表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
居眠り卿とファッテンの海賊  作者: 中里勇史
ガロナ水軍

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/4

ベンデ島

 ウィンを乗せた小船は日没直前にある島にたどり着いた。その島は立派な港を備えており、多数の船が停泊していた。

 「おお、セールミーンより船があるじゃないか」とウィンは感心した。

 「お! あの船大きいなぁ。乗ってみたいな」

 「お前な、自分の立場が分かってるのか?」と、酒場からウィンを連れ出した男の1人が言った。

 「立場? ああ、これ?」

 ウィンは両手を持ち上げた。手首のところで縛られている。両足首も縛られている。「うん、捕まってしまった……」

 「そうだよ、捕まってるんだよ。死にたくなかったらおとなしくしてろよ」と、もう1人の男が言った。

 「ウィン様、おとなしくするべきですよ」

 「何か言ったか?」

 「いや、別に」

 船から下りると、足首の縄だけ外されて港の近くの建物に連れていかれた。建物の奥の部屋の、さらに奥に敷物が敷かれており、そこに大柄の男が座っていた。

 岩を適当に掘ったような無骨な顔で、目も鼻も口もやたらと大きい。浅黒く日に焼けた肌が、白い歯を際立たせている。長くて黒い髪を首の後ろで縛っている。

 「お頭、妙なヤツが居たんで連れてきやした」

 お頭と呼ばれた男は、ウィンをジロリと睨むと「こっちに来い」と言って手招きした。

 「お前、どこから来た」

 「カルトメイメンさ」

 「カルトメイメン?」

 「ファッテン伯に用があったんだけど、酒を飲み過ぎてあまり覚えてないんだな」

 「お前、ファッテン伯の仲間か!?」

 「仲間? いや、ファッテン伯は帝国の家臣だよ?」

 「ファッテン伯の大将ってことか」

 「ああ、そういえば大将って呼ばれてる」。ウィンは、ベルウェンに大将と呼ばれていることを思い出した。

 「ファッテン伯の親玉か!」

 「そう……なるのかな?」。ウィンは首をかしげた。「お頭」が斜めになった。

 「お頭、やっぱりコイツは魚のエサにしちまおう」

 「傭兵も連れてきてた。俺たちの敵だ」

 ウィンを酒場から連れてきた2人が興奮して処刑を主張した。のんびりしていたウィンは、突然空気が変わったことに気付いて慌てだした。

 「エサ!? ちょっと待って。私はおいしくないぞ」

 「俺たちが食うわけじゃないから気にしねぇよ」

 「いやいや、気にしようよ」

 「だから、そこはどうでもいいんだって」

 「そ、そうだ。それより身代金を取ろう! 帝国に言えばきっと金を出す」

 お頭と呼ばれた男は、それを聞いてニヤッと笑った。

 「ほう、幾ら出す?」

 「幾ら……だろう?」

 ウィンは考え込んでしまった。

 お頭と呼ばれた男は、その様子を見て腹を抱えて笑い出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ