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「ヴェルソア公って、ヴェルソア地方を統括する大貴族だよな?」
「そうだよ。俺の実家のリグニッキャ伯やその他複数のヴェルソア地方に存在する貴族を統括する大貴族だ。だから、俺はこの依頼を断れなかったんだよ」
「そのヴェルソア公の猫が何で王都に?」
「そんなんこっちが聞きたいわ」
ヴェルソア公の飼い猫なら、普通ならヴェルソア公が治める領内の屋敷にいるはずだ。
それが何で王都で迷子になって、それを俺が探す事になってるのか。
「そんなの簡単よ!愛猫家のヴェルソア公の事だから、王都まで一緒に連れてきたに決まってるじゃない」
スサンナが猫を探す手を止めて、胸を張って自信有りげに答える。
うむ。まずはそのたわわに実った胸を収めて猫を探せ!
「ま、理屈はわかるが、そもそも何でヴェルソア公が王都に?」
「そんなのあたしが知るわけないじゃない」
くっそ!こいつ……。家に帰ったら覚えてろよ。
「あれじゃないか?この前のヌワルリェスの件。それで呼ばれたんじゃないか?ヌワルリェスを擁する最大の貴族なんだろ?」
なるほど。ルシュキーの言うことには一理ある。だが、それで猫探しをさせられるのはいい迷惑だ。