番外編1-フェルナンという猫
やぁ!俺は王都に住むナイスガイなオスの野良猫――ロッキーだ。
今日は最近、ここら一帯のボス猫になった奴を追ってみようと思う。
この変わった赤いスカーフを巻いたキジトラの猫が、最近ここら一帯のボスになった猫で、名前をフェルナンって言う。
こいつは、俺みたいなノラじゃなくて、人に飼われてるらしい。
ただ、その割には結構自由に街を行き来してるし、発情期には、辺りのメス猫とイチャコラしてる。
聞いたところによると、元々は俺と同じノラだったみたいだが、ある日少年に拾われて飼い猫になったらしい。
「飼い猫も飼い猫で大変なんよ?」
と、フェルナンは言うが、ノラでやっている俺としては正直羨ましい。
さて、そんなボス猫フェルナンの一日は、朝早く起きて住んでいる屋敷を逃げるところから始まる。
何でそんなに朝早く逃げ出すのか、俺は今日フェルナンに密着して屋敷に忍び込んで、はじめてフェルナンの気持ちを理解した。
「フェルナン?お〜い。フェルナンどこ行ったんだ」
朝早く、身なりがよく、一見華奢に見えるが引き締まった筋肉の持ち主の少年が、ボスを探して徘徊している。
その姿は、夜に郊外で徘徊している魔獣の様で、目がギラついて獲物を探してる。
「ん?フェルナンはいないけど、代わりに見かけない猫がいるじゃん」
少年の様子をおちおち観察していたら、見つかってしまった。
「フェルナンいないし、君でいいや。ほら、怖くないよこっちおいで〜。オヤツ上げるよ」
明らかに怪しい出で立ち、誇り高きノラである俺は本来なら近づいたりしない。
だが、少年の持っている何かの肉を焼いた物が美味しそうで、つい飛び出して食いついてしまった。
その瞬間だった。
少年が不敵な笑みを見せて、俺の事をガシッと掴む。
しまった!やはり罠だったか!と思ったが、次の行動が俺の予想の範疇を越えるものだった。
――すぅぅぅぅ!
少年は、俺のお腹に顔を埋め込んで、俺の匂いを思いっきり嗅いでる。
その不可解な行動に恐怖し、泣きそうになるが何とかこらえた。
だって俺は誇り高きノラだから。
暫くして、少年は満足しきったのか俺を解放する。
少年の一瞬の隙をついて、ピャッと逃げる。その逃げ出した先にはフェルナンがいた。
「何で、ボスが毎朝早くに逃げ出すか気持ちが理解できたよ」
「お前もやられたか。何度顔にパンチをお見舞いしても、懲りずに毎朝これだからな。最近は見つかる前に逃げるしかないんだ」
ボスはそう言って縄張りに出かけていった。
猫の日ということで、せっかくなのでフェルナンの話を書いてみました