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居眠り卿とファッテンの海賊  作者: 中里勇史
ガロナ水軍

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8/11

セールミーン沖の大海戦 その1

 「けどよ、どうやって海賊を捕まえるんだ」

 「俺らも探してるが見つからねぇんだ」

 ウィンもようやく2人を認識できるようになってきた。背が高くて痩せているのがニポで、背が低くて筋肉質の方がダロナだ。

 「だからニムだってば」「ダルナだ」

 「やみくもに探しても見つからないよ。海賊の方から来てもらうのさ」と、ウィンは言葉とは裏腹にやる気が感じられない目で言った。


 こうして、ウィン発案の囮作戦が決行されることになった。とはいえ実行までには時間がかかった。まず、小屋にあったヌルヌル液とベタベタ液が足りないので、量産する必要があった。だが、ボレナじいは作り方をすっかり失念しており、フェリーニナに頭を殴られながらボレナじいが製法をひねり出すところから始まった。

 ガロナが懇意にしている商人に偽の貿易船を仕立ててもらい、フェンエルス王国の珍しい品々を満載してセールミーンに寄航するという噂を流した。ガロナ水軍の1人が途中で水先案内人として乗り込み、この航路を使って港に入るといった話をセールミーンの酒場で話し、航海計画をだだ漏れにした。

 「よくこんな悪知恵が働くな。やっぱり帝国の役人はあくどいぜ」と、ニムはウィンを睨んだ。

 「いや、それほどでも」と言って、ウィンはわははと笑った。

 「あの航路を使うなら、海賊はここで襲ってくるはずだ」と、ガロナは海図を指し示した。複数の島に囲まれた海域の出口付近だ。

 「ここは島が密集していて暗礁も多い。船が通れる航路は限定されて自由が利かない。この東側はひらけているからどの方向にも逃げられる。島影に隠れて、獲物が来たら取り囲み、襲って逃げる。俺ならここを使う」

 「見事な手際だね。やっぱり普段は海賊してるんじゃないの?」

 「やってねぇって」

 ウィンのツッコミに、ガロナは嫌そうに答えた。


 こうして、ガロナが示した海域を監視できる島にガロナ水軍を集めて擬装貿易船と海賊を待つことになった。

 「来たぜ」

 擬装貿易船が島の間を縫うように現れた。ガロナ水軍の水先案内人の指示だろう。浅瀬や暗礁を巧みに避けている。そこに、島影から3隻の船が出現し、擬装貿易船の鼻先を押さえた。貿易船は大型なので、この危険な海域では後戻りは不可能だ。前を塞がれたらもう動けない。

 ニムが手をたたいて喜んだ。「思った通りの動きだ。単純な連中だぜ」

 「違うね。海賊はこの海のことが分かってるんだ。厄介だよ」

 フェリーニナに否定されたニムをダルナが笑った。そのダルナの嘲笑をフェリーニナがたしなめた。ガロナはそれをニヤニヤしながら黙って見ている。

 「よし、出撃だ! 海賊を取り囲め」とウィンが号令してわははと笑った。

 「だから、何で役人が仕切ってんだよ!」


 5隻のガロナ水軍船が、海賊船を取り囲むように殺到した。海賊船が異変に気付いたときにはガロナ水軍が広い海域への出口側を封鎖していた。ガロナと麾下の水軍たちの巧みな操船技術と絶妙な位置取りのなせる技だった。

 ガロナ水軍は、鉤付きの縄を海賊船に投げ込み、船と船を繋いだ。これで簡単には逃げられなくなった。

 「ベタベタ液を投げ込め!」

 またウィンが指揮を執ったが、既に戦闘態勢に入っているガロナ水軍は誰もツッコまない。ガロナは舵輪を固定しながら、皆の動きを楽しそうに眺めていた。

 ベタベタ液は、木材を加熱して抽出した液体を煮詰めて水分を飛ばし、さらにニカワなどを混ぜ、改めて使いやすい粘度まで油などでのばしたものだ。実戦用のベタベタ液には腐魚などを混ぜて強い悪臭を付けている。これを土器や革袋などに詰めて海賊船に投げ込んだ。

 クサいわベト付くわで、これを食らった海賊は戦意を大いに喪失した。だが、ベタベタ液を回避した海賊が縄を切断して海賊船と水軍船を引き離そうとした。

 「次はヌルヌル液だ! ニメ、やれ!」

 「ニムだ!」と言いつつ、水軍たちは桶に入れたヌルヌル液を海賊船にぶちまけた。縄を切断するために舷側に近づいていた海賊はこれをまともにかぶり、つるりと滑って転倒した。横波を受けて揺れた水軍船が海賊船にぶつかると、海賊船が傾いて海賊たちは反対側に滑り落ちていった。

 ウィンはそれを見てわははと笑い、「今だ! 海賊たちを捕まえろ」と叫んだ。

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