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「俺なら……そうだな――」
勇者はそう言って、ぐいっと俺との距離を詰める。
「相手が獲物を握れない位置まで詰める。まぁ、これも一つの手段だな」
「けど、それじゃ逆に危険じゃ?」
「まぁ、危ないかもな。だから、それを見極める。これはセンスもあるかもだが、場数が結局物を言う。お前にはその場数――経験が足りない」
「じゃあ、どうすればいい?」
俺がそういうと、まるでその言葉を待ってたかのように勇者は不敵な笑みを見せて答える。
「最近、負け続きで金に困っててよ。お前、冒険者なんだろ?王都からそう遠くない場所に盗賊が現れてて困ってるらしい。だから、お前と俺とそれからルシュキーの野郎でひと稼ぎしに行こうや」