4-移動手段
「というわけで、ズノイモ近辺に行こうと思う」
「はぁ。ズノイモですか?一体、突然どうしたんですか」
翌朝、朝食を食べるついでに、ズノイモに行くとタチャーナに伝えると、怪訝な表情をされる。
ま、ズノイモは鉱山地帯にある街で、鉱夫以外にとっては特に用がある街じゃないから仕方ない。
では、何故俺はそんな街に向おうとしているのか?
「うん?ま、ちょっとした金策をしようと思ってね」
「金……策、ですか?行商人の真似事でもするのですか?」
「ま、そんなところ。だから近い内にズノイモに行くよ」
そう。昨日出来上がった塩コショウ。これをズノイモで売り捌こうというわけだ。
何でリグニッキャの市場じゃなくて、別の街で売り払おうとしてるかと言うと、この世界の元のゲームには需要と供給システムがあった。
ようは、一つのところで大量の物を売ると値崩れするよ。買取る側も資金には限りがあるよという物だ。
なので今回は、リグニッキャから少し離れたズノイモに売りに行くと言うわけだ。
ついでに外の世界の様子も確認したいしな。
「はぁ。それはいいですけど……ズノイモまでどうやって向かうおつもりですか?」
「え?そりゃ、ファストトラ――」
俺はそこまで言いかけて、ハッと口を噤む。
そうだ。この世界はゲームと酷似しているが、ゲームじゃないんだ。だから、ファストトラベル何ていう便利昨日はない。
てことは、リグニッキャからズノイモまで自力で向かわないといけないのか……。
「ファスト?一体どうしました?エズ様」
「い、いや何でもない。徒歩で、徒歩で向おう」
「ここからズノイモまでですか?私は構いませんが……ここからだと馬でも3日はかかりますよ?」
「み、3日!?」
う、嘘だろ?ゲームではそんなに日数かからなかったぞ。
これはあれか。ゲームとこの世界じゃ縮尺が違うのか。
馬で3日の距離か……これは徒歩で向かうのは難しいな。
「くッ!けど、馬を買う金なんてないしな……」
俺の全財産は金貨1枚しかなかった。
それも塩コショウを作るために使ったので、残りは8万9500スートだ。
とてもじゃないが、この額で馬なんて買えない。
金を稼ごうと思ったのにこれじゃなんともならない。
「まぁ、手段がないこともないですが」
「どうやって?ズノイモには乗合馬車も走ってないぞ?」
「簡単な事ですよ。エズ様のお父様に頼んで馬を貸して貰えばいいのです。そしたら、私がエズ様を乗せて馬をズノイモまで走らせて問題は解決です」
「うッ……。確かに父さんに頼めば解決するが」
俺あの人なんか苦手なんだよな。それに本家に行くのもちょっと気まずいし。
「なら、決まりですね。明日にでも行きましょう」
うぅ……。背に腹は代えられないか。この方法しか解決策が思い浮かばないし、久々に顔出すしかないか。
馬も買うと高いしな。ちょっとの精神的苦痛で移動手段を確保出来るのだ!割り切っていこう。
てか、せっかく貴族になったのに転生する前と変わらず金に困ってるんだが?
こんなんで俺の今世の目的達成出来るのか?