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40話 区画書

 さて、私は帰ってきて、まず屋敷の中にある図書室にやってきて、王都の区画書を引っ張るだすことから始まった。

 地盤が安定している場所は発展しやすく、地盤が緩い場所は価値が低く設定されることが多い。そのため地盤について書かれた細々とした書籍を読むよりにも先にダリアが監禁されているであろう場所を炙り出し、その後精査していこうというわけだ。

 価格は、王城周辺、貴族の屋敷がある区域。商店が多く立ち並ぶ場所、平民の住居区、農業の盛んな地域、そして、かつてスラムのあった区域と低くなっていく。大体王城から離れていくにつれて金額が安くなり、住む者も家族から富裕層、そして平民と身分が下がっていくため非常にわかりやすい。


「お嬢様〜。何をやっていらっしゃるんですか?」


 マーニーが紅茶を机に置きながら、私に質問をする。


「調べ物だ」


「区画書ですね。あ、もしかしてお屋敷を購入されるとか、事業をなされるとかでしょうか。それなら、アクセサリーショップとかお洋服屋さんにしましょう! で、お抱えの職人を雇うんです! きっと繁盛しますよ〜!」


 私の見ているものは何かとマーニーが覗き込んできた。そうして、私が見ているものが区画書だと判明すると、目を輝かせ、身振り手振りで彼女の欲望に満ち溢れた案を提案してきた。

 あまりにもわかりやすい目的で、私はつい笑ってしまう。


「いつか、な」


 マーニーの淹れる紅茶は非常に良い味を出す。私の仏頂面がついつい解れた。

 1人になりたいとマーニーを図書館から出して、私は再び書類に目を落とす。

 区画書を黒板に写し、その中で、元スラム街や低価格な土地、湿地帯は排除し、ばつ印をつけていく。

 完成し終わった頃には王都の何十%かが除外された。

 ーー結構絞り込めたな。しかしーー。

 これ以上、手がかりがない。

 それが問題だった。

 医者も把握していない感染症に私は戸惑うばかりだ。


「はあ……どうすれば良いのだろう」


 私はヘナヘナと机に突っ伏した。

 諦めるにはあまりに惜しい魔法の情報。もしかしなくても、私を地獄に叩き落とした奴らの鼻をへし折るためには必要な情報だ。何としても手に入れなければならないため、まだ諦めるわけにはいかない。


「そういえば、感染経路はどこからなのだろう」


 光明が見えた気がして、ガバっと顔を上げた。

 ーーそうだ、ダリアは誰かから移されたんだ。そうなると、それを移すことができるのは、彼女と同じように閉じ込められている者、ーーもしくはギルドの人間。

 コーラルは、ハノーヴァーと共に作ったギルドかは金や情報を抜き取るために大事な駒だ。その人間を動かすための駒を治療法もわからない感染者と同じ場所に収容するだろうか?

 そうだとすれば、ダリアが収容された後でその病気が発生したか蔓延したと考えても良いだろう。


「ああ〜!! わからない!」


 私は叫んだ。ありったけの声で。

 ーーくそ、前世でハノーヴァーに聞いておけばよかった!

 そう後悔したのだった。

気がつけば40話まで来ました。ここまで私に付き合いお読みになってくれた方、また初めて読んでくれる方、感謝申し上げます。

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