7-サフィレット
ズノイモに無事についた。
ちなみにポケットの魔法はあのあとタチャーナにめちゃくちゃ叱られたので、使用していない。
ま、タチャーナの見えないところでは使うつもりだ。
さて、ゲームで訪れたことのあるズノイモは山岳地帯にある辺境の街である。
とくに見どころもなく、ゲームではお使いクエストくらいでしか訪れる事もない街だ。
それは、置いておいて。さっさとこの塩コショウを売り飛ばしてしまおう!
てなわけで、街唯一の雑貨屋に入る。
「ん?見ねぇ顔だな。どっから来た?」
雑貨屋に入るとガタイのいい丸頭の店主が出迎える。
「リグニッキャからだ。今日はあるものを売りに来た」
「ほぅ。行商人の見習いってとこか?ご苦労なこった」
「ま、そんなとこ。で、これを売りに来たんだが、いくらで買い取ってくれる?」
ポーチから塩コショウの瓶を一つ取り出して、店主の前へ差し出す。
「これは一体?」
「これか?塩コショウだ」
「塩胡椒?これがか?少し舐めて確認してもいいか?」
「ああ。別に構わない」
店主は塩胡椒を手のひらに少し出して、舐める。
「確かに塩胡椒だな。これと同じのは他にまだあるのか?」
「同じのが残り4本ある。で、いくらで買い取ってくれるんだ?」
「まぁ、待て。焦るな。まずは重さを確認しなきゃなんねぇんだから」
店主はそう言って、カウンター下からゴソゴソと天秤を取り出して塩コショウの重さを量る。
「一つ、100gで合計500gって所か。10000スートでどうだ?と言いたい所だが、持ち合わせが少なくてな。今日は頑張っても4本しか買い取れない」
「4本って言うと8000スートか。そこを何とかならないか?」
「と言ってもなぁ。あ、代わりに物だったら渡せるぞ?これとかどうだ」
店主はそう言って、不思議な色をしたビー玉サイズのガラス玉を取り出す。
(こ、これサフィレットじゃん!まさか、ズノイモで作ってたとは……)
サフィレット。王国の貴族達の間で突如流行する不思議な変色ガラス。
これが必要なクエストがあって、その入手に苦労した覚えがある。
何せ高いのである!確か金貨10枚くらいした覚えがある。
それがまさかこんなところで出てくるとは。
「どうだ?綺麗だろ」
「そうですね。アクセサリーにしたら良さそうですね」
今まで後ろの方で黙っていたタチャーナが、サフィレットを見ると口を開く。
やはり、サフィレットは金になりそうだな。
「ふぅん?で、これをいくつ付けてくれるんだ?」
俺はこちらがサフィレットが欲しい事を悟られないように、まるで興味の無いように振る舞う。
「そうだな。これはうちじゃ一つ銀貨一枚で売ってるんだが……三つ!三つでどうだ?」
「三つね……」
「わかった!4つ渡す!これでどうだ?」
「よし、それで手を打とう」
「決まりだな?すぐに準備する」
店主から準備してもらった銀貨4枚とサフィレット4つを受け取る。
まさかまさか!4つも手に入るとは!これで単純計算で金貨40枚!
「確かに受け取った。今日はありがとう」
「いや、こっちこそ助かった。強いて言えば、塩と胡椒別々で欲しかったが」
「次があればそうするよ」
「ああ、そうして貰えると助かる」
店主と軽い雑談をして店を後にする。
塩と胡椒を別々に持ってきてくれと言われたが、それは無理な話だ。
だってこれ塩コショウだし。何故かバグで生成された謎な物だから別けるとかないのだ。
ま、もう来る事は多分ないからいいか。
さて、ズノイモでの用は終わった。あとは帰るだけだ。
そうあとは帰るだけ。あとは帰るだけ。
……苦痛な移動を何とかこなしてリグニッキャへと帰ってきた。
帰りは行きと違って明確な目的がないので苦痛倍増であった。
さぁ!リグニッキャに帰ってきたらやる事は一つ!中心街でサフィレット売るぞ!
「そう落ち込まないでください」
俺はリグニッキャの中央広場でうなだれていた。
結果からいえば金策は思ったより上手くいかなかった。
今回サフィレットの売買で手に入れたお金は金貨一枚だけだった。
なぜかといえば、サフィレットの需要というものを理解してなかったせいだ。
ゲームに意識が引っ張られすぎていて、サフィレットは無条件で売れると思っていたのが間違いだった。
どうやらリグニッキャでの需要はサフィレットという変色ガラスそのものに価値を見いだしてるのではなく、球体の色ガラスという、ビー玉の特性に価値を感じてるみたいだ。
俺の持ってきたサフィレットは、移動間で欠けや割れなどが発生して、無事なのは一つだけだった。
それのみが金貨一枚で売れた。
はぁ。ポケットの魔法で無事なサフィレットを一つ確保はしたが、労力の割には儲からなかった。
金策が降り出しに戻ってしまった。
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