそこは値段が手ごろで美味しいから」と言い決定した。

 席についた俺たちは適当にパスタやピザを頼む。そういえば、小野と二人で食事って初めてじゃないか?

「そういえば、内藤と二人でご飯って今までなかったよね」どうやら小野も同じ事を思っていたみたいだ。

「そうだな。いつも誰かいたもんな」

「私、内藤と食事したなんてばれたら妬まれちゃうかも」小野がふふふと笑う。

「はあ?なんだよそれ」

「前に学食で後輩の女の子たちが“内藤先輩が今度の合コン来るって~!”“ほんと?気合入るよねー”って言ってたのを聞いちゃったのよ。内藤、人気あるのね~」

「俺は人数あわせで呼ばれるだけだよ」

「そう?その割にはお持ち帰り成功率8割だって聞いたわよ。現に前の彼女も合コンで知り合ったんでしょ?」

「・・・・まあな。」

「じゃあ、私なんかにかまってないで新しい彼女を見つけに行ってきなさいよ。」

「俺は・・・」と言いかけたところにパスタが運ばれてきて、間をおかずにピザもきた。

 とりあえず、食べよう。小野を口説くのは食べてパワーをつけてからがいいかもしれない。


 店を出て、そのまま別れようとした小野を俺は心配だからと家までおくることにした。小野は大学近くのマンションで一人暮らしをしているらしい。

 雑談をしながらゆっくり歩いたはずなのに、あっというまにマンションの前だ。

「やっぱりおにぎり一個に対してイタリアンじゃ申し訳ないわ。ここは割り勘にしよう。」と小野はお金を差し出す。

「いいって。小野のおにぎりはそれくらいの価値があるよ」

「おにぎりくらいまたあげるって。内藤、私にお世辞を言わなくていいよ」

 小野の言葉に俺は思わず「お世辞なんか言ってない」と小野の腕をつかんで、自分のほうに引き寄せた。

「え?な、なに??ちょっと、内藤??」俺の腕の中であたふたしている小野がかわいくて、俺はますます腕を強くする。

「なあ、小野・・・・俺は小野が好きだよ。だから、これから口説いていい?」

「・・・・ええっと・・・それはまた物好きな」

「それって、口説かれるのは嫌じゃないって解釈するよ?」

「い、いや・・・あのね、内藤?私、こういうシチュエーションに慣れてないので何と言ったらいいのか」

「何も言わなくていい。小野は俺がきらい?」

「き、きらいなら一緒にご飯は食べないわ。とにかく、離して?」

 俺が腕をゆるめると、小野は俺からいつもより少しだけ距離を置いた。

「そんな距離をあけなくても。悲しいなあ」

「またあんなことされたら困るもの」

 いつものクールな小野じゃなくて、顔を赤らめて困惑した顔の小野はいつもよりもかわいい。

「小野。俺はいたって真面目だからね。」

「そ、そう・・・。」

「今日はこれで帰るよ。でも小野が心配だから、ちゃんと中に入るまで見てる。ほら、俺に帰ってほしかったらさっさと中に入りな。」

 小野は黙ってうなずいてマンションのエントランスに入って姿を消した。

 俺はそこまで見届けると、駅に向かって歩いた。本当なら、もう少し時間をかけてアピールしようと思っていたのに・・・ううう、暴走しちゃったなあ・・・ま、後悔してないけど。


読了ありがとうございました。

誤字脱字、言葉使いの間違いなどがありましたら、お知らせください。

ちょっと感想でも書いちゃおうかなと思ったら、ぜひ書いていただけるとうれしいです!!


男子視点のオマケとして

内藤家長男を出してみました。

以前に活動報告に書きましたとおり、彼が出てくるということは・・・

そうです。ネタにつまりました(汗)・・・・。

それにしても、長男も「内藤家のDNA」発揮しましたね。

今はともかく、あとでどうしよ~とか煩悶してそうです(笑)。

次回は、ちゃんと調理部視点に戻る予定です。

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