表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/45

42話 死体の在処

「死体、というとやはり墓地が思い浮かぶのだが」


「ええ、そうですね。知人によると、かつてこの病気により、当時この土地にあった国の約3分の1の人々が死んだそうです。だから墓地も多かったのかもしれません」


「3分の1? 冗談だろう?」


 もし仮にどんな小国だったとしても、国家の人口の3分の1が減るなんて、そんなことあり得るのか、と私は目を見開いた。


「いえ、どうにも彼はそれを信じているようでした」


「栄養失調状態の者しか感染しないのだろう? ならばなぜそんなに死んだんだ?」


 先ほど、彼は栄養失調状態の者にしか感染しないと言ったばかりではないか、と私は首を傾げた。

 1000年前の情報なんてあまり知らないから、それほどまでに酷い暴政だったのだろうかと疑問に思う。


「それがですね、その感染症が広がる前にそれはもうひどい大飢饉があったようなのです。それで皆、飢餓状態に陥った。そして、泣きっ面に蜂とはこのことで感染症までも広がり、墓地が不足。そこら中に死体が捨てられていたそうです」


「ひどいな……」


 私は思わず顔を顰めた。

 3分の1の人々が飢餓状態で、感染症も蔓延、さらには死体がそこらじゅうに捨てられていたなんて、どんな地獄絵図だったのだろうか、と胸が痛くなった。

 想像するだけでもゾッとするのだから、当時の人たちの心労は計り知れない。


「そうして、国が調べる中で、どうやら死体から感染していると突き止めたようですね。そして、それを知った国が採用した政策が、焼いた死体を墓地として定めた場所に収容したそうです」


「なっ、死体を焼く!?」


 私は耳を疑うような言葉に、思わず大きな声が出てしまった。


「ええ、私もこの話を聞いた時は涙が出てきましたよ」


 私はぎゅっと拳を握る。

 ーーそんな埋葬の仕方、聞いたことがない。死体を焼くなんて、あまりにも酷いではないか。

 この国では埋葬方法は土葬だ。その文化が染み付いている私からしてみると、死んでから焼却されるなんて絶対に考えられない行為だった。

 ーーどれだけ極悪非道の罪人でさえ土葬されるというのに。


「しかし、死体を『収容』する? おかしな表現だな」


「ええ、私も彼に埋葬ではないのか? と聞きましたがどうやら違うようです。埋めたのではないらしい、ということです」


「うーん、言っている意味がよくわからない。埋葬するでもなければ、一体どこに」


「それは私にもわかりかねます。彼もまだ発見できていないようでしたしね」


「そうか……何はともあれ、情報提供感謝する」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ