表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

エッセイ

猫のおすし

作者: たかさば

 うちには、猫専用の電気マットがある。大きさおよそ45×80センチ、ビニール素材でできた防水タイプのフローリングっぽいデザインがお洒落なちょっといいやつだ。


 ずいぶん前に旦那が知人から頂いたキッチン用のホットカーペットは、毎年冬になると二階の廊下に設置されている。真冬の底冷えする廊下で暖を取ることができる優れものは猫達の人気のスポットとなっていて、朝、昼、晩、七匹の猫たちが入れ替わり立ち代り利用しているのだ。


 マットの上に無防備に寝転がる猫もいれば、礼儀正しく丸くなる猫もいる。たまに割り込んで怒られている不届きものもいる。


 そんななか、時折…猫がやたら美しく整列していることがある。


 マットの上に、均衡に…大きさこそ違えど、全員がきっちりと香箱を組んで並ぶのである。

 それはさながら、下駄の上に並ぶお寿司のようで・・・実にうまそう、いや違うな、愉快でならない。


 私はこの状態を、猫のおすしと呼んで愛でているのである!!


 黒いの茶色いの白いの…横暴なのも大人しいのもビビリもしっかりものもマイペースなのもちゃっかりものも動じないのも、実にランダムに几帳面に並ぶ、ひとときの癒し。四貫並ぶことが多いが、たまに三貫だったりもする。


 五貫盛りはなかなかお目にかかれない、極上の特上寿司だ。……わりとでかい猫が多いので、どうがんばっても五貫までしか乗らないのである。


 腹こそ膨らまないが、実に眼福なこの猫のおすし…何度でも見たい、遭遇したい逸品なのである!!


 たまに寿司になれなかった猫が…切なげに下駄の横を通り過ぎるのも、また哀愁があってぐっと来るのだ。ついつい、気の毒に思っておやつを差し出してしまうのは、致し方ないことであろう。

 そしてそれに気付いた寿司どもが隊列を崩して、しっちゃかめっちゃかになるという…。


 ほかほかの寿司下駄はかなり年季が入っていて、表面がバリバリになってしまっている。


 そろそろ廃棄しようかなと思いつつ…この寿司に魅了されている私には、踏ん切りがつかないのだ。寒くなる季節に取り出しては今年で捨てようと決心するのだけれども…、ついつい、春先になると収納棚にしまいこんでしまうのだな……。


 ……今年もきっと、しまいこんでしまうこと必至だ。

 新しいマットを買おうか、でも意外と高いんだよね……。

 猫は多少の毛羽立ちなんか気にしないからなあ、見た目が悪くても使えているうちは捨てないほうがいいよね……。


 このところ、日中に猫のおすしを見ることが少なくなってきた。

 ……春はもう、すぐそこまでやってきている。


 だらしなく腹を丸出しにする、猫のひらきが廊下に並ぶのも…もう、間もなく。

 年がら年中、いろんな猫を楽しめる幸せを噛み締め……、あれ。


「にゃー」

「……。」

「にゃっ!!」

「ふにゃぁ……。」

「(すん、すんすん!)」

「にゃ」

「にゃーん」


 やけに猫が寄ってくるなあと思ったら…ああ、もうご飯の時間だった。

 時間の過ぎるのは本当に早いなあ、もう。


 足元にまとわりつく猫をけ、手すりを握って階段を下り…キッチンに向かう。


「ハイハイ、わかったって!!!ちょっとまだ皿出してないじゃん!!それは姐さんの!!あんたはこっちだ!!あーもー、他の人のを食べるんじゃ…ない!!!」


 今日も私は、猫達のご飯の準備に追われつつ。


「しゃー!!」

「ぅう~・・・」


「あーもー!!いい年してケンカすんな!!ハイ、水はコッチですよ!!わあー!!水こぼれたー!!」


 忙しく、騒がしく、充実した毎日を送っているという、お話……。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 感想を書き込んだはずだったのに、「送信」出来ていなかったです(泣) とっても可愛いですね、ねこのおすし!!! なんてほっこりなエッセイ!!!(*´艸`)♡ 見てみたいです〜!!!
[一言] 見たい……写真とか見たい!
[良い点] たまりませんにゃああ(≧▽≦)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ