80- わっぱ飯
「やっと着いたッッッ!長かったぜッ!ホント」
昼過ぎにシュトルツァの街に着くと、ルシュキーは感無量といった感じで拳を天に掲げる。
そこまでするほどか?とも思ったが、想像以上に退屈であったのは認める。
ま、でも俺は昔ズノイモまでの退屈な道中を耐えた経験があるからな。
あれに比べればなんということはない。
「いつまでそうしてるんだ?ほら、さっさと入るぞ」
シュトルツァの街は特に門番がいるというわけではなく、素通りで入れる。
シュトルツァは人口6000人の小さな街である。
そしてこの街と一帯の農村を治めるのが今回の依頼先であるシュトルツァ子爵である。
「で、これからどうすんだ?」
「まずは紹介状があるから、この街にあるエンフィルド家の支店に――」
「ご主人!お腹すいたのだ!」
会話を遮ってリュボフが飛び込んでくる。それと同時にみんなのお腹が鳴る。
うん。確かに王都を出発してから何も食べてなかったし、もう昼も過ぎたからな。
腹ごしらえするにはちょっと遅すぎるくらいか。
「確かにそうだな。支店に顔を出す前に腹ごしらえしていくか」
「さんせ〜い。で、何か店のアテはあるのか?」
「いや、ないけど?」
その返答に対してルシュキーが明る様にがっかりして肩を落とす。
いや、しょうがないだろ?俺はこの街に初めてくるし、ゲームの時もこの街に飯屋的なものの描写なんてなかったんだから。
「はぁ。貴族だからてっきり前にも来たことがあったのかと期待したんだがな」
「確かに俺は貴族だけど、他領に足を伸ばした事なんて早々ないから、お前とほぼ変わらんぞ」
行ったことのある場所なんてズノイモくらいなもんだからな。
ま、歩いていれば何かしらはあるだろうと言う事で、俺たち一同はシュトルツァの街を大通り沿いに進む。
「お、こことかどうよ?」
少し進んだ時、ルシュキーがある看板を指差す。そこにはわっぱ飯と書かれていた。
いや、だから何でそれがあるんだよ。
「何かよくわからないけど、これにしようぜ!なぁ、エズワルド!」
「構わないけど」
「それじゃ決まりだな!」
ルシュキーはそう言って店へと突撃していく。
「らっしゃい!」
「店主!わっぱ飯ってのを3人分頼む!」
「お、おい!ルシュキー!」
「はいよ!わっぱ飯3人分ね!」
店に入るや否やルシュキーが俺たちの分まで頼んでしまった。
「ルシュキーのバカが勝手に決めたが、リュボフもそれでよかったか?」
「ご主人と一緒のだったら何でもいいのだ」
とのことなので、わっぱ飯が来るまでしばし待つ。
で、わっぱ飯とはだが、わっぱ飯は新潟県の郷土料理で簡単に言ってしまえば炊き込みご飯である。
何かこの世界謎の新潟推しが激しい。ま、元がゲームだから気にしたら負けか。
「はいよ!わっぱ飯お待たせ!」
やって来たのは鮭の親子丼のわっぱ飯だ。これまた何とも新潟らしい。




