42話 死体の在処
「死体、というとやはり墓地が思い浮かぶのだが」
「ええ、そうですね。知人によると、かつてこの病気により、当時この土地にあった国の約3分の1の人々が死んだそうです。だから墓地も多かったのかもしれません」
「3分の1? 冗談だろう?」
もし仮にどんな小国だったとしても、国家の人口の3分の1が減るなんて、そんなことあり得るのか、と私は目を見開いた。
「いえ、どうにも彼はそれを信じているようでした」
「栄養失調状態の者しか感染しないのだろう? ならばなぜそんなに死んだんだ?」
先ほど、彼は栄養失調状態の者にしか感染しないと言ったばかりではないか、と私は首を傾げた。
1000年前の情報なんてあまり知らないから、それほどまでに酷い暴政だったのだろうかと疑問に思う。
「それがですね、その感染症が広がる前にそれはもうひどい大飢饉があったようなのです。それで皆、飢餓状態に陥った。そして、泣きっ面に蜂とはこのことで感染症までも広がり、墓地が不足。そこら中に死体が捨てられていたそうです」
「ひどいな……」
私は思わず顔を顰めた。
3分の1の人々が飢餓状態で、感染症も蔓延、さらには死体がそこらじゅうに捨てられていたなんて、どんな地獄絵図だったのだろうか、と胸が痛くなった。
想像するだけでもゾッとするのだから、当時の人たちの心労は計り知れない。
「そうして、国が調べる中で、どうやら死体から感染していると突き止めたようですね。そして、それを知った国が採用した政策が、焼いた死体を墓地として定めた場所に収容したそうです」
「なっ、死体を焼く!?」
私は耳を疑うような言葉に、思わず大きな声が出てしまった。
「ええ、私もこの話を聞いた時は涙が出てきましたよ」
私はぎゅっと拳を握る。
ーーそんな埋葬の仕方、聞いたことがない。死体を焼くなんて、あまりにも酷いではないか。
この国では埋葬方法は土葬だ。その文化が染み付いている私からしてみると、死んでから焼却されるなんて絶対に考えられない行為だった。
ーーどれだけ極悪非道の罪人でさえ土葬されるというのに。
「しかし、死体を『収容』する? おかしな表現だな」
「ええ、私も彼に埋葬ではないのか? と聞きましたがどうやら違うようです。埋めたのではないらしい、ということです」
「うーん、言っている意味がよくわからない。埋葬するでもなければ、一体どこに」
「それは私にもわかりかねます。彼もまだ発見できていないようでしたしね」
「そうか……何はともあれ、情報提供感謝する」