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居眠り卿とファッテンの海賊  作者: 中里勇史
ガロナ水軍

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11/11

後始末

 「というわけで、ガロナ水軍についてはおとがめなし。今後も海の治安を任せるとのことでした」

 ウィンはベンデ島に戻ってガロナやフェリーニナにケルヴァーロの伝言を伝えた。フェリーニナは嬉しそうに笑ったが、ガロナは彼女をニヤニヤしながら眺めているだけだった。

 ウィンの怪訝そうな顔に気付いたガロナは、ウィンに向かって片目を閉じて見せた。

 「まあ、ケルヴァーロの野郎とは話しがついてたしな」

 「え」

 「ファッテン伯が怪しいことも分かってたし」

 「ええ?」

 「水軍の計画書を提出すると、必ず水軍が居ない海域に海賊が出没することは把握していた。意図的に空白状態になる海域を作ったりして、念入りに確かめたからな。そろそろウソの計画書を提出して尻尾をつかんでやろうと思っていたところだ」

 「親父、なんで何も言わなかったんだよ! それ知ってたらアタシらが右往左往する必要なんかなかったじゃないか」

 「だってなあ、見てて面白かったし」

 ウィンとフェリーニナとベルウェンは、愕然として開いた口が塞がらない。

 「若い連中が知恵を絞って解決しようとしてるんだ。水差しちゃ悪いだろ」と言って、ガロナは実に愉快そうに大笑した。ナインバッフ公と気が合いそうな男だ、とウィンは思った。

 「それからな、監察使殿。あまり自分の身分を吹聴しない方がいいぞ。ペンドペント(ファッテン伯領南部の街)で、酔っ払って『俺は帝国の監察使だ』って叫んでたって? あんたがセールミーンに着いたときには、街の連中はあんたの正体知ってたぞ」

 ウィンはしゅんとなって、「肝に銘じておきます」と答えた。

 ベルウェンは苦笑した。この大将は、賢いのか間抜けなのかさっぱり分からない。取りあえず、面白い男だと思った。


 ウィンは、フェリーニナに誘われて夕暮れが迫る港にやって来た。

 太陽が西に傾き続ける中、フェリーニナは水軍の船を見つめていた。夕日が彼女の美しい横顔を赤く染めていた。彼女はふとため息をついてからつぶやいた。

 「ガロナ水軍の船は、腐った魚の臭いがこびりついて、ヌルヌルのままさ。洗っても洗っても取れやしない」

 寂しそうに、空を見上げた。

 「諦めちゃ駄目だよ、フェリーニナ。ニレもダレも、水軍のみんなもいるじゃないか。彼らがいれば大丈夫。きっとガロナ水軍はよみがえる。きっときれいになるよ」

 フェリーニナはウィンを見上げると、ニコリと笑ってこぶしをウィンのみぞおちに力いっぱいたたき込んだ。

 「ぐげぐっ」

 「いい感じの話にまとめてんじゃねえぞ、このスカタン! アタシらの船どうしてくれるんだこの野郎!」

 「また俺たちの名前間違えてるじゃねぇか!」

 いつの間にかニムとダルナが横に居た。

 「わ、分かった、分かったってば。手伝うよ。私も掃除を手伝うから、痛っ! 勘弁してよ。痛い!」


 フェリーニナは、ウィンを海に蹴り落とした。





 この1年後の帝国歴221年、ウィンとベルウェンは運命の地であるナルファスト公国に派遣されるのである。


『居眠り卿とナルファスト継承戦争』の前日譚でした。ファッテン伯領は『居眠り伯とオルドナ戦争』とその次のお話の舞台にもなります。

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