2.夢のドライブ
長文になります。
ご了承ください。
強引に車に乗せられて、恭ちゃんとドライブ。
「志保。夕飯食べたか?」
「食べてない。恭ちゃんは?」
「俺もだ。家に帰って適当に作るか買うかって思ってたから」
「彼女に電話すれば、作ってくれるんじゃないの?」
私がそういうと、恭ちゃんは心外だという顔をした。
「仕事が忙しくてデートなんてしてる暇はねえよ。だから彼女は作らない」
恭ちゃん、彼女いないんだ・・・広瀬くんをふった罪悪感があるはずなのに、うれしくなってしまう自分が今は嫌い。
「なんか音楽聞くか?・・・といっても、CDかラジオだけど。」
「恭ちゃん、音楽聞くの?」
「その青いケースに入ってるから適当に選べばいい」
恭ちゃんは運転しながら返事をする。
私は名前を聞いたことのあるジャズピアニストのCDを見つけたのでセットした。
「志保、おばさんに電話しておけよ。今頃心配してるだろうから」
「え~。まだそんな遅くないのに」車の時計は夜の7時だ。
「だめだ。そろそろメシ食う場所に到着するから、そこでかけておけよ」
「へ?」
「夕飯食べてから家まで送ってやる」
恭ちゃんはそういうと、レストランの駐車場に車を駐車した。
私は車が止まると家に電話をかけた。母が出たので、恭ちゃんと食事に行くことを話すと、なぜか異様に喜ばれた。
「恭ちゃん、お母さんが代わってだって」私が携帯を渡すと恭ちゃんは母と話し始めた。
「こんばんは。ええ、帰宅途中にばったり会いまして・・・はい、夕飯食べたらそちらまで送りますから・・・はい」
なぜか恭ちゃんが辟易しながら対応している。
「はい、失礼します」そう言って電話を切ると、私に携帯を返してきた恭ちゃんはなぜか疲労感を漂わせていた。
「恭ちゃん、どうしたの?」
「いや・・・・志保。お互い、大変だよな」
「はあ?なにそれ」
「気にするな。さ、飯くうぞ。」
「うん」
恭ちゃんが連れてきてくれたのは、定食屋だった。ちょうどお店が混み始める前で、待つこともなく席を案内される。
「私、恭ちゃんっておしゃれな店しか行かないかと思ってた」
私の発言を恭ちゃんは鼻で笑う。
「なんだそれ。どっからそんな幻想が生まれたんだか。俺はこういう店のほうが好きなの。志保は何にする?」
「わたし、から揚げ定食!五穀米で。」
「お前は昔からから揚げが好きだよなあ」
「恭ちゃん、わかってないなあ。から揚げが美味しいお店は何を食べても美味しいっていう法則があるんだから。」
「なんだそれ」
「・・・私が考えたのっ!悪い?」
すると恭ちゃんは噴出したかと思うと、笑いを必死でこらえている。なんか腹立つなあ。
「・・・悪い。志保のから揚げに対する熱い思いが伝わる話だな・・・・ぷっ」
「ふん!」私がちょっとムッとしたのを見た恭ちゃんは「悪い悪い」とニヤニヤしながら謝る。
定食が運ばれてきて、私たちは食べ始めた。
私はから揚げ定食、恭ちゃんはブリの照り焼きと肉じゃがコロッケ定食だ。
恭ちゃんは食べるのが早くて、私がから揚げを食べているのをときどき見てるため、なんだか落ち着かない。
「そんだけ食べられれば大丈夫だな」
「へ?」
「さっき、落ち込んでただろう?でも、人間食欲があるうちはなんとかなる」
「医者の言葉とは思えないよ、それ」
「志保の前では医者じゃないからいいんだ。」
「なにそれー」
「冷めないうちに食えよ」
「わかってるよ」私はそういうと、せっせと食べ始めた。
恭ちゃんは「志保に払わせるわけがないだろう」といい、夕食をおごってくれた。
「恭ちゃん、ごちそうさまでした」
「さあ、帰るぞ」
「・・・うん」
車に乗って、家までドライブだ。
さっきセットしたCDから軽快な曲が流れる。
「志保」
「ん?」
「どうして、あんなに落ち込んでたか聞いてもいいか?」
「・・・・」
「俺には、話せないか?」
私は恭ちゃんが好きで、広瀬くんからの告白を断った。私が告白されたことを知ったら恭ちゃんはどんな態度をとるのかな。
「・・・・中学・高校と同じだった男の子から告白されたの。断ったんだけど・・・」
恭ちゃんは「そうか・・・・」と言ったきり黙ってしまった。
しばらく道路を走っていた恭ちゃんは急に「志保」と話しかけてきた。
「なに?」
「運転しながら聞く話じゃなさそうだな・・・そうだな・・・俺の家、寄るか?」
「へ?」
私の間の抜けた返事をスルーして、恭ちゃんは車の方向を変えるべく道路を曲がった。
読了ありがとうございました。
誤字脱字、言葉使いの間違いなどがありましたら、お知らせください。
ちょっと感想でも書いちゃおうかなと思ったら、ぜひ書いていただけるとうれしいです!!
ちなみに志保が言う「から揚げの法則」は私個人の主観ですので
軽く流してください。他にも、
1.ショートケーキの美味しいケーキ屋はたいてい何を食べても美味しい
2.ぺペロンチーノが美味しいイタリアンは当たり。
というのがあります。
ええ、私は食い意地が張ってます・・・。




