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居眠り卿とファッテンの海賊  作者: 中里勇史
ガロナ水軍

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5/11

ベルウェンの困惑

 ベルウェンは大層困惑した。護衛対象が海賊らしき連中に拉致されてしまったのである。大失態であった。

 個人的にはあの頭のおかしな監察使が死のうが生きようが知ったことではないが、責任問題となると話は別だ。死なれたら非常に困る。仕事に差し障る。帝国からの依頼は一切望めなくなる。それどころか処断されるかもしれない。

 いっそのこと、このままトンズラこくか、という考えが脳裏をよぎったことは否定しない。よぎったどころか、今後の行動の最有力候補は「トンズラ」だ。

 カルトメイメンに戻ってファッテン伯に支援を求めたが、島の連中には手出ししかねるの一点張りで話にならない。エルエメンも、伯爵家所有の船は整備中で出せないと言う。

 セールミーンに舞い戻って港の連中に船を出してくれと依頼したが、誰も協力してくれない。「帝国の役人がさらわれたんだぞ」と言っても、皆「それがどうした」という態度である。「あんたが目を離したからだろう」と言われては返す言葉もない。

 傭兵たちは皆、ベルウェンのせいじゃない、気にするなと言ってベルウェンの肩をたたいてねぎらってくれた。傭兵の元締、傭兵隊長としてそれなりに名が売れたベルウェンとしては屈辱以外の何物でもない。傭兵たちに忖度されて慰められて、実に居たたまれない気分になった。

 「セールミーンにいても埒があかねぇ。てめえら、行くぞ!」

 ベルウェンは傭兵たちを連れてオルドナ伯領に行くことにした。ファッテン伯が頼りにならないならオルドナ伯を頼るしかない。


 監察使の危機にファッテン伯が協力しない、ということがそもそもおかしいのだが、ベルウェンはまだ監察使の地位というものを完全には理解していなかった。

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