3.未来を予約
恭ちゃんの住んでいるマンションは勤務先の大学病院に程近い場所にあった。
地下の駐車場に車をとめて、エレベーターでエントランスまで来る。
「志保。ここはオートロックだから・・・・部屋番号と暗証番号はこれ。覚えておけよ」
「なんか、すごく高そうなマンションだね・・・恭ちゃん、どうしてこんなところに住んでるの?」
「ここは一部の部屋を大学病院で借り上げてるんだよ。」
「ふうん、そうなの。」
「それより。番号は覚えたか?」
「う、うん。」
「これで俺が届け物をしてほしいときに、志保に届けてもらえるな。よしよし」
「ちょっと!私は使い走り??」
「まあまあ。来たら食事くらいおごってやるからさ。ほら、行くぞ」
いつの間にかオートロックを解除した恭ちゃんに手を引っ張られた。
恭ちゃんの部屋は2DKでベッドとパソコンの載ったデスク、本棚。あとはテレビだけ。料理をするといってただけあって、使い込まれた調理器具も置いてある。
「冷たいウーロン茶があるけど、それでいいか?」
「うん」
「わかった」そういうと、恭ちゃんはコップにウーロン茶を注いで持ってきてくれた。
「志保は同級生だったやつに告白されて断ったのか。」
「・・・そうだよ。」
「変なヤツだったのか?」
「全然違うよ!!性格もいいし人望もある人だよ。高校のときも人気あったよ。でも」
私は恭ちゃんをちらりとみた。
「でも?」恭ちゃんも私をみた。
「私は・・・すきなひとが、いるから。・・・・私は、恭ちゃんが好きなの。」
ああ、とうとう言ってしまった。5歳の頃みたいに、また流されちゃうのかなあ・・・私が下を向いたまま黙っていると、恭ちゃんが「あのな、志保」と話し始めた。
「志保が高校入学したと同時に俺、一人暮らしを始めただろ?俺の勤務してる大学病院は家からでも通えるし本当は一人暮らしの必要は無かった。」
「そうなの?仕事が忙しくて帰りが遅くなるからだっておばちゃんが言ってたよ」
「それもあるけど・・・俺は自分が犯罪者になりそうで」
「犯罪者??恭ちゃん、なんか犯罪に加担を??だめだよ!!」
私が思わず顔を上げると、恭ちゃんは馬鹿かお前はと言う顔をして私を見ていた。
「あのなあ。志保の想像してる犯罪じゃなくて・・・」そういうと、私の頭に手を伸ばす。そして、いつものように頭をくしゃくしゃにした。
「何すんの!!もう、子供じゃないんだからね!!」
私は鏡をだして髪の毛を整える。
「・・・・だから、家を出て一人暮らしを始めたんだよ。」
「は?」
「俺はとっくにハタチを超えて大人だからね。志保は未成年だろう?」
「恭ちゃん、それって」
「俺は未成年には手を出さない。」
「私、来年には20歳になるよ。そしたら・・・」そしたら、付き合ってくれるってこと?
「志保」恭ちゃんが私の顔にふれた。
「恭ちゃん?」
「これくらいは、大丈夫かな」そう言うと、恭ちゃんの顔が近づく。
こ、これって・・・・私はあわてて目を閉じた。「目を閉じることはさすがに知ってたか」という恭ちゃんの声のあとに、恭ちゃんにキスをされた。
恭ちゃんにキス、された・・・。心がふわふわしてる・・・。
「ほら、帰るぞ」
「え?」
「あんまり遅くならなにように、っておばさんと約束しだんだよ。」
「う、うん」
「・・・・さっきのは、予約だ。」
「予約?」
「志保の来年以降を予約したってこと。ちなみにキャンセルはきかないから」
「は、はいい?」
「前に言ってただろ。大人になったらデートしてくれるかって。大人になったら一生かけてデートしてやるよ。」恭ちゃんは私の顔を見てないけど、間違いなく照れている。
「恭ちゃん、大好き!!」私は思わず恭ちゃんに抱きついてしまった。
「こら、離れろ!!・・・志保、俺もちゃんと好きだから。」
その後も、恭ちゃんも私も互いに対する態度を変えなかった。だけど、二人の間の空気は確かに変わったのだった。
読了ありがとうございました。
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恭一の嗜好はともかく、展開は全年齢・・・のはずです。
これ以上書くとなったら、確実に月ですね。
一年後くらいの設定で(汗)。




