15-はじめての依頼
クエストボートで受ける依頼を吟味する。
現在の俺のランクは、冒険者として登録したばかりなのでEランクだ。
なので、一つ上のDランクまでの依頼が受けられる。
ここらへんは冒険者のチュートリアルで散々受けた説明で、冒険者のしおりにも書いてある。
ちなみに冒険者ランクはA〜Eの5段階評価で例外としてSランクが存在する。
ま、金稼ぎの為に冒険者になったので、ランクとかどうでもいいんだけどな。
それはともかく、何を受けるか決めないと。
「って言っても、Eランクだからよさそうな依頼が少ないな……」
クエストボートにずらりと掲示された依頼書を流し読みしていくが、現状受けれる依頼範囲では、中々いいのは見つからない。
「ごしゅじ〜ん!ひまなのだぁ!」
「ごめんて。あともう少しだけ待ってくれ」
依頼を吟味しすぎて、リュボフが飽きてきている。
もうこの際、手頃なやつでいっか。早いとこ決めて金稼がないとな。
「あ、もうこの依頼でいいや」
クエストボードの端のほうに貼ってあった依頼書。
その依頼書には『スライム討伐』と書いてあり、スライム10体で1万スートの依頼だ。
「これにするか〜」
「決まったのかぁ?」
「ああ。スライムを倒しに行こう」
「スライムぅ?アイツは不味いから、もっと美味しい奴がいいのだ!」
「いや、クエストってそういう目的じゃ……。あとスライムは食べちゃダメだよ」
……ん?てか、スライムが不味いって、もしかしてスライム食ったことあるのか?リュボフ。
……気にしないでおこう。
「すみません。この依頼を受けたいんですけど」
依頼書をもって朝に冒険者登録した受付に持っていく。
「はい。かしこまりました。こちらの依頼は、城壁周りと街道沿いにいるスライムを討伐する事で達成できます。それでは、頑張ってください」
受付が素早く事務処理を終わらせて、ギルドから見送られる。こうして俺の冒険者としての初仕事が始まった。
一度家に戻り、装備を整える。
といっても、朝出た時の服装にショートソードを装備しただけだが。防具?そんなものただの飾りですよ。
「さて、スライムを探しますか。頼りにしてるぜ!リュボフ」
城壁を出て、郊外にやって来た。
城壁を出る際は一応ギルドカードを見せたが、これでも領主の息子なので顔パスで通された。
「ご主人!見つけたのだ」
早速リュボフが、茂みから青く半透明のぷよぷよした物体を見つけた。
間違いない。スライムである。
ゆっくり近づき、剣を抜き放ちスライムを斬りつける。
「おらッ!」
ブニョンッというゼリーを斬るような感覚が、手に伝わる。
あまり、効果がある感じがしない。
ま、この結果は知っていた。ゲームではこいつらは斬撃系に対して耐性があったからな。
効果的に倒すには、火系の魔法で攻撃するのが一番効く。
リュボフと連携して何度もスライムに攻撃を加える。
しばらくすると、スライムは力尽きて溶けて地面へと消えていった。
「ふ〜。ようやく一体目か」
「疲れたのだぁ」
「ま、攻撃手段が物理しかないからな。火系の魔法でも使えれば、もうちょい楽になるんだけど」
「ボク、使えるのだ!」
「は?」
「ボク、魔法使えるのだ?」
「え、初耳なんだが?魔法使えたのかリュボフ?」
「そうなのだ!あ、またスライムいたのだ!」
リュボフが言ってることが本当なのか判断に迷うが、いいところにスライムが現れたので、実際に試させて判断する。
「それじゃ、魔法で倒してくれるか?」
「任せるのだ!火の精霊さん、力を貸して欲しいのだ!」
スライムが突然炎に包まれ燃え上がる。
えぇ……。リュボフまさか本当に魔法が使えるのか。てか、俺の知ってる魔法と色々違うのだが。
こんなデタラメな方法で魔法使えるとか……。
「これで10体目なのだ!」
リュボフが魔法を使えると判明してからは、リュボフだけでスライムがどんどん殲滅されていった。
それでも意外と時間がかかり、日が傾きはじめていた。
「今日はもう帰るか」
「そうするのだ!……くぅん?」
「どうかしたか?」
「なんでもないのだ!早く帰るのだ!」
リュボフが茂みの暗がりの中で、何かを見つけたようだったが、帰路を急ぐ。
「依頼達成だ。確認してくれ」
夕方の時間帯になり、一階の酒場も営業を始め、仕事終わりの数多くの冒険者で賑わっている中、人の合間を縫って受付にやって来た。
「おかえりなさい。達成を確認しますので、カードをお預かりします」
受付の言われるままにカードを渡す。
受付がそれを一見カードリーダーにしか見えない魔道具に通すと、討伐したモンスターの数が表示される。
「はい。エズワルド様とリュボフ様、お二人でスライム10体の討伐を確認しました。これが報奨金の1万スートとカードをお返しします」
報奨金の1万スート――大銀貨一枚とカードを受け取る。
これではじめての依頼は無事に完了した。
読んで頂きまして、ありがとうございます。
続きが読みたいと思ってくださる方は、ブックマークしてもらうと励みになるので、よろしくお願いします。
また、ポイント貰えると嬉しいです。