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王子に嫁いだ公爵令嬢ですが、愛したのは獣人奴隷でした  作者: 白 月虹


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後日談 受け継がれる想い

柔らかな風が、木々の葉を静かに揺らしていた。


かつて彼女と並んで歩いた道を、ヒューリはひとりで歩く。

いや――今は、ひとりではなかった。


初めて別荘へ訪れた日。

使用人たちは、みな、エレンの姿に足を止めていた。


どこか懐かしむような視線。

言葉を探す沈黙。


その中から、


「よく…似てらっしゃる…。」


その一言に、誰もが涙する。



二人は町へ来ていた。

エレンが「お母様の好きな物を知りたい。」と言ったからだった。


町の人々も、エレンの姿にふと足を止め、やがて柔らかい笑顔を向けていた。


「あそこの、お菓子、メルージェが好きだったんだ。」


「食べてみたい!」


「ん、買いに行こう。」


短く答えながら、ヒューリはその姿に目を細める。


その髪も、瞳も、仕草さえも――

どうしようもなく、彼女を思い出させた。


胸の奥が、僅かに軋む。


けれど、それはかつてのような、ただ苦しいだけの痛みではなかった。


「……ここでは、お母様はどんな人だったの?」


遠慮がちに紡がれた言葉に、ヒューリは一瞬だけ目を伏せる。


「些細なことで笑って、どうでもいいことで怒って……そして、誰よりも優しかった。

俺は、アイツに救われたんだ。」


ぽつり、ぽつりと語られる記憶に、エレンはじっと耳を傾けている。


「笑顔が、エレンに似てるよ…」


その言葉に、エレンは嬉しそうに微笑んだ。


「……ほんと?」


「ああ」


ヒューリはわずかに口元を緩める。

それはきっと、彼自身も気づかぬほどに、柔らかな表情だった。


「お菓子食べながら、エレンの知ってるお母様も教えてくれないか?」


「ええ、もちろん!」


ヒューリはエレンの手を取り、空を見上げた。


青く澄んだその向こうに、もう届かないはずの人を思う。


そして――


「見ていてくれ…」


小さく、呟く。


返事はない。が、


それでも不思議と、今はもう孤独ではなかった。


隣には、確かに繋がった命がある。


そしてそれは、これからも続いていく。


二人はゆっくりと歩き出した。


あの日と同じように――

けれど、違う未来へ。



おわり。

ヒューリとエレンのその後を、少しでも感じて頂けたらと思い、書いてみました。


ここまで読んで頂き、本当にありがとうございました。


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