22-苦い敗北の後に
意識を取り戻した時には、もうそこにリュボフはいなかった。
俺の……俺のもふもふは奪い去られたのである
土砂降りの雨に打ちつけられ、ボロボロの状態で地面に伏せた俺に刻まれたのは、敗北の二文字であった。
剣を杖がわりになんとか立ち上がる。
全身、泥と血に塗れておりボロボロの状態だ。
「『身体強化』」
最後に残った魔力を使い、身体強化する。
底上げされた筋力をもって、リュボフとともに釣り上げたマグロを引きずる。
「せめて、せめてこれをギルドに納品しないと」
クエストだけでも完遂しないと……そうじゃないと全て無駄になってしまう。
傷ついた身体に鞭打って、足を引きずりながら帰路につく。
「帰ったら、帰ったらリュボフの手がかりを探そう」
まだ、そこまで遠くに行っていないはずだ。
不服だが、父を頼れば奴らを追えるはずだ。何の目的があってリュボフを攫ったか知らないが、必ず取り戻す。
希望を胸に街を目指した。
「どうしたその傷!何があったんだ!?それに、いつも一緒の嬢ちゃんはどこにいった!」
やっとの思いで街へたどり着くと、顔なじみとなった衛兵が惨状に目を丸くして声をかけてくる。
「話せば長くなる……一先ず俺はギルドに向かう。タチャーナに一報を入れといてくれ」
「ああ、それは構わないが……大丈夫か?」
「大丈夫だ」
軽く笑みを浮かべ、門をあとにしてギルドへ向かう。
「……今日は、けが人が多いな。何も無ければいいが」
衛兵の呟いた心配事は俺には聞こえなかった。
「いいから、全員招集しろって言ってんだッ!!!緊急事態だよ緊急事態!今すぐ緊急依頼を出せッ!」
ギルドになんとか来て中に入ると、中は騒然としていた。職員があちらこちらを駆け回ってるし、負傷している冒険者も多い。
「ツンヌスの依頼の納品に来たんだが」
「今、受付はそれどころじゃないです!急ぎならば納品科に納品してください!」
受付も騒然としており、けんもほろろに断られる。
……仕方ない。納品科に行こう。そこで納品して、一度家に戻ったらリュボフを探そう。
重い足取りで納品科に向かう。
「ツンヌスの納品を受けてくれ」
「はい。納品をお受けしました。ギルドカードに記録を残しましたので、あとは暇な時にでも受付で手続きしてください。といっても、暫く受付は忙しくて相手にしてもらえないでしょうけど」
「……一体何が起きたんだ?」
「その様子から見るに、あなたも交戦したのでしょうけど、今現在この領内でポヴァジェニの一団が活動中よ」
「ポヴァジェニだと!」
その名はゲームの知識で既に知っていた。
ポヴァジェニの一団。ゲームで度々発生するクエストで登場し、いわゆる盗賊団である。
各地の街でランダムに出現し、その度にクエストとして登場する。
ゲームではただの周回クエストにしか過ぎなかったが、現実で現れるとこうなるのか。
「そうよ。厄介な話ね。ま、暫くは街で大人しくしてる事ね」
「ああ、そうさせてもらう」
適当に答えてギルドをあとにする。
無論、大人しくしてるつもりなどない。敵が分かればあとはリュボフを取り戻しに行くのみッ!
「リュボフ……必ず救い出すからな」
だが、俺はこの時妙な引っかかりを覚えていた。
ゲームで度々こなしていた盗賊団撃退クエストで登場するポヴァジェニ。
彼らがリュボフを襲ったのだとするとその理由は何だ?
そもそもゲームでポヴァジェニはそんな事してなかった。
本当に敵はポヴァジェニなのか?
そんな疑念を胸に家へ向かった。
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