第25話 からだの異変
その夜は歓迎パーティーもあり、疲れたメルージェはアルフレッドの部屋で一緒に寝ることにした。
「疲れたー。」
ポスっとベッドへ横になるメルージェ。
「5日間居るって言ってたわよね…こういうの初めてだから、ちゃんと出来るか心配…
その間、私はこちらに居た方が良いよね?」
早口でガウン姿のアルフレッドに質問した。
「ふふ。お疲れ様、メル。
そうだね。彼らがいる間は、ここにいてもらう方がいいな。」
彼はそう言うと、メルージェの横に滑り込んだ。
「外交も大変ね…急だし…
陛下もお年だし心配だわ…」
「そうだな。少し心配でもある…
あの人はいつも何を考えてるかわからないから…」
「そうなの?」
「俺とメルが出会う少し前に、自分の妹と婚約させようと、いきなり来たこともあった…」
アルフレッドは天井を見上げながら、やれやれといった感じに話し始めた。
「俺の10個上の女性だぞ!
隣国の王子だぞ!?相手だって子供と婚約なんて嫌だろ!?
父上が必死に説得してくれたから無くなったけど…だからメルの事を見たいと思ったんじゃないか?」
「あはは、、大胆な人なのね…」
「あぁ、メルも気をつけて。」
「えぇ。そうね。」
メルージェは苦笑いしながら、アルフレッドに哀れな目で見つめていた。
「さぁ、今日は疲れただろうし、ゆっくり休むもう。」
「うん。おやすみ」
「ああ、おやすみ。」
アルフレッドがそう返したのを合図に、部屋の明かりが落とされる。月明かりが窓から差し込み、室内をぼんやりと照らし、やがて、二人の寝息が聞こえ始めた。
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本当にただメルージェを見に来た辺境伯は、数日滞在して帰って行った。城は平穏へと戻っていったが、心身共に疲れのせいか、メルージェは自室の前で倒れてしまった。
「――メルージェ?」
ヒューリは慌ててメルージェに駆け寄り、ゆっくり体を抱き起こした。
「ヒューリ?大丈夫よ…少し立ちくらんだだけなの…」
「少し立ちくらんだけって…そんな、顔面蒼白で倒れねぇだろ!」
その顔には隠しきれない怒りと心配が入り混じっている。ヒューリはメルージェを横抱きにして部屋に入り、ベッドへ優しく寝かせた。
「アンタ、ここんとこ働きづめだったんだから、無理してんのはわかってたけどよ!
今医者呼んでくるから!寝とけ!」
「…ヒューリ」
弱ったメルージェの瞳に見つめられて、声を聞くと、自分が求められてるように思ったが、そんな事はない。と頭を振った。だが自分の欲が増し、気付いた時にはメルージェの額に口付けを落としていた。
「あ、いゃ、すま――」
「謝らないで。
…私を安心させようとしたんでしょ?」
「……ん」
本当は愛してるからだ。と言いたかったが、ぐっと飲み込んだ。自分の思いが重荷になると思っているから。
メルージェもまた、嬉しさのあまり顔が綻ぶのを耐えた。サラが居るのに、今更自分が入る事なんて出来ないのだから。
「医者を、呼んでくる…」
しばらくすると、王宮医を連れてヒューリが戻ってくる。
「――なんと!お顔の色が悪い…」
王宮医は素早くメルージェの診察をしていると、廊下からバタバタと足音が聞こえ、ドアを思い切り開け放たれた。
「メル!!」
アルフレッドが心配して入ってくると、ヒューリは壁際に後退りをした。
「アルフレッド様!そんなうるさいと、メルージェ様のお身体に触ります!」
「あ、すまない…」
王宮医に怒られて、肩を落とすアルフレッドを見て、メルージェは微笑んでいた。
それを見ていたヒューリの心臓は、ギリギリと痛みだした。
「さて、ご容態の事でお話がございます。」
二言目はアルフレッドにだけ聞こえるように言った。
「人払いをなさったほうが…」
「!?……分かった…」
メルージェは重い病なのかと不安になりながら、メイドたちとヒューリに外に出るように声を掛けた。
「ヒューリはここに居て。」
「あ、はい。でも…」
「良い。メルが連れてきた使用人でもあるし…」
顔は嫌だと言っていたが、アルフレッドが承諾すると、ヒューリは一礼して、また壁際に立って王宮医の話に耳を傾けた。
つづく。




