対海賊兵器
「だからよ、海賊船を見つけたら火矢で焼き打ちにしちまえばいいんだよ」とニムが主張した。
「それじゃ証拠が残らねぇだろ」とダルナが反対した。
「全然まとまらないねぇ」と言って、ウィンはわははと笑った。
「笑ってないであんたも考えな。あんたが言い出しっぺだろ」とフェリーニナがウィンの頭を殴った。
ガロナは寝転がったまま、その様子を愉快そうに眺めている。
ウィンはやる気のなさそうな目で天井を見上げた。
「犠牲者が出るとグライス軍が動き出す恐れがある。ナインバッフ公が出てきたら大ごとだ。ニレ、だっけ。焼き打ちなんてもっての外だ」
「ニレじゃねぇ! ニムだ」
「どっちでもいいよ。とにかく海賊を殺さずに無力化する必要がある。何かいい方法はないの? ダレナ」
「ダレナじゃねえよ」
「それならボレナじいが役に立つかもしれねぇな」とガロナが尻をボリボリかきながら言った。
「そうだ! あのベタベタ液が使えるかも」
フェリーニナが挑発的な瞳を輝かせた。
ボレナじいの小屋は、ガロナの屋敷から200メルほどの距離にあった。小屋の周りには、訳の分からない物が散乱している。小屋の中は、さらに訳の分からない物であふれていた。
「これ何?」と、フェリーニナが訳の分からない物を持ち上げた。
「それはヒトデの足を引っこ抜く道具だ」
「引っこ抜いてどうするのさ」
「引っこ抜いてから考えても遅くはない。考えることに意義があるのだ」
「……敵を殺さずにとっ捕まえる道具ってのはないかい」
「そんなもの捕まえてどうするんだ」
「ヒトデの足を引っこ抜くより有意義さ」
「そうか?」
「考えてみたらどうだい」
「詰まらんことを考えている暇などない」
「なら考えなくていいから、敵をとっ捕まえる道具を出しておくれよ」
「そんな便利な懐があったら苦労せんわ」
「ほら、あの、何かベタベタした液とか」
「そんなものあったか?」
全然かみ合わない2人の話に飽きたウィンは、訳の分からない物をガサゴソ漁ってみた。すると何かがボキッと折れてしまったので、他の訳の分からない物を載せて隠した。持ち上げた訳の分からない物の下から訳の分からない壺が出てきた。訳の分からない変な匂いがする。
口を覆っている革を外すと、訳の分からない液体が入っていた。指先に付けてみると、ヌルヌルする。
「あっ、小僧。勝手に触るな。それをこぼすとエライことになる」
「エライこと?」
「粘り気のある液を出す海藻をすり潰して魚油で伸ばした物だ。その液を踏んだら滑って転ぶ」
「そんなモン、何のために作ったんだい」と言いながら、フェリーニナも壺の中の液体を指先に付けた。ヌルヌルする。
「目的は重要じゃない。できたものに目的が付いてくるんだ」と言って、ボレナじいはニヤッと笑った。
ウィンはやる気が感じられない目で壺をのぞき込みながら、「これ、使えるんじゃないか?」とフェリーニナに言った。
「何に? 人を転ばすのかい?」
「その通り」
ウィンは他にも使えるものを探し始めた。「ほら、ニモとダレも探すんだ」
「だからニムだっってば。ニム・ニーレン!」
「ダルナ・ゲインだ。勝手に略すな!」
「そもそも何で帝国の役人に指図されなきゃならねぇんだ」
「ならアタシの命令だよ。文句言ってないで探しな」
フェリーニナは妙に艶っぽい目で2人を睨むと、近くにあった壺を開けた。
「あ、これこれ。ベタベタする液」と言って、彼女は誇らしげに壺を掲げた。その拍子に、ヌルヌルする液が入った壺を蹴飛ばした。液がこぼれて広がった。
「あ」
ウィンとニムとダルナは滑って転んだ。




