16-一日の終わり
はじめての依頼を無事に終え、家路についていた。
外は日が完全に沈み、暗闇に包まれている。魔法によって光を供給する街灯だけが頼りだ。
それにしても、やっぱりあんまし稼げなかったな。
スライムを頑張って10体倒して大銀貨一枚。Eランクで美味しい依頼がないと言っても、これはしょっぱ過ぎる。
これじゃ学園の入園費が貯まるのはいつになるのか。
「ご主人!今日は楽しかったのだ!また明日も一緒に遊ぶのだ!」
「いや、遊びじゃないんだけど……。ま、そうだな。明日もまた一緒にしような」
この天真爛漫なもふもふを見てると、俺の悩みなどバカらしくなってくる。
稼げなくても、リュボフが楽しかったならいいか。
それに毎日繰り返せば確実に金は貯まるし、なんとかなんだろ多分。
「やったのだ!ところで、ご主人?ボク、お腹が空いたんだけど、今日のごはんはなんなのだ?」
「う〜ん……。今日は確かタチャーナがグヤーシュにするって言ってたような?」
「グヤーシュ!ご主人、急いで家に帰るのだ!」
リュボフがスキップしながら進んで行く。こう見ると普通なんだけどな〜。
何で魔法が使えるかさっぱりだ。
「急ぐと危ないぞ〜。……ん?」
リュボフを追いかけながら進んでいると、暗がりの中から視線を感じて振り向く。
しかし、そこには誰もいなかった。
「ごしゅじ〜ん?」
「ああ、悪い悪い。早く帰ろうか」
妙なこともあるものだと、その時は特に気にせずに家路を急いだ。
「おかえりなさい。ちょうど夕飯ができましたよ」
「ああ、ただいま」
「いい匂いなのだ!」
「あ、こらリュボフ!ちゃんと着替えて、汚れを落としてからごはんにしなさい!エズ様からも言って下さい」
「ま、元気があっていいんじゃないか?」
家に帰ってくるとグヤーシュのいい匂いが立ち込めており、それに釣られてリュボフが走ってゆく。
前と比べて随分とこの家も賑やかになった。
部屋に戻り、装備を置いて着替えを済ませる。
「ご主人遅いのだぁ」
部屋から出ると、タチャーナにタオルでゴシゴシ拭かれているリュボフが待ち構えていた。
そのまま夕飯の席へとつく。
今日の夕飯はグヤーシュとパンだ。
グヤーシュは簡単にいえばハッシュドビーフみたいなものだ。
ま、今日のグヤーシュは牛肉の代わりに豚肉が使われて、ザワークラウトが入っている。
これがかなり美味い。
「今回は上手くいきましたか?」
食事もそこそこにタチャーナが今日のことを聞いてくる。
「ああ、上手くいったよ。スライムの討伐をしてたんだけど、驚いた事にリュボフが魔法を使えてさ。俺の出る幕なんてなかったね」
「……リュボフが魔法をですか?」
タチャーナが驚愕の表情を浮かべている。信じられないといった感じと、何か焦りを感じる。
「そうなのだ!ボクが魔法を使って大活躍したのだ!」
「俺もちょっとは戦ったけどな。ま、今回はリュボフが活躍したのは間違いない」
「そうですか。ですが、街の近くで魔法を使うと、問題が出るかもなので自重してくださいね?」
「む。それもそうか。ちょっと浮かれていたかもな。明日からは控えるか」
「えー。ボクもっと活躍したいのだー!」
「また、今度な。それにリュボフに頼ってばかりいられないし」
リュボフが頬を膨らませてふてくされ気味だが、仕方ない。あとでもふもふついでに慰めよう。
そんな感じで冒険者としての一日が終わった。
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