18-あやしい影
地面に水揚げされたマグロはいきなりスンッと大人しくなる。
淡水の湖からこのサイズのマグロが釣れるのは普通にバグだよな〜。
さて、こいつをどうするか……。
「ご主人!ボクの竿も引いてるのだ!」
「マジかよ……」
自分の釣ったマグロの事を考えていたら、まさかのリュボフにもヒットがあった。
いや、まだマグロと確定したわけじゃない。
焦るのにはまだ早い。
「ごしゅじ〜ん!湖に飲み込まれるのだー!」
「やっぱりこの引きはツンヌスじゃないか!」
畜生!またさっきの死闘をもう一回繰り広げるのか!
「くそッ!一緒に引き上げるぞ!」
「ご主人!頑張れなのだ!」
「オメェも頑張るんだよ!」
リュボフが湖に連れて行かれないように、竿を一緒に掴む。
ここは協力プレイで釣り上げる。
なんかこころなしか、さっきよりも重量感がある。というのもめちゃくちゃ抵抗してくるためだ。
「 ちッ!天気も崩れかけてきたか。嫌な感じだな」
冬の天気は変わりやすい。今日は晴れ間も見えていたのに、今にも雨が降りそうな天気だ。
これは早いとこケリをつけないと不味いな。
この勝負が始まってるうちに俺の釣り上げたマグロは息絶えたし、マジで早いとこ終わらせないと。
「いい加減釣れるのだー!」
数分の格闘の後に、リュボフの一撃でマグロが湖から姿を現し、地面へと叩きつけられる。
ようやくこの戦いにも終止符が打たれた。
「き、きつかった……」
「やったやった!ボクがツンヌス釣ったのだ!しかもご主人よりでかいのだ!」
「はぁ、はぁ……よ、よかったな」
リュボフの釣り上げたマグロは俺の予想通り、俺の釣ったのよりデカかった。
「それじゃ納品するのはこっちにするか」
「えー。ボクが釣り上げたのなのに」
「わがまま言わないでくれよ。サイズがでかいほうが報酬がいいんだからさ」
「まったくご主人はわがままなのだ!でも、仕方ないから譲ってあげるのだ!」
「はは。ありがとリュボフ」
で、釣ったはいいけどどうしようか?
……当初釣り上げた時の問題にまた戻った。
「くそッ!ついに降りはじめたか」
長い事マグロ釣りに興じていたので雨が降ってきた。
冬の雨は凍てつく寒さな上に体温を奪ってくるので厄介だ。
さっさと処理してどこかで雨宿りしないと。
「こんな時、瞬間冷凍でもできればな」
「出来るのだ!」
「は?」
「精霊さん力を貸して欲しいのだ!」
その瞬間、マグロがたちまち凍りつく。
おいおい、また魔法かよ。うちのリュボフは多才だな。
だが、これで問題は片付いた。
「よし!それじゃマグロ担いで雨宿りしに行くぞ!ん?」
「どうかしたかのだ?」
「 いや、何でもない。走るぞ!」
「了解なのだ!」
湖の反対側から悪意ある視線を感じた。
そして、俺はそこにラスィーツィカ帝国の諜報部隊が居たような気がした。
まさか、な……。ありえんよな?
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