19-迫る危機
ぽつりぽつりと降り出した雨は、一瞬のうちにザーザー降りの雨になった。
釣り上げたマグロ共を、岩壁がせり出して雨が凌げそうな場所に、リュボフと2人掛かりで運び込む。
その後、急いで薪を燃やして火を起こして暖を取る。
「これはしばらく身動きが取れんな……」
「えぇー。ボク、お腹すいたのだ」
「う〜む。そうだな……このツンヌス俺の方はここで食べてしまうか?」
「 お魚!食べるのだ!早く捌いて焼くのだ!」
「ま、そう急かすなって」
得物のショートソードを抜いてマグロに突き刺す。
どうせ二匹両方を街まで運ぶのには無理がある。一つくらいここで食べても問題ない。
ちなみにマグロの解体も朝飯前だ。これも前世でとった杵柄ってやつだな。
「ほら、切ったからこれを焼いて食うか」
「食うのだ!」
切り分けた身を木の棒に刺して焚き火で焼く。辺り一帯に美味そうな匂いが広がる。
くぅ〜!ここにまともな調味料も酒もないのが惜しまれるッ!……って今の俺は飲酒できんのか。
「うまうまなのだ!」
リュボフもマグロにご満悦のようだ。
マグロが火に炙られた事によって脂が溶け出し、外はカリッとしてるのに中がホクホクのジューシーで、冷えた身体に染み渡る。
なんで米がないんだよ米が!
「もうお腹いっぱいなのだ!」
「 流石に食いきれなかったか」
明らかにこの大きさのマグロから取れる切り身は二人が食い切れる量ではなかった。
これ寿司にしたら何貫分だよ。
しょうがない。余った切り身のいくつかは家で見つけた収納バッグにしまって持って帰ろう。
きっとタチャーナならもっと美味い料理にしてくれる。
「雨上がらないのだ……」
「そうだな」
「ボク、退屈してきたのだー!」
「しばらくはこのままだな」
早く帰ってギルドにマグロを納品して、家に帰ってタチャーナの料理を食いたいが、雨足が一向に弱まらない。
雨足が弱まらない中、この道を進むのは自殺行為だ。
これがせめて雪になってくれれば積もる前にさっさと帰ろうとなるのだが……。
だが、願い虚しく、耳には雨が打ちつける音だけが聞こえてくる。
「どうにかならんものかね〜」
「 ご主人!ご主人!」
「どうかしたのか?リュボフ」
「囲まれてるのだ……」
リュボフが声を押し殺して伝えてくる。
それで脳が一瞬で戦闘モードに切り替わる。
まだ距離は相当離れてるし、人もまばらだが、確かに何者かに包囲されつつあるようだ。
しかもどうやら相手はこちらに敵意をもってるようだ。
畜生ッ!これはどういうわけだ?さっきの見えたラスィーツィカ帝国の暗部と関係あるのか?
そもそもこんなのゲームじゃ知らないぞ!
……チッ。どうやら戦闘は避けられないようだ。
ここは腹を括るしかなさそうだ。
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