Extra recipe:内藤 孝介の発見
内藤家長男・孝介の話です。
楽しく読んでいただければ嬉しいです。
一番下の弟・裕介が、最近みょうに浮ついている。それまで髪の毛に寝癖がついてても朝の睡眠時間を優先させていたのに、今ではちゃんと起床して寝癖を直してから学校に行っている。
さらに今まではジャージのままあちこち行ってたくせに「孝介兄ちゃん、俺服がほしいんだけど、どこで買ったらいいのかなあ」などと聞いてくるようになった。
この分かりやすい変化・・・裕介、お前もか。駿介が苑子ちゃんと付き合いはじめた頃とそっくり。
「まさか一番下の弟に彼女ができるとは。びっくりしちゃうよなあ」
「内藤だって彼女がいたでしょうが。合コンで知り合ったお嬢様大学の子はどうしたのよ」
「・・・・別れた。外見はぴかぴかなんだけど内面がね~」
「内藤・・・。あんたは人のことをとやかく言える内面じゃないと思うわ」
「相変わらず、心にぐさっとくることを言うね。小野は」
俺に対してびしびしダメだしをしてくるのは、同じ院生の小野 奏。もともと学部が一緒で、研究班が同じになり今では伊織と同じくらい大事な友人だ。
伊織というのは、武内伊織といって駿介の彼女・苑子ちゃんの兄で俺の友人。「やられたことは3倍返し」がモットーの腹黒伊織は、妹を溺愛していて駿介も最初のうちは歓迎されてなかったようだ。しかし、伊織は俺の弟だということで最近はだいぶ軟化してきたらしい。さすが俺。もっと駿介に兄貴風を吹かせてもいいだろうか、うん。吹かせてしまおう。
それはともかく、最近の俺はおかしい。それまでなんとも思っていなかった小野が気になってしょうがないのだ。
合コンできれいに着飾った女の子を見ても、“ごてごて飾りすぎだよなあ~”と耳に小さなピアスをあけているだけで服装もいたってシンプルな小野と比べてしまったり、お持ち帰りしたあと付き合うことになった女の子といても“小野と話してるほうが楽しいよなあ”などと思ってしまい、3ヶ月ももたない。
そんなようなことを、俺は久々に会った伊織に話した。すると、伊織は俺を半分あきれたように見た。伊織は在学中に司法試験に合格し、現在は司法修習生だ。将来は検事を目指している。
「お前さ、ほんとに自分の気持ちがわかんないわけ?」
「ん~。よくわからん。でも、小野が気になるんだ」
「やることやってても、お前の恋愛スキルは中学生並か。しょうがない教えてやるよ。孝介はさ、その小野さんが好きなんだよ」
「えええ!!まじか!!・・・そっか、俺は小野が好きなのか。伊織、俺これから小野と顔合わせたら挙動不審になってしまうかも。どうしよう!!」
「知らねーよ、そんなの。今までの彼女と同じように付き合えばいいだろ」
「馬鹿いうな。小野は今までの彼女たちとは違うんだ」
「俺に言ってどうすんだよ。おい、そろそろ俺帰るぞ。」
「俺も帰る。明日は朝から大学だ」
次の日、構内のベンチで小野がおにぎりを食べているのに遭遇した。
「おはよ。小野、何食べてるんだ?」
「おはよー、内藤。ちょっと寝坊しちゃってさ~、おにぎりだけあわてて握ったのよ。一個食べる?」
そういうと、小野はラップに包んだおにぎりを俺に見せた。
俺はしっかり朝食を食べてきたけど、小野手作りのおにぎりはぜひとも食べたい。
「食う」そういうと、さりげなく彼女の隣に座る。
「そ?じゃあ、どうぞ。中味はツナか梅だから」
「わかんないのか」
「家にあるものを入れてきたのよ」
「梅なんてあるのか」
「実家で母と祖母が毎年作ってるのを送ってくれるの。売ってるものよりはるかに美味しいのよ。」
小野が渡してくれたおにぎりは丸い。
「小野が握るおにぎりは丸いんだな」
すると、なぜか小野は「私、どうしても三角に握れないのよ・・・」と恥ずかしそうに言う。
小野って頭の回転は速いし弁がたつし、その気になれば人を泣かすくらいの毒舌をはくけど、やっぱりいいよなあ・・・。
よくよく見ると、小野の顔立ちはすっきりしてるし服装はシンプルだけどいいものを着ている。
なんか、俺が今まで付き合ってきた女の子たちと全然違う。
「内藤、おにぎり食べないの?」
小野の声に俺ははっとした。
「く、食うよ」
「じゃあ、さっさと食べなさいよ。そろそろ授業が始まるよ」
俺はあわてておにぎりを食べる。中味は梅だ。塩味もちょうどいいし確かにうまい。
「うまい!」
「でしょう?実家の梅は美味しいんだから」
いや、梅は確かにうまいけど、俺がほめたのは小野の握ったおにぎりで。そう言いたかったけど、あんまり嬉しそうなので、なぜかいえなかった俺だった。
読了ありがとうございました。
誤字脱字、言葉使いの間違いなどがありましたら、お知らせください。
ちょっと感想でも書いちゃおうかなと思ったら、ぜひ書いていただけるとうれしいです!!
感想&コメをいただいて思いついた話です!
ちょうどネタが浮かばなかったので、便乗してみました。
続きを書くかどうかは考え中です。




