281-襲来
「帝国兵だ……本当に攻めてきやがった……ッ!」
要塞内で誰かの絶望するような一言が周囲に木霊する。
もしかしたらこの言葉を発した人物は、帝国に故郷を燃やされた事があるのかも知れない。
それほどまでに、帝国の紋章が掲げられ、フルプレートに身を包んだ軍隊が、一糸乱れぬ行軍でこちらに近づいて来るのは、恐怖でしかない。
「お、おい。ホントに大丈夫なんだよな?エズッ!」
ご覧の通りうちのルシュキーもこの慌てっぷりである。
「安心しろ。運がいいことにここには優秀な冒険者が4人もいる。これで帝国風情に負ける道理が無いだろ?さて、行けそうか?リュボフ」
「何時でも大丈夫なのだ!ご主人!」
「よし。それじゃ、ひと暴れしますか」
今からやろうとしている事は簡単だ。
用は要塞から魔法をぶっ放して時間稼ぎをする。その間に指揮官の辺境伯を見つけ出してどうにかすれば俺達の勝ちである。
「帝国に目にもの見せてやれ!リュボフ」
「わかったのだ!妖精さん達!あいつらをドッカーンってするのだ!」
リュボフがそう言うと、帝国の一群の中に突然高圧の火球が現れて、爆発を引き起こす。
その影響で、帝国の動きが若干怯む。だが、まだこれで終わりじゃない。
「可愛そうだが、攻めてきたという事は殺される覚悟はして来たはずだ。一切手は抜かないぞ。『メテオストライク』恨むなら帝国を恨む事だ」
追い打ちをかけるようにメテオストライクを帝国兵に打ち込む。
「さ、これで時間は稼げるはずだ。あとは王国軍に任せて俺達は行くぞ」
「えげつねぇ……。エズが味方でよかったぜ」




