表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
樹法師タネの桜散る天地創造  作者: 星太
第七章 残花の記憶

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

35/36

第35話 始まりの記憶

◆――……


 遥か昔、天地ができる前のこと。

 真っ暗で何もない空間に、一柱の桜があった。

 桜は大きく、堂々と咲き誇るも、無の闇では何者にも観測されることはない。自分自身でさえも、見ることが出来なかった。


 桜には、偉大な【力】があった。

 世のことわりを知り、万物を創造する力――無量大数に咲く花弁をわずかに散らす度、望む物を造ることが出来る力が。


 自らを知りたくなった桜は花を散らし、闇を照らす【お日様】を造った。空間は光に満ちて白く輝き、桜が照らし出されると、桜はますます咲き誇った。


 お日様の光をいっぱいに浴びた桜のもとに、一輪の花が咲く。それはお日様によく似た黄色い花――【向日葵ヒマワリ】だった。


 桜と向日葵は、原初の花として自然に惹かれ合い、共に強く願った。


 想いを重ねたい。

 触れ合いたい。

 

 その願いは、桜と向日葵をのちにヒトと呼ばれる姿に変えた。想いを持ち、言葉を交わし、抱き合える姿に。


 向日葵は、よく笑う花だった。

 お日様にも負けぬほど明るく輝くその笑顔を、桜はもっと見たくなった。


 向日葵は、お喋りが好きな花だった。

 他に無口な桜とお日様しかない世界で、向日葵の声は唯一のかなでだった。桜はそれが心地好く、もっと聞きたくなった。


 桜には、確かに【偉大な力】があった。

 しかし、その全てを向日葵のために使いたくなるほど、向日葵に心惹かれていた。


 思えば、最も大きな力とは、桜だけでは持ち得なかったもの――向日葵がくれた【想い】なのではないか。


 桜は、力の使い道を決めた。

 それは、生涯変わることのない誓い。


 向日葵の笑顔を造る。


 全ての始まりは、桜の決意だった。




 ――向日葵は、散花など望んでいなかったのに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ