41-遅刻
「ふぅ。何とか間に合ったな」
「ギリギリアウトだぞ。エズワルド・ズ・リグニッキャ。さっさと自分の席に着け」
ギリギリセーフかと思ったら、ギリギリアウトだったみたいで、名前を何と言ったか忘れてしまったが、担任の教官に怒られる。
「おやようございます。エズワルドさん。今日はどうしたんですか?遅れてくるなんて」
「うん?ちょっとね」
朝からダンジョンに言ってましたなんて事が言えるわけもなく、フィーネの質問をはぐらかす。
教官は俺が席に着いたのを確認すると、早速授業を開始する。
授業に関しては、ゲームで一度聞いた事のある内容な上に、既に魔法がある程度使えるので興味がなく、殆どを聞き流す。
その間にある悩みが再発する。
それは、この世界に主人公に相当する人物はいるのか?という事だ。
この世界に主人公がいないなら、今後発生するであろう数多くの問題を、一体誰が対処するのか?という問題が発生する。
仮に主人公がこの学園に入学してるのであれば、ゲーム通りであればおそらく特待生クラスにいるはずである。
この学園は王国が貴族達で魔法を独占する為にあると説明したが、その独占方法は金銭によってである。
なので、平民でも商家などの資産家の子供なら入学する事も可能である。
それとは別に、この世界に『ジョブ』というものが存在する以上、金銭による独占は絶対ではなく、時たま魔法を自由自在に扱える存在が現れる。
そういった人物を囲って監視下に置くために、この学園には特待生として学園に関わる諸費用を免除して入学出来るようにするシステムがあり、その特待生を集めたのが特待生クラスだ。
主人公はもちろん平民なので、入学してるとすれば平民側の教育棟、しかも特待生で入ってくるだろうから特待生クラスにいるはずだ。
といっても、主人公の特徴とか一切分からないから、特待生クラスに行っても分からないが。
てか、そもそも入学してない可能性も全然あるからな。
こんなことならリグニッキャにいる時に探りをいれるべきだった。
ま、それはそれとして一回、平民側の教育棟に行くのはありかも知れない。
「おい!エズワルド!エズワルド!エズワルド・ズ・リグニッキャ!聞いてるのか!」
「あ、はい」
「授業は真面目に聞くように」
教官に真面目に聞いてないのがバレてしまった。今度からはもう少し真面目に聞いてるフリをしなくては。
今更取り繕っても手遅れかも知れないが。




