107
「それで、報酬の話なんだが……」
シュトルツァ子爵が本題を切り出してくる。
追加報酬があるといいが、果たしてどうなることやら。
「私からは報酬は当初の予定通りで、追加報酬は無しでお願いしたい」
「おい!それじゃ割に合わねぇぞ!」
「ルシュキー!言葉を慎め!」
子爵が追加報酬は無しと言った瞬間、一緒についてきたルシュキーが激昂して子爵に詰め寄る。
ルシュキーの気持ちもわからくはないが、相手は現役の領主で分が悪い。
だが、俺もルシュキーと約束した手前、簡単に引き下がる訳にはいかない。
「ルシュキーが失礼した。しかし、子爵?追加報酬は無しと言われて簡単にこちらも引き下がる訳にはいかない。今回の件の事の大きさは子爵も理解するところでしょう?」
「それは理解しているし、彼が怒る気持ちもよくわかる。だが、今回の件に見合うだけの追加報酬を私では支払えないのだよ。君も貴族なら分かるだろう?」
くッ!中々厄介な子爵だ。
まあ、今回の件でこの街の物流は止まっており、目立った産業のない街だから税収がいつもより少なくなったのだろう。
この子爵はそれを考慮して引き下がれと暗に言ってきてやがる。
「それは、理解できますが、だからといって――」
「わかっている。だから、私からは支払えないと言ったのだ。今回の件は王に報告する。その時に君たちの名前も上げさせて貰う。これで、よしとしてくれんか?」