38話 シルパのお見舞い
あの花の後始末をするエリオットと、特にやることもない私は別れることとなった。当初、マルティンが私を送り届けてくれる予定だったのだが、彼は現場の指揮を取らなくてはならなくなったため、私は王都にある父の屋敷から護衛を一人つることにした。
エリオットはというと、私と離れるということでとても名残惜しそうにしたが、私が彼に頑張ってくださいとエールを送ると満面の笑みを浮かべてやる気を出していたので大丈夫だろう。
そうして、彼と別れた私は花屋と果物屋に寄った後、王都にある国立病院にやってきていた。
そう、彼女に会うためだ。
病院の受付の者に、あの者がどの部屋にいるかを聞き、その部屋を訪ねた。手にはお見舞いの花束と果物を持って。
部屋の前のドアをノックする。すると、程なくして返事が返ってきたので、扉を開いた。
「お嬢様!?」
「シルパ! 見舞いに来た。大丈夫か? 窮屈な思いはしていないか?」
「ええ、大丈夫ですわ。それよりもどうされたのです。こんなところまで」
「王都に来たから、シルパの具合を見に来たんだ」
「あらあらあら、そうでしたのね」
シルパは喜色を浮かべた。私もそれに笑い返すと、そうだ渡すものがあるんだ、と口を開いた。
「あら、こんなに!」
彼女は私の持ってきた花と果物の量に驚いているようだった。
「いや、受け取ってくれ。シルパ。他の入院患者と分けて食べてくれ」
「ふふ、では、ありがたくいただきますわね」
「怪我の方はどうだ。ちゃんと治りそうか」
私は彼女の頭に巻かれた包帯を見て、顔を歪ませた。あいつらシルパの頭をどれだけ強く殴ったんだという怒りが込み上げてくる。
「ええ、なんとか。完治するまでには時間がかかるそうですが、後遺症もなく治るようです」
「それはよかった」
病院から送られてくた彼女の怪我について記載された手紙で、ある程度はわかっていたが、実際に彼女に会って話を聞き、安堵する。
私を見舞いに来たエリオットもこんな気持ちだったのだろうか。
「完治するまでこの病院にいてくれ。費用は私が出すから」
「いえ、申し訳ないですわ」
「なにをいう。私と一緒にいたことで、怪我をしたんだ。私が払って然るべきだろう」
「しかし、この病院は主に貴族が使用なされるではありませんか。やはり費用も莫大なものに……」
「シルパの健康と比べたら、安いものだ。私からのお願いだ。療養してほしい」
しばらくの間、私たちに静寂が訪れる。しかし、私が折れることがないということを悟ったのであろうシルパは首を縦に振った。
「それならば、仕方ないですわね。必ずや完治し、またお嬢様に仕えることができるように精進したしますわ」
彼女はそう言って笑った。
次の話は、6月2日月曜日の今日の午前2時5分ごろに掲載予定です。よろしくお願いします。




