32-入学試験
「入学試験、意外と人が多いな」
学園――正式名称を王立魔法学園の入学試験には、魔法の才がある者たちが集まっていた。
と言っても、その殆どが貴族の子弟なのだが。
この世界、というより元のゲームは『ジョブ』とは関係なく、魔法は誰でも使う事が出来た。
と言っても、ジョブによって覚えられる魔法が違ったり、魔力量――MP等に差があったりはしたが。
なので、どんなジョブの人間でも、魔法の体系さえ学べば魔法が使えるのだ。
そのために学園があるのだが、この世界の各国の支配者層は魔法を独占する為に、学園の費用を庶民では到底払えない額にする事で、独占をしている。
ゲームでは、直接メインストーリーに絡む事はないので、魔法を使わないのなら来る事はない。
が、魔法はこのゲームの一つの売りなので、学園関連の膨大なクエストとストーリーが用意されている。
ま、俺は今回は魔法を覚えに来たんじゃなくてお嫁さんを捕まえに来たから関係ないんだが。
だって、俺もう魔法使えるし。
「次!エズワルド・ズ・リグニッキャ!前へ!」
おっと、そんな事を考えていたら俺の番が回ってきた。
「試験内容はあの標的を、魔法を用いて制限時間内に倒せ。制限時間は30秒だ。魔法は何を用いても構わない」
魔法学園の入学試験と言うだけあって、魔法を用いる事を要求される。
受験を受ける大体の人物は、親が家庭教師を雇ってこの時点である程度魔法が使えるようになってる。
こうやって、魔法の独占をしているというわけだ。
実に下らないね。……燃やすか。
「『フレイムバレット』」
手で銃を構えるように標的を狙って魔法名を発する。
それと同時に炎の弾丸が出現して、目にも止まらぬ早さで、標的を撃ち抜き焼失させる。
「はぁ。合格。それじゃあっちの部屋に行って。次!――」
試験官はやや呆れ顔で、合格を宣言する。
毎年、張り切ってやり過ぎる受験生が多いのだろう。ま、俺もその中の一人と言うわけだ。
ま、これで合格したからいいや。
無事に合格したので、指差された部屋へと向かう。
向かった方には既に合格した他の受験生が集まっていた。
「はい!それでは、合格した今年度の新入生に向けて説明を行います!まずは――」
そこからの説明は興味がないので、聞き流した。
それから制服の採寸やら何やらで、王都の我が家に帰って来たのは夕方になってしまった。




