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調理部の恋愛事情  作者: 春隣 豆吉
Recipe-6:男子たちだって心配だ
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2.丸山 雄太のモヤモヤ

 俺は丸山雄太。専心館高校の3年生だ。彼女の木下聡子は泰斗高校の3年生。俺たちは中2の頃から付き合い始め、今年で5年目になる。

 高校は別々になったけど、同じ大学に行こうと決めた俺たちは夏休みになると同じ予備校の夏期講習に申し込んで、一緒に通っている。


「木下?」

 予備校で聡子に声をかけてきた男がいた。

「あ、山内くん」

 聡子がヤマウチくんと呼んだ男は、飄々とした雰囲気のメガネの男。

「木下もこの夏期講習来てたのかあ・・・もしかして、彼氏?」と、言って俺のほうを見る。

「そうだよ。雄太、こちらは同じクラスの山内くん。」

「どうも、丸山です」と俺が言うと、山内も「どうも、山内です・・・それにしても、本当に木下って彼氏もちだったんだね。なんだ、残念」と言いやがった。

 そりゃどういう意味だ、と俺が思っていると、聡子が「山内くん、それどういう意味なの?」と聞いた。

 山内は「だってさ、木下って学校であんまり彼氏の話しないじゃないか。だから俺らは木下には彼氏はいないもんだと思ってた。がっかりするやつもいるだろうな」とからかうような口調。

 聡子は「そんなの、知らないよ」とちょっとムッとしている。

 山内は聡子の様子をみて、「そりゃそうだ。じゃあ俺も誰にも言わないよ。じゃあな」と手をひらひらさせて離れていった。

 もしかして「聡子に彼氏がいてがっかりするやつ」ってお前じゃないのか?って俺は山内にツッコミたい気が満載だった。

 聡子は「もー、山内くんはいつもあんななんだよなあ・・・」とぶつぶつ言っていた。


 俺と聡子は同じ大学を目指しているけど希望学部は違うので、受ける講義が違う場合もある。

 今日はまさにその日で、聡子は学校で行われる補習授業に行っている。それぞれの授業が終わる時間が合うため、授業が終わったら駅で待ち合わせる約束をしていた。

 授業が終わり、俺が教室を出ようとしたとき、山内から声をかけられた。

「丸山君、ちょっといいかな」

「・・・・山内」

「俺のことは呼び捨てなんだ。まあ彼女にいきなり話しかけた要注意人物ってやつだもんね」

 やっぱり、昨日俺が感じたことは間違ってないのか?

 俺が無言で山内を見ると、山内は俺を見てにっこりと笑って「丸山君の勘は当たってるよ。木下に彼氏がいてがっかりするやつってのは俺だよ」と言う。

「それを俺に言ってどうすんだ。」

「丸山君、どうして彼女と同じ高校を選ばなかったんだい?」

「泰斗より専心館のほうが、俺には合ってると思ったからだよ」

「なるほど・・・。確かにそんな感じだね。」

「山内。聡子は譲れないから。他あたってくれ」思わず口から出た言葉に、自分が恥ずかしくなる。なんで俺、こんな男の前で言わなきゃいけないんだ。

 言われた山内のほうも、ちょっとあっけにとられたようで「お。こりゃまた・・・・木下はすごいね。彼氏にそこまで思われるとは」と驚いていた。

「・・・うるせえ。俺の本心なんだからしょうがないだろ」

「なるほどね。でも、まあ先のことは分からないし。せいぜい油断しないようにね。今はこのまま退散してあげるよ。じゃあな」

 困惑している俺をおいて、山内はさっさと教室を出て行ってしまった。


 待ち合わせ場所に行くと、聡子が先に待っていた。

「悪い、遅くなった」

「大丈夫、そんなに待ってないよ。」

「どっかでお茶でも飲んでいくか?」

 すると、聡子がびっくりした顔で俺をみた。

「雄太、どうしたの?いつもならすぐに帰ろうって言うのに」

「なんか、今日はもう少し聡子と一緒にいたいんだ。都合悪いか?」

「ううん。嬉しい。私も、雄太ともう少し一緒にいたかったの」

 聡子は本当に嬉しそうだ。なぜか山内の“せいぜい油断しないようにね”と言う言葉がよみがえる。

 絶対に油断なんかするか。


読了ありがとうございました。

誤字脱字、言葉使いの間違いなどがありましたら、お知らせください。

ちょっと感想でも書いちゃおうかなと思ったら、ぜひ書いていただけるとうれしいです!!


男の子第二弾。聡子の彼氏、雄太くんの視点です。

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